半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

2023買って良かったもの【書籍編】

なんか今年の後半以降、オフタイムや休日はいそいそと外に体を動かし、帰宅即バタンキュー生活になった。
おかげで、心身の健全性については大幅に改善されたものの、読む本と読んだ本のアウトプットは大幅に減ってしまった。
おそらく、読んだ本のアウトプット比率は今までも高くて30-40%*1くらいだったが、現在は 5~10%程度に落ちている。

なので、Blog記事にはしていないものも含めて列挙してゆきます。

世界

『世界はなぜ地獄になるのか』

橘玲、相変わらずの話。しかし世の中のキャンセルカルチャーの克明な描写など、世相を反映して厳しい。
『2050年の世界』これが未来予測系で一番よかったかも。
エクソダス買ったのは数年前。移民に関する割と学術的な考察。
『検証ナチスは「良いこと」もしたのか?』
halfboileddoc.hatenablog.com
『生かされて』
halfboileddoc.hatenablog.com
 一世代前のルワンダ虐殺版「アンネの日記」みたいなもの。
『「ほとんどない」ことにされている側から』
halfboileddoc.hatenablog.com
プーチンはアジアを目指す』
halfboileddoc.hatenablog.com

地理・自然

『美食地質学入門』

 とっつき悪かったが、色々勉強になる。
伊沢正名『ウンコロジー入門』『くう・ねる・のぐそ』うんこについてみんな考えようよ。野グソ率の記録は僕にはできないが。
『発酵文化人類学』 小倉ヒラク発酵の奥深さをわかりやすく伝える、これもいい本。
『人はどう老いるのか』久坂部羊自分の分野(看取り期医療)について共感すること多し。
『運動しても痩せないのはなぜか』
halfboileddoc.hatenablog.com
これも、ワークアウト中毒の自分にはいい本でした。

宗教

『神になりたかった男』宏洋

幸福の科学の破門された息子さんの本。面白いが、もう幸福の科学自体が斜陽なのが惜しまれる
『完全教祖マニュアル』

ビジネス

『苦しかったときの話をしようか』森岡

これが今年一番ぐっときたかもしれない。Jazzのコラムでもとりあげました。
『流れをつかむ技術』
halfboileddoc.hatenablog.com

あるく

『これで死ぬ』
halfboileddoc.hatenablog.com
いろいろ気をつけて歩こうと思いました。
『ナイトハイクのススメ』 中野純

夜、山を歩く?正気ではないが、一度やってみたい気はする。
『トレイルズ』ロバート・ムーア『死に山』
halfboileddoc.hatenablog.com
ソ連時代の失踪事件の話。

文学

『いつかたこぶねになる日』

『街とその不確かな壁』
halfboileddoc.hatenablog.com
もう70くらいの状態で青春時代の恋を描ける村上春樹の異能よ。
『白鍵と黒鍵のあいだに』
halfboileddoc.hatenablog.com
南博さんの自伝てきなやつ。めちゃくちゃ面白い。
三宅香帆『人生を狂わす名著50』『それを読むたび思い出す』
halfboileddoc.hatenablog.com
押井守 
halfboileddoc.hatenablog.com

社会

『家事か地獄か』
halfboileddoc.hatenablog.com
消極的にミニマリストになった人。論理的ではないがポジティブな書きように人柄を感じる。
『ヤンキー経済』

『世界が土曜の夜の夢なら』
halfboileddoc.hatenablog.com
ヤンキー、マイルドヤンキーについて、もうちょっと勉強する必要がありそう。
『エレガントな毒の吐き方』
halfboileddoc.hatenablog.com
『GRIT』


#買ってよかった

*1:つまり、紹介した本の2.5倍は読んでいる

2023年買ってよかったもの【モノ編】

ちなみに去年はこんな感じでした。
halfboileddoc.hatenablog.com

健康

一昨年から血圧の薬を始めています。CCB/ARB/TZの三剤でがっつり下げていたのだけれど、今年の検診でCrは1.39とかなり悪化したのでARB/TZを一時中止する。すると血圧はやっぱり高い。
結局エンレストを追加し、CCB/ARNIでCrも血圧も安定している。*1
10月にはぎっくり腰も経験した。50歳目前になってくると色々体もガタついてくるもんだ。
だが後述の通り運動しまくっているので、6-7kg痩せ、メタボ的な採血項目は軒並み正常値化した。

山歩き・ジョギング・ロングトレイル

コロナ禍で運動量が激減していたので、2022年9月くらいから運動量を意図的に増やした。河川敷をジョギングしたり、運動公園を歩いたり。近所の低山に登ったりもしていた。

2023年の歩数記録。7月くらいから10000歩を超え出した

転機になったのは今年のGW。
友人家族と、県北の熊野神社から比婆山系に試しに登ったが、後から考えると装備も不十分・水も持たずという危なっかしさ。脚力も貧弱だったのでバテバテで退散したが、案外楽しかったのだ。
そこでリベンジ…と思い、山の装備を少しずつ揃え、低山に登るようになった。
YAMAPというアプリを本格的に稼働したのは7月。

ゲーミフィケーションとしてよくできたアプリである。
yamap.com

山に登る脚力のためにジョギングするようになり、徐々に運動耐用量は上がった。
どうやら、登る行為自体にはそんなに自分は惹かれないようだ*2。車で登山口にいき、登山して車で帰るのには、そこまで惹かれない。山の麓からガッツリ歩きたい。
結局、散歩というか、ハイキングなんだよな。好きなのは。

「中国自然歩道」というのがある。
www.env.go.jp
これを、少なくとも広島県内は走破したいなあと現在計画中(忙しいのでセクションハイクではあるけれども)である。

そんなわけで2021年にはキャンプグッズに大ハマりしたが、2023年は登山・ハイキング系のギアに大ハマり。
おかげで、ベースレイヤー・ミッドレイヤー・シェル・インサレーション、ゴアテックス・ポーラーテック・コアロフト、タイベック・ダイニーマ・DCFなど無駄な用語と知識がずいぶん増えた。

HOKA

ジョギングにはClifton 9、山用としてMERRELLのトレッキングシューズが2023年の出発点だった。
アスファルトをMERRELLで長時間歩くとしんどい。オフロード・オンロード兼用のシューズが欲しいといろいろ探した。
トレラン用のHOKA Challengerが割とよかった。のだがこれは吐き潰し、
結局は現在 HOKA Speedgoat GTXに落ち着いている。

走って良し、登ってよし、歩いてよし、ちょいフォーマルでもギリよしで、満足している。

Arc'teryx

始祖鳥のロゴでお馴染みのアークテリクス。
山グッズを揃えるに際して「モンベルおじさん」「パタゴニアおじさん」という揶揄を知っていたから、おじさんくささを消すために色々ブランドを探した結果、アークテリクスに行き着いた。
オシャレかつ高機能。その反面めちゃ高価。
でも差別化を図るにはちょうどよい。
ただ、アークテリクス、世界的に人気でめちゃめちゃ品薄なのよ。
アークテリクスのアプリでも人気商品はほとんど売り切れている。
なので抽選で購入したりするのである、いい年したおじさんが。
やれやれだ。
Norvan 14, Arrow 26, Arrow Waist pack, Atom HeavyWeight Jacket, Hurum Hoodie, Delta Jacket, Kayanite Hoodie, Gamma MX jacket...いろいろ買った。
ついにはVeilanceにまで手を出し、完全に沼っている。楽しい*3

ただ、トップシェルは、2007年くらいに買った North Face Summit Labelのゴアテックスと、
チェコの山岳救助隊 Tilak(これも2010年代に買った)のジャケットを使っている。
これらはインドア時代に買ったのだが、10年以上たって、今本来のフィールドで活躍しているのは面白い(二つとも長年月ほったらかしていたのでヘタっている。というわけでアークテリクスのトップシェルを発注中…)

その他

リュックは Karrimor Cleave 30 , Hagrofs Corker 15, 上述のArc'teryxを買った。

KarrimorはUL系の知識からこれにしているが、軽くて便利だ。

普段履いているパンツもほとんど山用のもの。Patagonia , North Face、Houdini、のパンツを愛用している。

サーマルウェアとしては以前から目をつけていたモンベルの1000fpのインナーダウンを買った。

(色は白いやつを買っているが)

トレッキングポールは Lekiのフォルディング可能な高いやつ。

残念ながら、手袋・ヘッドライト・タオルやてぬぐいは山で何個かなくしてしまったので、消耗品と割り切ってあんまり高いものは買わないようにしている。特に手袋!

ファッション

Oliver Goldsmithのクソデカサングラスを買った(当然度入りである)割とインパクトがある。

prescribed sunglass, Oliver Goldsmith

LOEWEの折りたためるバッグ、何度も逡巡したあげく、結局買ってしまった。

折りたためるので、あまり使わなくても革の劣化・変形を防げるか

あと、ややハイエンドの腕時計を二つゲットした。
が、普段Apple Watchを使っているので、ほとんど出番がない。

デジタル:

デジタルガジェットについては今年はほとんど見るべきものがない。
JBLBluetooth Speakerをいくつか買い足したのと、同じくJBLのノイキャンイヤホンJBL tour Proはかなり満足度が高かった。ジョギング用にはShockzを買ったが、これもかなりいい感じだ。
とにかく、重厚長大さをきらい、最近は装備品の軽量化をはかっている。
小さなMobile Batteryも積極的に使っている。

今年はこんな感じです。

*1:自分はかなり塩分をとる人間だったんですが、結構減塩には気をつかっていて、検尿で測定する推定1日塩分摂取量は10g以下だった。

*2:ちょい高所恐怖症気味だし

*3:Veilanceはアークテリクスのサブブランド。値段はアークテリクスより高く、タウンユースでシュッとしたデザインなのにアウトドアの性能という狂った仕様。おまけにアークテリクスのロゴもない。Silent Luxuryってやつなのか。

将太の寿司

前回エントリの「寿エンパイア」の後、気がつくと1ヶ月以上空いちゃったなあ。

寿エンパイアの読み味で、過去の寿司漫画の金字塔、「将太の寿司」を思い、読み返していた。
実は将太の寿司にも続編があり、それはそれで読んだのだけど、今回はオリジナルの方。

将太の寿司。その後の寿司漫画のルーツとでも言えるジャンル開祖漫画とでも言えるだろうか。

しかし将太の寿司、辛いことや、赦し、癒されたりの時に、大粒の涙をぽろぽろとこぼす。
グルメ人情噺みたいな側面が強い。

あそこまで人情噺を前面に押し出すパターンは、正当後継者というと
蒼太の包丁、だろうか。これは大粒の涙をながしこそしないが、妙に目がうるうるしている漫画。
江戸の人情、的な感じでいうと一番読み味が近いかも。知らんけど。

寿エンパイア

SNSの漫画紹介で、まんまと釣られ読んでしまった。
https://twitter.com/QJOqv3oIwaeisUy/status/1724441258100175154

ハワイで海洋生物の研究をしている若い男の子涌吾が主人公。
主人公は実は日本寿司界に燦然と輝く老舗華山の4代目の隠し子だった?!
…ということで来日し、華山で修行が始まる日々。そして寿司コンテスト。

ストーリーの中心はまあまあ荒唐無稽な話が続くけれども、
すっきりとした読み味でどんどん読み進んでしまった。

・主人公がナイスガイ
・キャラはそれなりに立っている
・寿司の蘊蓄も楽しい
・食べた時の描写がだんだんエスカレート

よくないところ
・人格造形がエキセントリック
・ストーリーがいきあたりばったり
恋愛模様の感情描写がてきとう

主人公の涌吾君はすごいナイスガイでして、負けた時も素直に負けを認めるし、勝った時も対戦相手のいいところをリスペクトする。鬼滅の刃の炭治郎なみに優等生。ただ、漫画ですからね、リアリティよりも気持ちよさを優先しているんでしょう。

まあしかし、変に感じるところはある。なんか、やってんの?っていうくらい皆テンション高いし。
普通のドラマに、いきなり暗転〜そしてスポットライト、みたいなエキセントリックさがあるんだな。
そう、料理の鉄人っぽいんだよ。

まあ、リアリティよりもエンタメ性なんだよね。
あと、強敵児島さんの口癖「マッズ!」と主人公ユーゴの「エンジョイ!」は、ちょっと癖になりそう。真似してしまいそうな危険がある。

『ニーティングライフ』

WebとかSNSでCMをみて、続きが見たくなり読んでみる。
作者は多分中堅どころのベテラン。絵が上手い。

いろいろあって会社を辞めてニート生活をすることにした主人公。
この主人公のニート計画の作り込みが、大変すばらしい。
素晴らしいかどうかはわからないけども、ここの「人と合わないための生活設計」が大変緻密でありまして、このあたり「僕の考えた〇〇」感があって
「おおー……」となる。

この漫画、とても構成が綺麗でありまして、

このニート生活導入部の緻密なニート描写:起
ニート生活だったのに、隣人が…という変化が訪れる:承
しかし急転直下危険が訪れて:転
最後に主人公に大きな変化が訪れる:結

それぞれ描写が丁寧かつプロッティングとその配分が非常にキレイ。
ODD taxiのストーリーテリングのうまさに通じるものがある。

上下巻でさらっと終わるのもいい。
難をいえば、非常によくでき、細部まで凝ってよくできているストーリーテリングだけれど、
それだけに、モヤモヤみたいな後に残るものがあんまりない……かなあ。

イケズな東京

ちょっと前に中野信子女史が書いていた京都の悪口本を読んだが、その流れでこの本に。
halfboileddoc.hatenablog.com

(直接は関係ないけれども京都の「イケズ」が面白かったので)

青木淳さん、井上章一さんのコラム・対談本。

コロナ禍で東京一極集中の是正が叫ばれるが、事はそう単純ではないと井上氏。私たちの東京への思いは複雑で、長尺の歴史から捉える必要がある。そう、京都から東京に天皇が移り住んだ時代まで遡って。『京都ぎらい』の井上氏に対するのは、二都を往復する気鋭の建築家・青木氏。二度の東京五輪大阪万博など、古今東西の都市開発のレガシーについて論じ合う。

内容は多岐に渡る。
系統的な話というわけではなく、いわゆるランドスケープを主題にすえた印象論のようなコラムのような感。
もちろんそれぞれの分野での泰斗である両者の切り口で、いろいろ面白い話だった。

強いテイクホームメッセージがあるわけではなく、経験豊かなおじさんのこぼれ話を聞いているような風情の本。
肩肘張らずに読める。(その分何かが強く残るわけではない)

以下、備忘録、

  • 今の都市景観はブルジョワの覇権の裏付け。
    • かつての天守閣=権威の象徴。今でも本社ビルは経済合理性というよりは見栄の要素も大きい
    • 東京に本社を置くメリットとデメリット
    • 昔は商家は2階までしか作ることを許されなかった(商人風情が武士を見下ろすのは失礼という考え)。明治維新後 三井が建てた兜町の銀行=天守閣風の建物
  • ヨーロッパでは都市建築の外観は都市の公共性に奉仕するものだとされている。制限が大きい。東京大阪ではなんでもあり。
  • 省庁の地方移転にまつわるアレコレ。官僚は都内からでることをいやがる
  • 京都=「みやこ」という地元の人の感覚はあるけど、帝都は結局のところ東京か
  • 昔はオリンピックは万博の余興でしかなかった。万博の会場が技術コンクールの場ではなくなっていくにつれ、万博はだんだん展示物よりも展示へウェートをおくようになった。
  • 戦前は神宮球場プロ野球は使えなかった(学生は使えた)。当時は職業野球が見下されていたため
  • 昔は当たり前だった「水上生活者」
  • 神戸女学院のヴォリーズ建築
  • 平安神宮の池

『徹底抗戦都市モスクワ』小泉悠著

これ、多分オタキング岡田斗司夫チャンネルで紹介されたので読んでみた。

ウクライナ戦争関連の著書で名を馳せた小泉悠さんが、無名の時の本(なんだと思う)。なので、名で売れるわけではなく、トピックで売れるために、わかりやすく、漫画仕立てにしていていて読みやすい。実にサブカル的な読み味である。

ロシア・モスクワ。今は「侵略国家」みたいなイメージがあるし、まあそれはそうなんだけれども、
そもそも国の成り立ちから、侵略されつづけた経緯があり、自己防衛的なメンタルが好戦的な性格の淵源になっているわけで。

防衛施設とか、軍事博物館とか、街の構造をそういう観点で見直すと、また違ったふうに見えるよね。ということでなかなか趣深い本だった。