半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『人生はワンモアチャンス』水野敬也

オススメ度 90点
にくい!度 100点

人生はワンモアチャンス!  ―「仕事」も「遊び」もさらに楽しくなる66の方法

人生はワンモアチャンス! ―「仕事」も「遊び」もさらに楽しくなる66の方法

人生はワンチャンス!   ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

人生はワンチャンス! ―「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

一言。スキのない本やな。

夢を叶えるゾウなどでヒット作をとばした水野敬也の、名言集。
2ページで1項目。
まずは、面白い犬の写真。
そして説明。
ついでにその名言に伴う、偉人の言葉を3〜4人ずつくらいあげてある。

犬の写真でクスりとすることもできるし、名言を心に残すこともできる。
名言録としても十分な量があるので、2ページを1日として日めくりカレンダーみたいに使うもよし、人にあげてもよし(リアル書籍はやぶって一枚ずつ使えるようにミシン目が付いているそうだ)。

ココ・シャネルの名言率高し。きっと作者がすきなんだろうな。
これは売れると見えて、続編多数。
ワンモアチャンスは、ワンチャンスの続編。
「人生はニャンとかなる」という猫のシリーズもあるし、
人生はZooっと楽しいという、いろんな動物編もある。
拾える時に拾っておけという感じだ。

ヒット作の方程式を知り尽くしている感じで、「そりゃ売れるわ」と思う。
そういう意味での可愛げのなさで、若干減点。

もう少し言えば、この本で水野氏がやっていることは「編集」そのものであるということ。
すでにあるいくつかの物を並べて、統一感を出し、新たな価値観を生み出す。
かなり優れた編集手法を見て取ることができます。

『図解モチベーション大百科』

オススメ度 100点
1項目は短め。リファレンスにしやすい度 90点。

図解 モチベーション大百科

図解 モチベーション大百科


「うぬぼれデカ」という長瀬智也宮藤官九郎のドラマに、恋愛学の教授がでてきた。
くだらない動物実験データを持ち出すという、ややウッディアレン的な小ネタを挟んでくるわけだ。

youtu.be

これはあまりいい例ではないが、ちょっとしたことを言うのに、エビデンスを引き合いに出して喋ると説得力がますというのがある。
心理学の実験データ、それから導き出される結論、それによって得られる知見、というのが、
非常にテンポよく紹介されている。その数約100!

すぐ読めるし、よくわかる。
1項目は5分もかからない。
ただし、結果の解釈に妥当性があるかどうかは、この紹介記事ではうかがい知ることはできない。

まあ、でも。世の中のビジネスコンサルのほとんどはこういう知見を所与のものとして動いてんだよ。
敵を知り己をしるために、読んでおいたら楽しい本である。

手元においてリファンレンスとして使うのにはいいと思う。
シンプルな構成にしたのが成功の鍵であるような気がする。

『人類5000年史、I〜Ⅱ』

オススメ度 80点
分かり易すぎるのも問題なんじゃないか度 90点

人類5000年史II (ちくま新書)

人類5000年史II (ちくま新書)


ライフネット生命でネット界の知名度を得た出口会長。
読書好き・歴史好きであることは今までの著作でよく知られている。
出口氏の本、なんだかんだいって読みやすいもんだから今までいっぱい買っているんだよね…

『サピエンス全史』とか人類の進化論的な最近の話題書とかも当然読んだ上で、それらを咀嚼し、とてもわかりやすーく紹介してくれる。
出口流の歴史総括本。
本人こういうの書いてみたかっただろうなーと思う。

非常にわかりやすい、成書的な記載。
4大文明を順繰りに鳥瞰しているので、いささかテンポについていけないところがあったが、基本的には読みやすい本である。

出口氏がたくさんの本を読んで、飲み込んで・咀嚼したもの。
言い方が悪いが、出口氏の体内を通ってでてきた易消化体のようなものだ。
母鳥が雛に与えるようなやつね。
それは楽に情報にはアクセスできるが、本を咀嚼し吸収する楽しみとは別にあるものなので、ぜひこの本の骨格をなす原典にはあたっておきたいものだな、とは思った。

『なるほどデザイン』『けっきょく、よはく』

オススメ度 70点

けっきょく、よはく。 余白を活かしたデザインレイアウトの本

けっきょく、よはく。 余白を活かしたデザインレイアウトの本


ついこの前、デザインからみで紹介しましたこの本。
halfboileddoc.hatenablog.com

『エンジニアのための理論でわかるデザイン入門』が基礎だとすると、今回の二例は実例編、とでもいうものだと思う。
もう少し詳しく言えば『エンジニアのー』が、音楽の理論書だとすると、今回のは、有名なアルバムの採譜とアナリゼ、みたいな感じだ。
メインはDTPであるが、実際の雑誌記事やチラシなどの、デザイナーが請け負う案件のよい例悪い例まじえていくつかのバリエーションを示して、実際に制作に当たる人に役立つ「作り方」を紹介している。

これを読んでいて、そういや僕昔はMdNとかちょくちょく買うような男だったことを思い出したよ。

2000年から2010年くらいまではHTMLを手打ちで打っていた。
そのころにデザインの教科書を読み漁り、自分の経験にはさせてもらったけれども、いつしかBlogで既存のCMSに乗っかることをなんとも思わなくなっていた。楽だし、デザインでそこまでこだわる部分も、正直ないしね。
既存の帳票を使う分には、最低限クリアすべき要件は当然改良されていることが多いからね。
しかし、ジャズミュージシャン活動に際してのライブのフライヤー作製のスキルには転用できています。

『こどもの一生』中島らも

オススメ度 70点
院長の公私混同ぶりに若干憧れ抱いた度 80点

こどもの一生 (集英社文庫)

こどもの一生 (集英社文庫)

Kindleの日替わりセールで99円で売られていた。

中島らもの、著作というか、脚本のノベライズ。
若干隔絶された孤島で、様々な社会人の大人が子供時代になりきって生活をする。
藤子不二雄FのSF短編集にあるような導入部だ。
これは何かのセラピーで、そう演じることが、クライアントのストレスコントロールにいい、ということのようだ。

そんな中で、フラットな人間関係からはじまるなか、ワンマン社長が一人王様然と振る舞うように関係性がかわっていく。
(このあたり、『蠅の王』っぽい)
それに対抗すべく、皆が、共通した架空の人物の知り合いを捏造し、社長を疎外し話を盛り上げることで社長を仲間はずれにし、疎外感を味あわわせる。
しかしそれに気づいた社長が…

みたいなところから後半はホラーというか、スプラッターというか、そんな展開になってゆく。

* * *

B級ホラーの習作のような感じでした。
さらりと読める。
もともと脚本として書かれたようだが、劇だったらこの展開の不条理さも気にならないだろうが、小説としては、いろいろ整合性が気になった。

多分、演劇だったら、最後カーテンコールで出演者が再登場してなんかええもんみたなあ…という感じになるんでしょうね。
演劇中演劇みたいなやつだし、割とみている分には多義性もあるし。

このセラピーをプロデュースしている院長は、釣りや狩猟をたしなみ、アウトドアを満喫しているようで、ちょっと羨ましいなと思いました。

AmazonKindle日替わりセール、しかし扱いは古本屋の店頭に平積みにされている百円均一セールのようでもあった。
媒体がどうかわったとしても、ぞんざいに扱われるときはぞんざいにあつかわれる。

『ヤクザと原発』

もともとヤクザものの記事を書くことで定評のある記者。

アーカイブを掘り起こしてみると、以前に「ヤクザの修羅場」というのを読んでいた。

これは、ヤクザ社会との付き合い方といいますか、そういうのが印象に残っている。

さて、原発というのはもともと住民の反対運動を押さえ込んだり、用地買収などにも困難を極めているため、ヤクザ組織をとおした問題解決が、過去には普通にあった。
原発というのは金になるのだ。
だからシノギになる。

そういう前提条件と歴史的経緯があるところに、東日本大震災福島原発が爆発した。
福島原発の工事をやらなきゃいけない。やりたがる人はいない(被曝のリスクもあるし、東電に対する信頼感は地に落ち、情報もとにかく隠蔽されている印象があった)。そんなところにまともな人が喜んでいくわけはないので、とにかく人が足りない。
危険手当ということで、人件費が跳ね上がるし、それでも来ないなら、ヤクザに人集めを頼むしかない(厳密にいえば、両者は同じ意味だ)。
そういう前提で、鈴木智彦氏はいわゆる1Fに潜入取材を行う。

工員の日常や、視点が垣間見える貴重な体験記ではあるし、
キャリアの多くをヤクザ取材で過ごしてきた筆者はとにかく「ヤクザの匂い」に敏感だ。
ヤクザの関与する余地や、ヤクザが関与しそうなビジネスに関してやたら目がきく。

もっとも、ヤクザ=反社会組織とラベルを貼り、関係を断とうとする現在の風潮は、ある種のことなかれ主義ではある。
半世紀前は、色々な社会のコンフリクトを彼らを用いて解決するという問題解決法は当たり前のことだった。
昭和の芸能界なんてヤクザ社会との親和性が非常に高いものだった。
だからといって、美空ひばりを歴史から抹消してはいけないし、
ドラッグをやっているからといって、チャーリー・パーカーマイルス・デイビスを歴史からなかったことにするものではない。

偉大なアーティストだけが別格視されてその他の人間は抹消されるのは不公平だ。
その時代にはその時代なりの基準があるはずで、
その時代性をきちんと評価するべきだと思う。

* * *

まあ、原発については、時代の徒花という感じはぬぐえない。
今新しく原発を建て替える、もしくは今ある原発を改良して使い続けるにしろ、過去に使えたヤクザを用いた用地購入などは、現代では許されない。
ガイガーカウンター以上に、「クリーン」であることが求められる。

そんななか、新たな原発建設は、多分無理だろうな。
廃炉だって、うまくいくんだろうか?

『しょぼい喫茶店の本』

しょぼい喫茶店の本

しょぼい喫茶店の本

いかにも現代的なサクセスストーリー。

【STORY】
就活に失敗した大学生が、人生に行き詰まる→「しょぼい喫茶店」をやりたいとブログに綴る→『しょぼい起業で生きていく』著者・えらいてんちょうに発見され、ブログがSNSで話題に→見ず知らずの人から100万円もらう→ここまでの展開に感動した女性が「手伝いたい」と鹿児島から上京→ふたりで「しょぼい喫茶店」(という名前の喫茶店)をオープン→紆余曲折ありつつ、そしてふたりは結婚。という超絶ウソっぽいですが実話、のお話です。

引っ込み思案でいいところのない(とはいえ成績はいいのでいい大学には入っているけど)筆者。しかし対人関係が全くダメで、就職活動も全滅。
どうしようもない…もう俺はどうしようもない…
というところから話は始まる。

まあこの青年の心情も、若い時の自分を考えると全く無理もなく、しかも就活市場なんて、自分を売込まなければいけないやつ。
僕も今よりは随分社会性のない若者だったから、わかるわぁ…

しかし今はSNSとかそういうので、昔では考えられなかった人との繋がりで、なんとか喫茶店を開店するところまでこぎつける。
そうなってくると、地頭がいいので、戦略的にこうしたらいいとか、今の店のあり方はまずい、みたいに、きちんと考えて、対策を立てて、
(まあ、こういうのってシミュレーションゲームの感覚でもある)、その結果店も軌道に乗るようになったし、開店の時にSNSで知って鹿児島から東京に転がり込んできた女性と結婚もしてしまう。

あー、上に書いてあることそのままだ(苦笑)。

臨場感のある、素直な文体。
私小説的といえばそうなんだろうけど、ゴーストライターのいる芸能人の自伝のような文体でもある。

まあ、人間関係について苦手だっただけで、著作を見る限り頭の言い方でもあるし、シュッとしていて今時の若者らしい爽やかさで、
おしかけた女性と結婚するのも、そりゃ結婚もできるわなあ、とは思いました。
歯車が回り始めたらリア充だわね。

* * *

ビジネスのあり方としては、だいぶ前に買ったこの本と同じで、現代感が感じられる。

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

これも、岡山県の片田舎で、天然酵母を用いた手作りパンを売る店をやる人の話
(今は場所を変えて別の場所でやっている)
当然普通のマーケティングでは採算がとれるはずもなく、皆に反対されるわけだが、SNS時代、自然志向時代でもあり、案外つぶれない。
大規模資本集約的な産業ではない、ストーリーのあるお店づくりができれば、やっていける。

21世紀らしい集客の形だと思うし、それのいいところだと思う。
反面、打ち出せる明確なコンセプトのない一膳飯屋はどんどんフランチャイズに取って代わられる厳しさの裏返しでもあるわけだけど。