半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

”Blue Journey” 和田明 布川俊樹

オススメ度 100点
絶対31歳じゃないだろ度 100点

BLUE JOURNEY

BLUE JOURNEY

ジャズギタリストの布川俊樹さんは、私の住んでいる街福山にもよくやってきます。
そんな布川さんが、ある時若いボーカリストを連れてきたのだが、あまりのすごさにぶっとんだ。それが2年前。
ファーストアルバムもよかったが、今回は布川さんとがっちり組んでDuoでアルバムを作り。
レコ発ツアーをして、福山にも8月24日にやってきました。

まあ、すごいのよ、この人。表現も確かだけど、ジャズに必要なアドリブも、対応力もある。ユーモアもある。
歌もうまいしなあ。

stay tune - suchmos 和田 明の0号シリーズ。②

これ、サチモスの Stay Tuneを歌ってるやつですけれども、これでその実力の一端を推し量っていただければ幸いです。
で、和田さんギター弾き語りでもこのように全然できちゃうんだけど、ここに布川さんが絡むと、さらにいいバンドサウンドになる。
付かず離れずのいい距離感である時は完璧なバッキング、ある時にはソリストとして切り込み隊長。

アルバムそのものは、見た目軽い作りですが、いいですよ、これ。オススメ。
ジャズに限らず、Pops, R&Bの曲とかも入っているので、万人にオススメできます。

ぜひライブにも足運んでみてください。

『ホットケーキの神様たちに学ぶ』

割と力技度 80点
石窯ホットケーキ食べてみたい!度 100点

一冊通じて振り返ると、結構面白い本だった。
都内を中心に、ホットケーキをウリにしている店を総花的に取り上げ、後半30%くらいでは、とってつけたように(失礼)マーケティングの参考として総括している。

結果的には「HANAKO」的にホットケーキのお店の案内として利用することもできるし、マーケティングの業界事例研究としても役に立つ。
ま、後半については、別にビジネスモデルのバリエーションがあるわけでもないし、まあまあ苦しいかな。
それでも丁寧に店ごとの戦略性とか工夫などをまとめていたりもするので、前半を読んでから後半を読むと、マーケティングの人のものの見方の、まあお手本になるのではないかと思う。
逆に、マーケティング業界の人にとっては、後半の総括部分は、まあ平均的な総括ではないかと思う。
もしこのパートを読んで「目から鱗!」と思えるようでは先が思いやられる。

でも、ありふれた結論だけれども、これだけのフィールドワークから生み出された結論は、やっぱり重い。
ありふれた結論を腹の底から理解してきちんと動けたら、ビジネスは成功するのだから。

「どこにでもある定番がめちゃめちゃ美味しかったら、必ず売れます」

 文中にもでてきたこの言葉が、すべてを物語っていると言えよう。

神様のバレー

オススメ度 90点
進学校の男子校というところで共感度 90点

神様のバレー 1巻 (芳文社コミックス)

神様のバレー 1巻 (芳文社コミックス)

なんかTwitterとかで漫画読みアプリみたいなやつで宣伝されていたので読んでみた。
面白かった。

阿月総一は実業団バレーボールチーム<日村化成ガンマンズ>のアナリスト。とあることを条件に、全日本男子バレーボール監督の座を約束される。それは、万年地区予選1回戦敗退の私立中学校男子バレー部に全国制覇させることだった!

割と性格の歪んだアナリストが主人公。舞台は進学校の中学校の弱小バレー部。
相手の嫌なところを突いていくというスタイルと頭脳プレーが進学校の学力と問題解決能力はあるけど素直な男子たちにハマる。
万年一回戦負けから快進撃は、ドラマとしては出来過ぎだが、まあそれはしゃあないだろう。ドラマだし。

70年代から90年代までスポ根漫画は、才能=(それは、まあ言ってみれば、血筋ということになる)。そして、努力だった。
フィジカルの才能を重視したストーリーテリングが目立ったように思う。それの才能のバックグラウンドになるのは、大抵は血筋(お父さんの非業の引退劇の業を背負っているとか。巨人の星やね)
キャプテン翼とかは血筋による能力と努力。スラムダンクは、もともとの能力と努力。

ただ、そういうストーリーは現実の一側面ではありながら、すべてではない。
ゼロ年代になってから、頭脳プレーや戦略性を強調するスポーツ漫画が増えてきたように思う。
Jリーグでの弱小チームが徐々に強豪を倒していく漫画"Giant Killing"

コージィ城倉のひ弱な部員がキャプテンを任されリーダーシップに目覚めていく野球漫画 "おれはキャプテン"優等生がテニスと出会い、解析能力を駆使して成長してゆく "ベイビーステップ"などかなあ。

この手の主人公はどちらかというと類まれなフィジカルでライバルを凌駕するというよりは、競技そのものの本質と戦略性に気づき、相手の強みと弱みを分析し、ゲームメイクをしてゆく。
こういう選手は、昔であれば、ライバルとかによくあるありようだった。
気がつくとこういう属性の人たちが主人公になっていたのは最近の漫画の面白いところだと思う。

データや戦略性を重視しているようになった現実のスポーツ界を反映しているのか、それとも漫画を読む子供達に刺さりやすい設定だからか。

絵はとても丁寧で読みやすい。
キャラクターの描き分けもきっちり。
バレーのことは僕はよくわかりませんが、まあ荒唐無稽な話はありません。
ただ展開が早いからしょうがないのかもしれないけど「武器」になりうるテクニックが二週間くらいで身につくのは、ちょっとどうかなあと思った。
例えば、僕ら音楽でも、一つの語法を覚えるのに、数ヶ月とか、下手したら一年くらいかかったりもする。
身につけやすいものをピックアップしているとしても1ヶ月はかかるんじゃないかとは思った。シナプスに定着するまでには。

時給思考

オススメ度 80点
自己啓発アオラレ度 80点

時給ベースで業務を考える、というのは、最近の経営手法としては「はやり」でもある。
残業とか、そういうのも含めて生産性を定量化したり、働き方改革の「同一労働同一賃金」の考えを延長すれば、部門ごとに、人件費をとりまとめ、収益と比較すると、部門別の生産性がまるわかりになるからだ。

その辺は、最近のメインのBlogでも取り上げてはみた。
hanjukudoctor.hatenablog.com


ただ、この本は、そういう組織レベルの話ではなくて、個人向けの話。
個人のキャリアプランとかそういう観点でも、時給をベースに考えたらどうか?というお話。

タイムイズマネーではなく、タイムイズライフ 時間がすべて

とか、容赦ない煽りを入れてくるこの本。自己啓発度としてはかなりに酒精度が高いとは思う。


確かに、自分の価値を「これくらいの給料もらっているから自分はこれくらいの価値だ」と考えたら、絶対に起業などできない。
多分、この本の提唱する時給ベースで思考する方法のよいところは、自分がどれくらい稼げるかを良くも悪くも露わにし、現実を直視できることだと思う。

最低限必要な時間、達成のための時間、楽しむ時間、無駄な時間の4つのうち、無駄な時間を削るだけでも、随分効率化はできるとは思うね。という話。

で、時給思考で考えると、
・通勤時間は無駄ですよ。
・残業も無駄ですよ。
となる。残業による給与の増分よりも、ダブルワークの方がいいんじゃないかと。

・仕事の質ではなく、仕事の種類で時給は決まる。
・時給が高い人は、ビジネスオーナーか投資家。つまり他人に働いてもらったり、自分のやっていることを他人に教える人。
・1.5流のスキルを二つ身につけましょう(一つのスキルを一流まで持っていくのは時間効率が悪いから)
・10のやることがあったら、本当に重要な2個のことしかやらない。
・目標は、2倍ではなく10倍を目指す。
・給与でもらっているうちは自分がやった分のお金はもらえない
・年収300万円の人は月給思考、年収1000万の人は年収思考、一億の人は時給思考。
・できない人ほどオリジナリティに固執する(時給思考の人はカンニングの天才)

 本のすべてを出してもいけないので、これくらいにしておく。
 うん。まあ、わかる。僕もこの手の本読みまくっているから、内容としては妥当だし、そうだと思うよな。
 少なくとも、給与生活者の人はこういうのは読んでおくと、全く異質なコンセプトに気圧されるかもしれないけど、確かに真実は突いてるよね。

ただし、この考えを身につけた人が必ず成功できるわけでもないし、こういう効率性の話は、
ミヒャエル・エンデが『モモ』で喝破した世界そのものだ。

モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))

そう、時間泥棒ね。

『美食探偵 明智五郎』

東村アキコはでる漫画でる漫画、わりと読んでしまう。この前はハイパーミディを読んだ。
halfboileddoc.hatenablog.com
これは別マで連載中の「美食探偵」という漫画。

美食かー、と思ったのが第一印象。
正直、今はマーケットにグルメ漫画が飽和している。

グルメ漫画の多くは、ストーリー運びが遅い。
このBlogでは取り上げていなかったが『メシバナ探偵たちばな』も、いわゆる刑事ものにグルメ(しかもB級グルメ)を組み合わせた快作で、作風も安定。
金太郎飴的なストーリーの動かない世界観で、色々な食材に関する話が、延々と続く(逆にいうと続けられる)構成になっている。
逆に言うと、終わらずになんぼでも続けられるようになっている。
この手の漫画の金字塔といえば『美味しんぼ』なんだろうな、やっぱり。
ストーリーは動かないか、ゆっくりとしか進まない。
一旦パターンを決めちゃうと、あまり考えずに漫画を描けて、しかも部数も安定するこういう「安定物件」は、多分漫画家のポートフォリオとしては必要なんだとは思う。

この漫画はそうではなく、良い意味で予想を裏切られた。
ルパンと銭形警部みたいな感じで、主人公である、美食探偵(というか、食に重きを置いているというよりは、良家の子弟が探偵をやっている設定が重要だったのではないかと思う)と、それに対抗する黒幕的なファムファタルとの対決漫画。
推理・探偵小説の漫画ではなく、ノワール系といえばそうなのかもしれない。

主人公の明智五郎も、ファムファタル的な敵役も、やや芝居が大仰ではあるが、キャラも立っていて面白い。
展開もスピーディーである。
十年一日の安定物件としてのグルメ漫画ではなく、多分6〜7巻くらいで完結するような起承転結。(今は5巻まででている)
はなから、ジュブナイル向けマーケットのテレビドラマに取り上げられるのを狙っているような作品だ。

そういう意味でも東村アキコは本当にうまいなあ。
同時に何作もストーリー漫画を並行して走らせるのって、すごい大変なんだと思うけど。

美食探偵 (角川文庫)

美食探偵 (角川文庫)

ちなみにこちらは全然別の話で、「美食探偵」繋がりで読んだ。
主人公は明治の話で、割とオーソドックスな推理小説もの。
美食なのはやはり明治期なので良家の子弟。
 悪くないのだが、書いている人が現代なので、正直にいうと明治の時代感はあまりでていないと思う。

『封印されたアダルトビデオ』

オススメ度 60点
「ふーん」度 60点

封印されたアダルトビデオ

封印されたアダルトビデオ

一度は店頭に並んだけれども回収されることになった倫理的問題作アダルトビデオの列伝。
なんでおれこの本読んでんだろう。

AVは、かつて、サブカルチャー中のサブカルチャーだった。*1
勢いがある頃は、放送コードギリギリのところを攻めた快作が中にはあった。
ビデ倫」に通らなかった問題作を紹介する本。

度を越したSMプレイ(フィリピンのイースター(復活祭)で磔の儀式に出演、手のひらを釘で打ち付けられる祭りに偽装して参加。あとですっごく怒られる。)
自衛隊員を使ったAV(自衛隊員が男優として出演。当然許可はおりず…)
横浜の中華街で祭りの雑踏の中で露出AV(めっちゃ怒られる)。
年齢制限。(18歳以下はあかんのは当然のことだが、細かいルールとして、18歳以上でも高校に在籍していたらNGらしい。校則とかあるしね。法律ではなく、業界団体自主規制らしい。また20歳未満だったら親の了承がないと契約ができないそうだ。ま、こんな知識、多分今後も日の目を見ることはないが)
死んだAV女優の墓に対してSM行為。障害者出演ビデオ。
ナンパAVでタクシー内でカーセックスして、あとでタクシー会社からクレーム入り回収。運転手はクビ。
盗撮。
ペニスの皮を切り取ったやつを食わせるカニバリズムAV(こういうのはやっぱり V&Rプランニング)
アイドルマスターのパロディ『アダルトマスター』でファンからクレームが入る。
ジュニアアイドルのビデオ。監禁事件を再現した実録エロシネマ。
女犯シリーズ。これは V&Rプランニング
バッキー・ビジュアル・プランニングの、ハードレイプものAV。

ま、内容は上述した通り。
今のアダルト業界がどうなっているのかは知らないが、自分の青春時代に慣れ親しんだサブカルの一端を覗いたような本であった。
でも、なんで俺この本読んでいるんだろう。

セックス障害者たち (幻冬舎アウトロー文庫)

セックス障害者たち (幻冬舎アウトロー文庫)

これは数年前にリアル書籍で買った。
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これ、股間の三角のところは穴があいてて下地が見えているやたら凝った装丁。奥付をみるとやっぱり祖父江慎だった。
禍々しいオーラを放つ本だった。
著者はV&Rプランニングの名物監督バクシーシ山下
V&R プランニングのAVはキワモノ、問題作が多いことで有名。
この本はバクシーシ山下が、V&Rプランニングで制作したAVを一つ一つ淡々と振り返る本。
撮影の状況とか、男優とか女優のことを語る。
結構「いやこいつら本当にどうしようもないやつで…」みたいな語りばかり。
バクシーシ山下は、被写体に対して突き放した視点と感情で撮っていたことがよくわかる本。
同じ人間に相対しているとは思えないような視点。
こわー。人間こわー。サイコパスやと思う。

で、男優たちの話なんですけど、この北崎は当時、大手商社U洋行の社員で、若くしてすでに窓際というか総務だったんです。仕事できないらしくて。
(中略)
で、この北崎をなんで使ったかというと、信用できないヤツだったからなんです。
「山下さんは、ご活躍でいらっしゃいますね。よくエロ本誌上で拝見いたしております。このたびも、私のようなものに出演の声をかけていただいて……」
ニヤニヤしながら、延々この調子なんですよ。日常会話に慇懃無礼がにじみ出てる。
基本的に、僕は自分が嫌だと思うヤツを出演させるんです。自分の感情だけが物差しなんだけれど、そういうヤツは、たいてい女の子だって嫌なわけじゃないですか。

レイプもので、女の子に本気で嫌悪感を演技させないといけないとはいえ…。
男女の性行為を撮るというよりは、お金のために人前でセックスをするというAVの不条理を露わにするためにAVを撮っている。
メタ視点なんだろうか。
なんか昆虫学者が昆虫の交尾を眺めているような、感情移入できないセックスを撮るよね。
* * *

というわけで、『封印されたアダルトビデオ』は、軽いサブカル覗き見趣味の人にはオススメ。
『セックス障害者たち』は、ある種のホラーとして読めばいい。こわー。

halfboileddoc.hatenablog.com
あ、昔にも記事書いてましたね。よっぽど衝撃だったんだ。

*1:その辺のところはNetflixの『全裸監督』とかで最近脚光を浴びているわけだ

『繁栄と衰退と』

オススメ度 100点
今となっては日本の状況ではない…度 80点

繁栄と衰退と

繁栄と衰退と

オランダの繁栄と衰退を丹念に取り上げた本。

オランダ。

新大陸の発見から、大航海時代の序盤に、スペインとポルトガルが活躍していたのは皆知ってますよね。
新大陸で金銀財宝を見つけ、大規模なプランテーションを運営し、スペインとポルトガルは世界の覇者となった。

歴史でいうと、その次は大英帝国ですよね。
イギリスの隆盛がある。
だけど、実はスペインと英国、の間に オランダが海運国家として隆盛していたという歴史があるけれども、
そのことは今歴史ではあまり顧みられることはない。

実際スペインの無敵艦隊を破ったのはエリザベス女王率いるイギリス海軍なわけだけれども、そもそもスペインの無敵艦隊は、イギリスおよび、オランダ(これはスペイン国王の保護下にあったのだが、独立戦争をしていた)と戦っており、スペインは無敵艦隊以外にも、陸軍も強く「無敵師団」とでもいわれる精強な部隊を擁し各地に派遣しては連戦連勝、という状況だった。

スペインとイギリスの海上の戦いと同時に、オランダの凄惨極める独立戦争にオランダは勝利し、その後、オランダの商船隊が勇躍。
世界を席巻し、オランダが世界の富の中心となる時代が30-40年くらいあった。

しかし、オランダの経済覇権はイギリスの嫉視の的になり、英蘭戦争が生じる。
オランダは戦争に終始消極的であるが、完膚無きまでに負けてしまう。
世界の覇権はイギリスに移る。

ではなぜオランダは経済覇権を失ってしまったのか?

歴史を振り返ってみると、ぞっとするほど経済発展していた日本との共通点があった。
この本はバブル絶頂期に「歴史に学べよ」という意味でオランダの中世〜近代史を振り返った本。

* * *

オランダの凋落として、
・経済発展を第一とし、軍備の拡張について消極的だった。
地方分権的な構造で内紛が常にあり、国と国との間での全面戦争でも、意思統一に時間がかかり一枚板になれなかった。
地政学的に見て、オランダは英国に敵対するデメリット大きい(制海権を抑えられてしまう)
・一国の衰退は他国の繁栄につながるという冷厳なる事実

などがあるようだ。

この辺りの歴史の経緯、公海の自由や経済水域、漁業権、国際収支不均衡、保護主義などの、今では抽象化された政治用語の淵源となっている。
ようするに、漁業権とか公海・領海とかの概念は、この頃にあった生々しい小競り合いの果てに生み出されたわけだ。

* * *

そういう経済強国、軍事軽視の国家オランダの失敗を踏まえて、日本はどうか。

バブルの時、「Noと言える日本」が、流行った。

沈黙の艦隊

沈黙の艦隊

歴史に学ぶという点では、過剰に経済発展を遂げていたあの頃の日本は、非常に危うい状態であったと思う。

あの頃、このままだったら、他国(はっきり言えば、アメリカ)にボコボコにされてしまうぞ、という警告がしきりに出された。
冷戦終わったあとの米国の仮想敵国は日本、という時代は確かにあった。

その頃よく引き合いに出されていたのは、ローマとカルタゴ
それからこのオランダと英国の歴史。ということになる。

現実にはどうか?
日本はアメリカとは戦わなかった。ほどよくお金を巻き上げられはしたけれど、金融・ITの中心はアメリカであり続け、日本は冷戦後の世界に対応できず、オウンゴールのように自らの価値を毀損していったので、世界の盟主アメリカの不興を買うほどではなかった。
負けるが勝ち、という言葉もある。

我々はバブル崩壊から失われた10年とか20年とか30年とかいって、長い下り坂を降りている。
間抜けで、お金も随分スってしまったし、先行きも不安だ。
多分先進国らしさや平等で民主的な国ではなくなるような薄ら寒さはあるけど、
まあ、戦争にならなかったのは、それなりによかったんじゃないかとは思う。

だから、今の僕たちは、バブルの頃の日本ではない。
英蘭戦争のオランダは、もう参考にならない。
沈黙の艦隊』を今観ても、共感はできない。

だから、むしろ前半のオランダの独立戦争の時の、宗主国スペインの容赦ない収奪の方が目を引いたね。
スペインの弾圧は、かなり過酷だったようだ。
スペインから代官として派遣された人たちは、裕福なオランダ商人を、「異教徒」ということで、捕まえまくり、異端審問で拷問しまくり殺しまくり、財産没収しまくり。

「オランダに住んでいるプロテスタントは、全員死刑!」とかそんなおふれだすんだよ。
そりゃ独立戦争するわなあ。

ある家族が審問を受けた。子供に「お父さんはお家でどんな風なの?」

よくできた息子だね。
「私は神に我々を教え導くように、そしてわれわれの罪を許すように祈りました。そして王のためにますますの繁栄と平和を祈り、市の偉い方々についても神がお護りになるように祈りました」と答えた。

はいアウトー!!
スペインはローマカソリックなわけだが、教会に礼拝し、神に祈りをささげる。
カソリックでは神父やローマカソリック教会に従うことが、敬虔な信徒として何よりも重んじられる。
プロテスタントは「教会」に忠誠を誓うのではなく、神の教義を重んじ、自宅に聖書を持ち、聖書の原典の上に立って信仰生活を送る。
ローマ・カソリック教会の説教に出席せず。
自宅で聖書を読んで礼拝していれば、それはもう異端。
したがって、自宅でお祈りをしている時点で、異端。

父と少年はただちに火刑に処せられた。
少年が「天なる父よ、われわれの犠牲を受け給え」と祈ると、僧侶は薪に火をつけながら「お前の父は神ではない。悪魔だ」と叫んだ。
火が回ってくると少年は「お父さん、天国への道が開いて、天使たちがわれわれを讃えているのが見える」と言った。
それに対して僧は「それは嘘だ。地獄が口をあけて永劫の火がお前を焼くのだ」と叫び続けたという。
そして8日後には母親も他の子供も焚殺された。

1980年代には、バブルで金満国家となった日本に警鐘を鳴らす意味で書かれたこの本だけど、まさか本のフォーカスとなりうる英蘭戦争のところではなくて、オランダ独立戦争のところでお腹いっぱいだったよ。

モンティ・パイソンにもでてきた、「スペインの宗教裁判」が、ブラックジョークとして面白いのは、そういう意味があったんだねー。

スペインの異端宗教裁判(その2)モンティ・パイソン