オススメ度 100点
見事! 150点
噂にはなっていたが読んでいなかった『A子さんの恋人』を読んだ時に「これはえらいものに触れてしまった」と思った。
ぶっささる、えぐる系の、丁寧な恋愛心理描写。
halfboileddoc.hatenablog.com
ハチクロもそうかもしれないけれど、クリエイティブなものへの憧れであるとか、恋人との距離感、「好き」という感情への対応であるとか、まあ美大をとりまくあれやこれや、ではあるけど、普遍性もあり、なんというか、青春のあれやこれやがずんずんとえぐられる。
今回7巻で完結。表題で名前を『A子』という無名性のところに落とし込んでいる秘密が明かされたり、主人公の葛藤やすれ違いの種明かしがされたり、見事な完結の仕方だった。寓話的なことでいえば名前を取り上げられた人が名前を取り返すお話であったり、物語によって現実の人物が救われる話であったり、むしろ構成美さえ感じられる大団円(というにはほろ苦かったりもするけれど)だった。
自分の経験でいっても、青春時代に自分の中で解決できずにそのまま心の奥底に閉じ込めた恋愛というのがあるけれども(いくつかはその後解決、というか宥和できるチャンスはあったかもしれないが、そう人生うまくはいかない)、こういう形で決着と訣別ができるというのは、とても残酷であり美しいことであるなあと思う。人を好きになることの、つらさと素晴らしさ。切ねえ。切なすぎる。
うん、これは万人のこじらせ男子・女子にオススメしよう。