半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

「Artiste(アルティスト)」さもえど太郎

最近よくSNSとかで漫画アプリの宣伝があるけれどそんなサイトでちらっと観て気になった作品。
読んだら、面白かった。

フランスの話。

パリのレストランで働く気弱な青年・ジルベール。雑用係として、毎日皿を洗い続ける平凡な日々を送る彼だったが、陽気な新人・マルコとの出会いによって、世界は変わり始める。気鋭の新人が全霊で描く、すべて人々に贈るお仕事青春ストーリー。

自分に自信が全くないけれど、嗅覚と味覚は天才的な青年、ジルベールが主人公。
だけど才能は近しい人達には理解されている。「わかる人にはわかる」ってやつ。

半分引退した伝説のシェフ、メグレーが彼を副料理長に抜擢しレストランを立ち上げてゆく話。

ということで、グルメ漫画のようなつもりで読み始めたが、これがグルメ漫画じゃなくて「仕事漫画」なのだった。

集められたメンバーは、突出した才能を持つかわりに、様々な欠点を持っている。
明らかにアスペルガーだったり、自信がない性格だったり。
そんな人達が集まって一つのチームを作る。
当然うまくいくわけもない。
が、それぞれの特性を理解した上で欠点を補うようなマネジメントに奮闘する(主人公が。大変だよね!)
例えば魚料理を担当するリュカは、単純作業がむちゃくちゃ得意で質も高い。ただ、定形外のオーダーは理解できないし、言葉の含意もうまく忖度できない。大きな音が苦手で体を触られるのも苦手。休日はいわゆる常同行動をとっている。
アスペルガーのラベルは貼られていないが、明らかにアスペルガー
他のメンバーもなんやかや一癖も二癖もある。
そういう凸凹のメンバーで一つの機能性の高いチームが作られていく。
物語とはいえ、組織で働いた人にとっては、結構リアルなところがあると思う。
「チーム・ビルディング」「マネジメント」のお話として、よくできているのだ。作者は何者だ?

halfboileddoc.hatenablog.com

それから、主人公は、ひょんなことから、アーティストなどクリエイティブな人しか入れないアパルトマンに入居することになる。
この住居での住人のやりとり、例えば絵描きと話をすることによって、仕事の悩みが解決するのも面白い。
例えば、味はいいが、盛り付けが平凡だと主人公は上司に指摘される。
洗練された盛り付けを身につけるように、と言われて悩んでいたけれど、休日にアパルトマンの他の住人と話していて、絵や写真の構図や色彩学を絵描きからレクチャーされ、盛り付けの構図であるとかコントラストの付け方を理解するのである。
プライベートでのクリエイティブな素養が、全く別の仕事にも生かされる。

jazz-zammai.hatenablog.jp

「チーム・ビルディング」「マネジメント」「アート思考」
「仕事漫画」としてよくできているんだよなあ。

職場の人にも読んでほしいな、と思った。

とりあえず、主人公のジルベール、3巻くらいまで、8割くらいが恐れか呆れみたいな不安気な表情。
さぞやストレスフルであろうな、と思った。