2020年買って良かったもの【書籍編】 - 半熟三昧(本とか音楽とか)
2020年買ってよかったもの【モノ編】 - 半熟三昧(本とか音楽とか)
に引き続いて漫画である。
最近連載漫画を雑誌で追いかけるのはもうやめたのだが、単行本で追いかけているのはそれなりにある。
マウンテンバイクにハマったりして大丈夫か『弱虫ペダル』とか、クイーン戦と名人戦で完結するんだろうか『ちはやふる』、とか、ヨーロッパでまあまあ有名になってアメリカで自動車修理工場でバイトはないだろ『ブルージャイアント』とか『転スラ』このさきはノベルのあらすじ見れば見るほど読む気が失せてくるとか、一体いつまで続くんや『不倫食堂』と『めしばな刑事タチバナ』とか、一年間なんの動きもなかったな!『Hunter x Huter』
その逆でもうストーリー展開が早すぎて一巻出るごとに読み直してもよくわからんぞ『進撃の巨人』とか、言いたいことはたくさんあった。
『アクタージュ』も印象に残ったけど未完で終わるのは本当に残念。
印象に残った漫画を挙げてゆきます。
鬼滅の刃
halfboileddoc.hatenablog.com映画が空前のヒットということで、リアル古書でも空前の転売ブームが起こっていますが、僕が読み始めたのは2019年の年末。
うん、流行の半歩先って感じでしたね。
これだけヒットしていても、きっちりと物語としての純度を保ってあっさりと幕を引いたことに拍手。なかなかの英断だと思う。
そういう営業的なおもねりがなくストーリーに没入させてくれる、作者の純粋さも印象的でした。
戦争は女の顔をしていない
halfboileddoc.hatenablog.comいいコミカライズでしたね。ソ連のノーベル文学賞受賞作品。
谷口ジローや安彦良和が取り上げそうな原作。しかしイマドキの若い画風だったのも新鮮でした。
原作そのものは、あくまで民衆主義的な視点から来た作品だが、フェミニズムとかジェンダー論とか、はたまた旧ソ連と民主主義陣営とか、そういうイデオロギー論争に二次的に利用されただろうなと思うといささか複雑ではあります。
紛争でしたら八田まで
これはBlogに書いてないや。地政学的なイシューを漫画に落とし込んだ好本。【マスターキートン】に地政学を足して、考古学を引いた、ような感じか。
主人公八田のサバサバしてそうだけど多分そうでもない感じ、嫌いじゃないですよ。
戦国小町苦労譚
halfboileddoc.hatenablog.com農業高校の歴史好き女子高生が、織田信長の領地にタイムワープ?みたいな話。異世界転生もののひとひねり。結構面白い。
けど、主人公の特性が「外れ値」過ぎてストーリー上都合がよすぎる。そして当時の男尊女卑感覚と、現代の人権感覚はもっともっと隔たりがある。多分もっと悲惨で屈辱的なことが起こって終わるよなと思った。
たぶん『JKハルは異世界で娼婦になった』の方がリアルに近いと思う。
(ファンタジー世界に転生したけど、取り柄がないから娼婦になるという、まあまあ悲惨なプロットをクールに描く。これぞ異世界だ、と思った)
神様のバレー
halfboileddoc.hatenablog.com『ベイビーステップ』とか『グラゼニ』などと同じで、スポーツに賢さが必要であることを全面に押しだした作品。
戦略、心理の読み合いなど、バレーをしないから実際しらないけど、面白かったです。
ただ中学バレーって、作戦が当たるにしても、そこまでうまいこといくかなーと思ったりもする。やっぱりフィジカルに押されません?
バトルグラウンドワーカーズ
halfboileddoc.hatenablog.comこれも『エンダーのゲーム』的なディストピアなのだが、三巻、四巻ときて、どんでん返し。
ディストピアには底がなかった!目が離せない展開です。
おすすめです。今一番続刊を待ち望む作品。
A子さんの恋人
halfboileddoc.hatenablog.comhalfboileddoc.hatenablog.com
2020年にもっとも心動かされたのが、これでした。堂々の大団円。7巻で完結。
表現者のモラトリアムと恋と進路。悲しくもおそろしくも優しい話。
ちょうオススメです。せつない。
テセウスの船
halfboileddoc.hatenablog.comタイムリープもの。10巻程度できっちりと余韻を残し終わる。完成度の高いプロッティング。
犯罪加害者家族の悲惨さというのは、もうちょっと賢察されてもいいとは思うけど、多分誰もが余裕がない今の日本では、因習的な因果応報感覚が改められることはないんだろうな。
サマータイムレンダ
テセウスの船で「タイムリープもの」というのをSNSで話していたら知人に勧められた。なるほど面白い面白い。
けど何度も主人公が死ぬ。「死んで覚えゲー」みたいなストーリー展開。スペランカーか。
そして、完結していなかったので、今僕は非常にもやもやしています。
ミステリと言うなかれ
halfboileddoc.hatenablog.com『巴がゆく!』の人の、『動く安楽椅子探偵もの』
心理描写というか、深読みがおもしろい。主人公のいい意味で動じない不思議少年感。よき。
北北西に曇と行け
これもかなり面白かったけど、Blogに書かなかったな…。アイスランドに住んでいる少年とその弟、その友達の話。
という一言では語り尽くせない、不思議な読後感。
何と似ているだろうか……ちょっと思いつかない。
海外の文学作品のようなからりとした開放感がある。
こづかいバンザイ
halfboileddoc.hatenablog.comこれは、それとは真逆の、日本でしか生まれ得ない作品。
『四畳半ジャズ』って言葉があるけど、四畳半漫画とでもいいましょうか…。
月1万円台のお小遣いで知恵を振り絞って生きるお父さん達! たしかにこづかいバンザイ!
タバコとか酒とか飲むのやめたらいいのに…と思う。
ゴブリンスレイヤー、

ゴブリンスレイヤー 1巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
- 作者:蝸牛くも(GA文庫/SBクリエイティブ刊),黒瀬浩介,神奈月昇
- 発売日: 2016/09/13
- メディア: Kindle版
blog.tinect.jp
一人一人は弱小だが、数が集まるとある時点で、全く手に負えない存在になってしまう、その相転移の怖さ。
それがきっかけでゴブリンスレイヤーを読み始めた。
なるほど面白いですね。
RPGとシミュレーションゲームの間というか、多対多のバトルはファンタジー世界ではあまり描かれないけど、ゴブリンとの戦闘は、そういう名もない乱戦。
そこにフォーカスをあてた作者というのは、他の人にはない独自な視点を持っているなあと思った。
続編・外伝も含めて、まずまず読んでいます。またBlogに書きます。
かっぴー
halfboileddoc.hatenablog.com
なんだかんだいって、当代の荒描き絵師かっぴーの作品はまずまず読んでいる。
左利きのエレン、SPA!連載のバズマン。どれも面白い。
クリエイターという存在に対する全国民の憧れをうまく吸い上げているとは思うけど。
ただ『オシャ家ソムリエ』と『金子金子』は一巻ですっきり終わって面白かった。
基本辛辣ですよね。ツッコミが容赦なくて好き。
PANPANYA
halfboileddoc.hatenablog.com
去年の新年、誰かがBlogでオススメマンガでとりあげていた。読んでハマった。
ガロっぽさある。つげ義春でもますむらひろしでも諸星大二郎でもないが、それに比肩しうる強度のイマジネーション。
脳内でかなり明晰な妄想を描ける人。そういう漫画。
どれでもいいからとりあえず一つ読んでみよう。
まとめ:
歳をとると、いろんな漫画を読んだ経験が邪魔をして、新しい漫画を素直に楽しめないだろうと若い頃思っていた。
しかし実は、40歳を越してからは、どんどん己の性格のこだわり、批判精神や斜め上からの視点がなくなった。
そうなるとほとんどの漫画を素直に楽しめるようになった。
かといって、昔の漫画を読み返すとクオリティに我慢できないものもある。
だから、単純に今の漫画って結構質が高く面白いんじゃないかと思う。
シニカルさのようなものを捨てて、正面から作品を楽しんだほうが人生は楽しい。