半熟三昧(Half-boiled doctorのアウトプット Blog)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『生者の行進』みつちよ丸

生者の行進 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

生者の行進 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

生者の行進 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

生者の行進 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

生者の行進 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

生者の行進 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

スマホなんぞでだらだらネットをみていると、デジタルコミックのアプリの紹介とかあるじゃないですか。
あれって、既存の漫画のちょうどいい一瞬を切り取って、すごい続きが読みたくなりますよね。

その商法でつられてしまった漫画。
(また漫画かい!)

ただし購入はKindleで。
マンガアプリはどうも苦手でね。

* * *
ん。
んー。
んー。いいじゃん。

3巻で完結しているので、テレビドラマにするには丁度いいくらいのストーリーかなと思いました。
ただ、CGが結構必要なので、予算的にはどうだろう。ジュブナイル系のドラマになるでしょうね。
割と簡潔なストーリーテリングで、読後感もすっきりしていてよかったです。

最初はネット漫画から始まったんですね。絵柄(多分すごく時間がなかったんだと思う)と、
割と登場人物の世界が狭い(セカイ系?)のが気にはなりましたが、
その分もしドラマ化するのであればキャスティングは容易なのではないかとは思った。
ちょっとご都合主義的な部分もありますが、プロッティングの完成度は高いと思いました。

Blue Giant Supreme 6

Kindle版はコチラ

このBlogでは一度も取り上げたことはないと思うが、あたしも、アマチュアジャズマンの端くれ。
ジャズ漫画ということでは、細野不二彦「Blow Up!」以来出るものはチェックしているでございますよ*1

国内版 Blue Giantが終了し、海外編のBlue Giant Supremeも順調に進んでいる。
ダイはメンバーをみつけてバンドを組む。
しかし結成第一回目のお披露目では、ボタンの掛け違いのような感じで手ひどく失敗する。
(このあたり、妙にリアリティあるよな)

失意にくれる暇もなくその後、ドサ回りのようなツアーのようなものを始めた御一行様。
相変わらず金はない。
が、メンバー同士の理解も進み、サウンドも進化しているようだ。
私はプロツアー経験はもちろんないが、たまに地元にツアーで来るミュージシャンにツアーの話を聞くこともある。
毎晩演奏を繰り返し、みんなで行動をともにするので、やはり何かしら演奏にもブレークスルーがあるらしい。

フェスの参加にこぎつけ、次巻に続くが、楽しみだ。

* * *

非常に共感できる漫画なんだけれども、私のスタンスは、ドラムのラファエルに近い。
サウンドをまとめて破綻なくそれぞれの持ち味を発揮させる、というのが、自分の考える理想のサウンドメイク。
逆に、主人公宮本大のような、ある種「現代のJohn Coltrane」とでもいうような、突き詰めて突破するような、ストイシズムとは相容れない。
そもそも自分の中のデーモニッシュな要素と向き合うことを、僕はきちんとやってきたのだろうか?
ジャズのイディオムのような明晰な部分については、積み重ねてきた。

しかし、アクセルをめいいっぱい踏んで自分のエンジンをレッドゾーンまで回すようなことは、してきただろうか?*2

最澄空海
顕教密教

顕教最澄は、空海にはなれなかった。
ジャズも、解析可能な部分だけを取り扱っていても、多分その次のレベルにはいけないのだ。

僕は顕教の人間なのだ。


そんなことを考えなければいけないので、Blue Giantを読むと、自己嫌悪に陥る。

* * *

6巻の前半では、公共施設においてあるピアノがターニングポイントになっている。
最近地元の駅の構内にピアノが置かれていて、私も時々弾く。
音楽のもとには人は平等であるが、ピアノだと十分自分が発揮できないのがもどかしい。
 そして、自分が弾いたあと、上手い人が弾いたりすると、顔から火が出そうに恥ずかしい。

大のように、屈託なくまっすぐに音楽に取り組めればいいのだが。

*1:坂道のアポロン」はアニメも漫画も良かったですよね

*2:これは無理もない話で、私は、ゲイリー・マクファーランドとか、ジョアン・ジルベルトとか好きなんだから仕方がない。

Apple watch 4の話

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そう言えば、Apple Watch届いていました。予約受付の9月21日に早速予約をして、一ヶ月後に届きました。

富裕層の僕は、迷うことなく一番安いモデル。
GPSのみで電話できないやつ。え?何?

実は今までApple WatchはSeries 1を後生大事に使い続けていたのです。
この度ようやく買い換えることができました*1

Apple watchですから、基本的には一緒です。
でも、ファームウェアもアップデートされて、少しずつ違うところがある。

  • アクティビティリングを完成させると、「ゲームセンターあらし」の炎のコマみたいなギュギュギューンと炎っぽいアニメーションで「完成しました!」と祝ってくれる。
  • Siriの呼び出しが、なんかおどろおどろしい(音質がよくなった)
  • エクササイズを始めると、まあまあ自動的にエクササイズモードに切り替わってくれる(多分、体活動計が常時モニタリングしているんだろう)。このお節介は許す。
  • 逆にジョギングとかを記録しているモードで、とぼとぼと歩いていると「大丈夫ですか?エクササイズ(モード)を終了しましょうか?」みたいな確認画面がでてくる。全く要らぬお節介ですね。「わかったよ走るよ!」みたいな感じになる。
  • 運動を達成させようという働きかけがお節介。夜10時とか11時とかに「半熟さん……今日はちょっと運動が足りてないようですね……でも!半熟さん!いまから9分早歩きしたら!!リングが!!完成しますから!!」みたいな励まし方をされる。うん……わかった……、ちなみに今、外は土砂降りだよ?
  • 画面はSeries 1との比較ですが、明らかにめっちゃキレイ。新しい文字盤もいい。ただし結局慣れたやつしかつかわないよね。
  • サイズがすこーしだけ大きくなったので、今固定長のスチールバンドを使ってるので、フィット感が少し変わって、隙間ができたためか時々心拍数が拾えない。かといってもう一回ばらすのもなあ…
  • バッテリーは公称はあまり変わらなかったが、前のやつより明らかに保つようになった。朝から使って夜になっても、運動していない日だったら40%くらい残っているのには驚いた。(前のやつはもう買って時間が経っているのもあったが、一日保たなかったので)*2

*1:Apple Watchの弱点はバッテリー持続時間なので「もっとバッテリーが保つモデルがでたら買い換えよー」とか思っていたんですが、これがモデルチェンジされても連続使用時間は増えないんですよね…

*2:Apple Watchのバッテリーもたないのは当初腹立たしかったが、連続勤務のメルクマールになっていた。apple watch もバッテリー切れてしまう状態だと、休めということだ。今回買い換えてバッテリー持つようになったので、ひょっとしたら過労死してまうかもしれない

人生は運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

Kindle

id:fromdusktildawnさんははてなでも有名な「分裂勘違い君劇場」というブログを長年やっている人。
多数ブックマークされるような記事は私も時々みていた。
実名はともかく「ふろむだ」というhatena idを若干残したペンネームで一般向けの本を上梓したと聞き、Kindleで買ってみた。

出張の新幹線、および渋谷の眼鏡店での待ち時間中に読む。

うん、なるほど。
錯覚資産。
資産運用は福利で指数関数的に資産は増加するもの。
ゆえに、最初の資産が増える部分は意外に時間がかかる。
フェアに資産をちょっとずつ増やすより、もし初期の段階で、大幅な借り入れできるなら、有利な位置からスタートできる。

なるほど、なるほど。


少し本の内容から離れるが、
私が自分の出自に対して、なんとなく後ろめたい気持ちがあったことに、少しだけ理由付けができた。
要するに、二世みたいな人種は錯覚資産を付与されているからなんだ。

逆に「二世」みたいな人が意外に活躍する原因って結局そういうことなんだろう。
際立って無能力な人を除けば、資産に下駄をはかされた状態でスタートするだけで普通に運用しているだけでも、本人の評価は増える。

私も二世として生まれ、若くして病院長*1をする羽目になったわけだが、
委託された資産(錯覚資産)を普通に運用しているだけで、その立場にない人に比べて随分いろんな経験をさせてもらい、おかげで成長したと思う。
「立場が人を育てる」というのを、定量的に解析すると「錯覚資産」という概念と非常にマッチする。

では圧倒的に有利なのは二世・三世に限られるのか?というと、そういうわけでもない。
この本ではそういった「錯覚資産」という言葉で、裸の自分に下駄を履かせられる現象をラベリングし、普遍化している。
二世・三世はその一側面に過ぎない。この本で書いてあること(残酷なようだが世の中のルールだ)をよく理解すれば、自分のもっている価値=資産以上の錯覚資産を得ることができ、結果的にそれを累乗的に増加させることができるのではないかと思う。


「なんで俺はこんなところでくすぶっているんだ」という人にはおすすめ。いやおすすめできないか、手遅れだもの。
意識高い人たちにはオススメ。ますますそうでない人たちの反感は買うことでしょうが。

*1:今は理事長

『死は望むところ』深松秋生

Kindle

すんません僕深松秋生初めてなんですけど、すげーなー。
バンバン主役が死ぬ。重厚な火器で吹っ飛ばされる。

小説世界はものすごいことになっているし、続編も作り様のない、潔さがよかった。
読み味の殺伐さという意味では、これにも似ている。

「議論」に対する本二冊

クラウゼヴィッツ戦争論では、「戦争」の定義とはこうある。

戦争とは「ほかの手段をもってする政治の継続」である

ようするに、まず政治目的があって、非軍事手段を尽くしても事態の解決がなされない場合、戦争を考える。

議論も同じだ。
議論の背景にある達成したい*1目的を念頭に置く必要がある。

議論も、戦争も、容易に戦争/論争状態の継続そのものが自己目的化されるということも、「戦争論」では述べられている。

ひろゆき「論破力」

論破力 (朝日新書)

論破力 (朝日新書)

Kindle版はコチラ。
論破力 (朝日新書)

論破力 (朝日新書)

2chの管理人で有名だったひろゆきこと西村博之氏が、人を論破するには、ということで書いている本。
意外に、本のタイトルの「論破」ということよりも、うまく自分の望んでいる方向に議論を誘導するには?
というアプローチで書かれており、割と腹落ちできる部分の多い本でした。
「議論のうまさなんて、ある程度の頭のよさになってきたら、そう大きくは違いはない」なんて本人も言っちゃっていて、僕もそうだと思う。

勝てないとわかったら、平謝りにあやまっちゃいましょう、とか、
観客を味方につけるような話し方をしよう、とか、
無駄な議論で時間を費やしている、その費用(人件費)を考えて、議論する意味なかったら、そもそも会議やめません?
とか。


一方、Kindle日替わりセールで買ったんだろうか。
「議論」「論破」という意味では似ているこの本…

『場を支配する悪の論理作法』とつげき東北

場を支配する「悪の論理」技法

場を支配する「悪の論理」技法

これは、議論のための議論、という雰囲気がぬぐえなかったな。
「何のために議論をしているの?」というのが見えてこない論争。まあ、そういう混沌とした中でも論争に勝つテクニック論といえるのかもしれない。
ただ、これは僕には響かなかった。

多分、僕は中学高校と親元離れて下宿していて、エリート進学校に通っていたのだが、
そこでの下宿の先輩とこうした書生じみた議論をえんえんやっていた経験がある。
だから無意味な小才子の論争などについて抵抗もないし、そういう面倒くさいところに自分の出自がある。

でも、ネットでの言い争いって、ほとんど喧騒の中でわんわん言っているようなもので、
議論でさえない。Twitterなんか、心に欠落をかかえた残念な人達同士の感情とクソのぶつけ合い。
マウンティング合戦に過ぎない。『朝まで生テレビ』の方が、人数が限られている分まだましだよな。

* * * *
少なくとも、ひろゆきは、クラウゼヴィッツ戦争論と同じ考え。
パブリック・イメージはともかく、無意味な議論はしないのだろう。

一方の「悪の論理作法」は、インストールされているOSが私のそれとは違うかな、と思った。*2
これは、自己目的化された議論のための本だ。私には不要な能力だな。

ただ、巻末の「悪の名言辞典」は良かった。これを言われたらこれを出せ。みたいなやつ。
「あきらめたらそこで終わり」には、「引き際が肝心」
「バランスが大切」には「中途半端が一番悪い」
 他の語録も、結構よかった。

*1:合意、ということだろうが

*2:よくある「なぜ人を殺したらいけないか」という命題を僕ならこう答えるという論理展開が、僕には到底承服しかねるものであった。詳細は省くが、私の思う答えは「原理原則は平等に適応されるものなので、人を殺していい社会では、自分が殺される可能性が高まるから」というのが答えである。

『下町ロケット・ヤタガラス』

下町ロケット ヤタガラス

下町ロケット ヤタガラス

Kindle版はコチラ
下町ロケット ヤタガラス

下町ロケット ヤタガラス

下町ロケット、今クール、TVでもドラマが始まったところ。
ドラマの録画をぼんやりみながら本を読むのは、割と贅沢なことであるね。

以前の日記で、
halfboileddoc.hatenablog.com 前作の「下町ロケット:ゴースト」を取り上げ、
佃工業何も進展していないけど大丈夫か?とか言っていたんですけれども。
いやー解決編とでもいうべき「ヤタガラス」があったわけですねー。
それなら納得……というか広げた風呂敷がきれいに回収され、大団円。
まあむしろ大団円すぎるところが気になった。

半沢直樹』シリーズでも思うが、池井戸潤が完全にヒット作家になった理由はなにかとずっと考えていた。
答えはシンプルなもので、倫理小説というか、一種の宗教小説だからだ。

町田康が『大岡越前がなぜ人気があるかというかというと、あれは一種の宗教劇だからではないだろうか』という言及をしたことが、
10年くらい前だが、まだ僕の頭の中にひっかかっている。
TVドラマというのは、結果的にテレビマンの考える倫理感を膾炙している。
火曜サスペンスで犯人が崖の手前で長々と自白するのも「罪を犯した人間は言葉で発して悔い改めるべきだ」と思っているからだし、
医療ドラマで我々が違和感を感じるのも、医療者のそれとTVマンのそれが異なっているからだ*1

たとえば、伊坂幸太郎の小説はあくまでプロッティングの展開によるストーリーテリングを楽しむもので、価値観・倫理観を提示するものではない*2

池井戸潤の小説は、それとは違っていて、明確なイデオロギーのために、ストーリーがある。
半沢直樹のそれを一言で言うと『金融業は顧客のことを真に考えるべき』というものであったり、下町ロケットも『ものづくりは顧客に、そして自分の技術に誠実であるべき』というもの。
これは、江戸時代の商人道、職人道、そしてプラグマティズムの混淆したもの。
近代社会で規範とされた価値観でもあり、日本の会社組織がバブル以前にもっていた質朴な倫理規範でもある。

昭和世代にも、平成世代の皮膚感覚にも近い。
だからこそヒットするのだ。

特に、TVドラマ原作でヒットを量産するようになって、さらに、消化しやすいものになっている。
もうちょっとはっきりいうと、大衆用に偏差値を落としている。
よりヒットするために。

ゴースト〜ヤタガラス編は、正直そのイデオロギッシュな部分が、鼻につきすぎているように思われた。
作者のイデオロギーが濃厚に反映された勧善懲悪劇で、人物がストーリーのために動かされている感が強すぎる。
佃航平にも混沌とした未来の中で葛藤する経営者のリアリティが微塵も感じられない。

何しろ今はポストモダンなのである。VUCAなのである。
それでいいのか?

*1:Dr.Xの「私失敗しませんから!」という、虚構にしてもありえない人物像の滑稽さ!

*2:もちろん、深く掘り下げると、人間の行動原則に対する洞察・作者の行動原理などは透けて見える