半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『キャスターという仕事』

オススメ度 100点

キャスターという仕事 (岩波新書)

キャスターという仕事 (岩波新書)

あるいはこう言い換えてもいいだろう。
クローズアップ現代とわたし』。

NHKの看板とでもいうべきドキュメント番組である『クローズアップ現代』のキャスターを務めて20数年。
2016年に交代したが、クロ現といえばこの人。

この方はクローズアップ現代で現役の時は、ほぼクロ現のみに注力していて、他の活動に目立ったものはない。
そういうわけで、クロ現といえばこの人(国谷さん)、この人といえばクロ現。

クローズアアップ現代は、どちらかというとキャスターのキャラクター性は薄く、政治性としては無色、という印象だった。
この人の本を読めば、イデオロギーありきではなく、「本音を引き出すこと」「隠れている真実を伝えられないか」ということには腐心しているけれども、特定の主義信条に基づいたインタビューではないわけだ。

我々は「癖の強い」ものに目が止まり注目する傾向にある。
先輩が言っていた。
「お酒でもな、甘口なやつーとか、辛味がスッキリしているものとかが目に止まるけど、それはキャラが立っているだけ。ほんとは甘くも辛くもないところに上手い酒が隠れてんねん。なんとも表現しにくいところのやつが美味い」

クロ現もそういう番組で、中道なおかつ入って行きやすい番組なのだがさりげなく練り上げられた質の高い番組だと思う。
この本で国谷さんは自分の仕事に対しても総括しているが、帰国子女で日本語を話すことが苦手だった時代、NHKのアナウンサーに抜擢されたけど結果が出せず降板した時代。通訳の学校などに通い自信を取り戻し、著名人にインタビューを行っている仕事を任されるようになったあと、クローズアップ現代の立ち上げに関わるようになった話。
淡々とした語り口ながら、この方なりの苦労や挫折、成長をきちんとステップを踏んでクローズアップ現代のアンカーとして登場した歴史があるのだなあと感じ入った。

Allbirdsとニットスニーカーもろもろ

オススメ度 100点

なんかで紹介されていたので買ってみた。
オーストラリアの会社からお取り寄せ。
All birdsは、セレブに大人気な、カジュアルでオーガニックなスニーカーらしい。
確認していないけど。

うん、これは確かになかなかいいね。
とにかく軽い。
靴下で歩き回っているような軽快さがある。
編み込んだ生地もウールだから、肌触りもいい。
なんなら裸足で履きたいくらいだが、流石にそれはすんげー臭くなりそうだ。
箱も可愛かった。


ここ数年は、アッパーが編み込みスニーカーを好んで履いている。
まあ、流行りですし。
new balanceの、何番だったかな?に始まり、いま、3、4足試してる。

ニットスニーカーのいいところは、

  • あまりフィッティングが厳密でなくても、軽いこと、一定の履き心地が得られること
  • 締め付け感がほとんどないことなど
  • ニット生地がデザインの前面に出るので、シンプルなものが多い

こともあり、一旦これに慣れると後戻りできない利点がある。

しかし欠点は結構ある。

  • なんか物を落とすと超絶痛いこと。踏まれても超痛い。その意味では電車通勤には向かない気がする
  • 濡れたり、汚れたりしたものが取れないこと(例えば病棟で、分泌物が落ちてくるようなシチュエーションの場合は、あんまり履きたくない)
  • 雨の日は辛い。冬の雨の日だったら、塹壕凍傷になってしまうかもしれない
  • 足の爪の手入れを怠っていると、すぐ穴が開いてしまう。実際new balanceのやつは、それでダメにしてしまった。

『アド・アストラ』

オススメ度 90点
細く長く度 90点

ちょっと前に買っていた本。
Amazon Kindleを見返すと 1巻は2014年、13巻は2018年に購入している。

13巻と手頃な長さで、ハンニバルスキピオの一生を割とシンプルに追いかける。
この手の作品といえば、塩野七生の『ローマ人の物語ハンニバル戦記がもっともわかりやすいわけだが、やはり漫画というのはさらにわかりやすい。漫画は絵と文字なので、地図や、戦場図のようなものも、ストーリー部分と破綻なく図示しやすい。

ハンニバル戦記──ローマ人の物語[電子版]II

ハンニバル戦記──ローマ人の物語[電子版]II

  • 作者:塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: Kindle


しかし、途中のシラクサ戦において、『ヘウレーカ』にでてきたスパルタ人のダミッポスというモチーフが出てきたのには驚いた。
井上雅彦バガボンド』におつうがでてきた時くらい驚いたね。

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)


なかなか当時の人間の考え方を描写するのはむずかしい。
ハンニバルに関しては、敵対していた側の記録しか残っていないし、感情面を露わにするようなタイプではなかったようで、謎めいた描写に終始している。反対にスキピオは主人公でもあり、現代的な開明的な感じに描かれている。
当時のローマ人が現代人のようなポストモダンの人格ではないだろうから違和感はあるが、主人公感・共感をだすために、カスタマーである我々に寄せてきているのだろうと思う。

改めてザーッと読み返してみると、もともとの史学からの逸脱も少ないし、この時代のことを俯瞰したい時に格好の一作だと思う。
「教育」のカテゴリーでもいけるかも。
細く長く売れてほしい作品だと思う。

『最高の結果を出すKPIマネジメント』中尾隆一郎

オススメ度 80点
KPIのことを一から知りたい時には役立つ度 80点

最高の結果を出すKPIマネジメント

最高の結果を出すKPIマネジメント

実は3年前、自分の経営する病院で、部門ごとにKPIを作らせる、ということをしたことがあった。
部門それぞれに課題を自分たちで考えてもらって、診療の質向上のため達成目標を作ってもらったのだ。

みんなそれなりに作ってきたのは驚いた。
部署が掲げた目標で、達成できそうもない「絵に描いた餅」的な数字は、達成できそうなもう少しリアルな数字に直したりしたのもある。
結果的には、まあまあうまくいったと思う。

しかし、これはうちの職員たちがビジネスマインド溢れる状態であったわけではない。
基調として仕事熱心で患者思い職員が揃っているから。
今となっては、どうやって診療マインドをKPIに落とし込んでもらったのか、あまり覚えていないけれど、経営者としての初期成功体験だったと思っている。

今KPIの話をもう一度読み直してみた。
当時の自分はKGIとKPIの違いもあまりはっきりと峻別していなかったのかな?結構読んで「発見!」と思うことが多かった。
あんまり厳密に理論化できていなかったのに、なんとなく踏み出した感じだった。

KGI=Key Goal Indicatorは売上や収益
KPI=Key Performance Indicatorは事業成功の鍵、質的な向上を目指すための数値目標。
CSF=Critical Success Factor (最重要プロセス)

KPIはCSFの目標数値として提唱すべき。要素分解するとそんな感じ。

しかし当時の自分のDirectionを振り返るとKGIを持ってきた部署にはきちんとKPIっぽい目標を提案もしているんだよな…
ガッチガチのフレームワークに落とし込んでいたわけではなく、あくまで現場の業務ありき、がよかったのかもしれない。

当時僕はあまりKPIマネジメントシステムはわかっていなかったけど、
KPIは掛け声だけで、結果的にはちょうどいい程度の
目標管理になっていたみたいだ。
ビギナーズラックなのか、それとも、理論よりも現場勘だったからか。

今回KPIマネジメントを読み直して。
KGI×KPIで、質x量の掛け算をするのが、医療機関では正解と考えてもよさそうだ。

・KPIは景気動向などではなく自社の努力で変化できる変数を選ぶ
・即時的に見れる数字を選ぶ(数値化できない目標には意味がない)
・複数のKPIを同時にみることは不可能
・変数と定数をわける。
・KPIが目標に達しない場合の対応策を、可能なら事前に決めておく。

『「仕事が速い」から早く帰れるのではない。「早く帰る」から仕事が速くなるのだ』『会社では教えてもらえない残業ゼロの人の段取りの基本』

オススメ度 70点
タイトルなっが!度 100点

「仕事が速い」から早く帰れるのではない。「早く帰る」から仕事が速くなるのだ。

「仕事が速い」から早く帰れるのではない。「早く帰る」から仕事が速くなるのだ。

  • 作者:千田琢哉
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2017/09/19
  • メディア: 単行本
会社では教えてもらえない 残業ゼロの人の段取りのキホン

会社では教えてもらえない 残業ゼロの人の段取りのキホン

どちらも「効率よく働きましょう」という、昨今の働き方改革にめっちゃ役立つ本といえましょうか。

まず、タイトル長い方。
もうタイトルで言い切っちゃっているとは思うけど。
自分にも思い当たるフシがある。どうしてもケツが決まっている日には仕事をスピードアップさせざるを得ないので、できるだけ効率よく動く。効率よく動けば、確かに、同じパフォーマンスを得られるけど、カルテ記載がやはり効率重視になるので、そっけなくなってしまう。
(これをよいととるか悪いととるかは結構難しい。ミヒャエル・エンデ『モモ』の愛読者としては)
・優先順位のベスト3をビジュアル化する
・普段からまめに掃除しておく(とっさに整理されていると取り出しやすい)
・なあなあの人間関係を断ち切る。
・決定権をもつ者の思考回路がすべて
・決断力のベースは熟睡と栄養。普段から好きなことを選ぶ訓練をする。
・一番むずかしいのは「断ること」だが、爽やかに断ることで道は拓ける。
などのTIPS満載。ビジネス書によくある金言も多い。
どちらかというと、時短術というよりは、ビシバシと即断即決できるための方法論という印象だった。

もう一つの本。
こっちもさりげなくタイトル長い(短い方だけど)
これも仕事を効率よくすすめるためのノウハウ。
どちらかというと社会人経験浅い人用だろうか。

・与えられた仕事の「真意」を先読みしよう、
・優先度を把握しよう。
・納期をまもるためにはそれぞれのステップの所要時間を決めよう。
・時給換算して生産性を知ろう。
・目標達成に必要ない部分を削ろう。
・70点の完成度で手放そう。など、
これも、ビジネス書あるあるの内容が多かった。
これは、とりあえず一年目の人間が読むと、それなりに役にたつんじゃないかと思う。

ただ、仕事において融通効かない人間は、こういう本絶対よまないよね。
その場に来ている人間に(本当はその場にいない遅刻している人間にいわなきゃいけないのに)「遅刻はいかん」なんて説教している感はある。

『中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル』

オススメ度 70点
自分が差し迫っている事柄だったらもっと点数上がった度 100点

中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル

中小企業の「ストックビジネス」参入バイブル

 

ストックビジネスへ移行していかなきゃいかんよ、という話。

めっちゃわかりやすい話でいえば、海で魚取るときも、生態系のことを無視してどんどんとっていてはいかんよ。
とりつくさないよう、全体のことをみて、破綻しないようにとりましょうね、みたいなのあるじゃないですか。

ストックビジネスモデルも同じ。
物を売って終わり、のビジネスモデルは不安定。
一定の収入が得られるような「仕組み」を作る。そうするとビジネスモデルとして安定する。

  • ストックビジネスは継続的な売り上げが期待できる。
  • IT企業のサブスクリプションモデルも、一種のストックモデル。
  • 社内リソースを活用して、自社企業の「ストック化」や新規事業の「立ち上げ」を行う方法。
  • ストックビジネスは農耕型といってもいい。逆に、既存のフロー型モデルは、単年度の売り上げを急拡大させやすい。
  • アマゾン、マイクロソフト、アドビもストックビジネスに舵を切った。
  • プラットフォーム型は高いシェアをとれると独占化できるので収益性が高い。

FC型の水平展開とか、レバレッジドバイアウトとか、ビジネス展開のスキームもいろいろ紹介されていたが、そこは、一人一人患者さんに相対することでしか売上を積み重ねられない医療は、ちょっと蚊帳の外かなあ、とは思った。医療の末端にはレバレッジは効かない。

  • ストック型ビジネスでは顧客ごとの購入単価×購入頻度×継続期間=LTV(Lifetime Value)の最大化するようにデザインする必要がある。
  • 業績はROIC(投下資本利益率)で管理し、事業の収益性をきちんと管理する。
  • ニッチ独占型、自社周辺事業による多角化
  • 他者が容易に競合できないようなビジネス上の参入障壁を選ぶ

いろいろ勉強になったが、私は中小病院経営者なので、事業展開やFC化などについては、あまり参考にはならなかった。

ただ、ビジネスモデルとして「かかりつけ医」スタイルこそがストックビジネス型の最たるもの。
基幹病院がとりうる「紹介・逆紹介」型は、フロー型ビジネスモデルであると言える*1

このことは知識として知っていたが、診療所の開業医が経営上安定して有利である理由の一端がより深く理解できた。
実は80床足らずの中小病院の我が身としては、外来診療を、専門特化した紹介・逆紹介型に舵を切るか、それとも地域密着のかかりつけをどれだけ残すかで悩んでいる。ずっと悩んでいる。
だが、やはり安定した収益源であるかかりつけ機能を細らせるわけにはいかないな……と考え直した。

*1:もちろん、顧客を紹介元の開業医と考えれば、ストックモデルと考えることもできる

『たとえる技術』

オススメ度 70点
往年の感はある度 70点

たとえる技術 (新潮文庫)

たとえる技術 (新潮文庫)

  • 作者:せきしろ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/09/28
  • メディア: 文庫

気がつくと一世代経っているんだなあ。僕がまだ若い頃、SPA!の「バカはサイレンで泣く」などで名を馳せたせきしろ氏の作品。

halfboileddoc.hatenablog.com

8年前に「去年 ルノアールで」を読んだことがある。
寸鉄家とでもいいましょうか。一言の鋭さに定評のあるせきしろ氏が、「たとえ方」を指南している本。
とはいえ、ビジネス本のように、論理的に方法論を示しているわけではなく、あくまでそのやり方は点描的でしかない。
その意味では、たとえ方の指南としては、野村克也の野球論というよりは長嶋さんっぽいコーチングだ。

Aに似たBという基本的な例え方だけではなく、似た動きのもの(動詞からのアプローチ)、似た色のもの、言葉を連想させる方法。
事実→史実→昔話→神話、アイドル→女性→人間→動物→生物→地球と、対象の属性をどんどん抽象化させてゆき、連想する(これは大喜利などでも有効だ)、自分の得意分野を利用する、学校など共通認識の多いものは使いやすい。

そんな感じで、技術論そのものは、堅牢な論理性があるわけではない。
また、言語学的なアプローチではないので、暗喩と直喩の違いとか、それ以外の換喩・提喩などを示すわけでもない。
まあ、だからこそ、実践的である、とは言えるのだが。

ま、やり方=How to というのを楽しむというよりは、そうやって分類されたせきしろ氏の作品を楽しむのも目的のような感じはある。

* * *

実は私は「例え話」というのがかなり好きだ。
外来とか入院患者さんに対して病気の説明をする時とかに、例えばなしの不正確さはしりつつ、イメージの伝わりやすさから、その人のバックグラウンドを類推しつつ、例えばなしを出してゆく。
僕のやり方の場合は、形容詞的な使い方ではなくて、説明すべき構造が共通なものを探してくるという作業になる。

例えば、「敗血症」という状態を説明する場合、「本来は秩序だって鎮圧されていた状態が弱体化し、望ましくない外敵勢力の侵入をついに阻みきなくなった状態。無秩序な状態に陥り、外敵の跳梁跋扈を許している状態」と読み換えると、

ローマ帝国の末期
・昭和20年敗戦直前の制空権・制海権を奪われた大日本帝国
・治安の悪い国(多くは発展途上国
スクールウォーズ、もしくは学級崩壊
北斗の拳
・マッドマックス

 みたいな例が浮かぶ。
 まあそれを、説明する人の年齢や性別・バックグラウンドの知識に沿ってチョイスしている。

構造の単純化されたモチーフが僕の記憶の中にたくさん構造化モチーフとともにストックされている。
それを探し出してくる、という作業を無意識のうちにしているんだと思う。

おそらくこれは、ジャズのコード進行の複雑化の技法などにちょっと近い。
フレーズを記憶する際に、バックグラウンドのコードを一緒に紐づけておくと、取り出しやすいのだ。