半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『家事か地獄か』

よくわからないアフロ女子 稲垣さんの本。

50歳で仕事をやめることになり、安いアパートで暮らす羽目になった独身女子。
ひょんなことからミニマリストにならざるを得なくなった女性が、しかし自分らしい生き方を見つけ、幸福な生き方を見つけるまで。
の本。

まあ、「こんまりメソッド」とか「ミニマリスト」という生活の典型的な話ではあるわけだが、これがバブル真っ只中を生き抜いた独身女性という、物欲の業の囚われまくっていた人からの転向というところが、インパクトがあるのだろうと思う。
おまけにこの人、おそらく俯瞰して物を書いたりすることも可能なんだろうとは思うけれども、徹底的に生活者視点、当事者視点での描写がとてもうまい。僕も読んでて「そうだよなーそうだよなー」と思いながら読んだ。
説得力・浸淫性が高いのである。
 ミニマリストの淡々とした筆致ではなあく、文体はめちゃめちゃアツいのである。
 こりゃオルグされちゃう人も多いと思うなあ。

「自分の身の回りの世話は自分でやる者」こそが、人生の真の勝者となるのだ。

ミニマリスト×バブル世代
ミニマリスト×セルフコンパッション
ミニマリスト×終活
みたいな文脈でも、かなり支持されそうな一冊。

割とキラーワード・パワーワードがたくさん。
本あんまり読まない人も、非常に読みやすい本であることは保証する。

・家電を一つ手放すたびに、家事がラクになってゆく
・家事地獄の原因は私自身ではなく、私がつくりだした環境
・「複雑化」ではなく「簡素化」
・便利なものっていうのは「自分」を見えなくする
・誰もが愛する言葉「可能性」。それをあきらめた途端、全てが手に入ったという恐るべき事実!
・姫と使用人の一人二役を担ってでも、自分は本当に姫のような暮らしがしたかったのか
・火を通さないおかず、さっと火を通すおかず、じっくり火を通すおかず、にわけると簡単
・最終的に人を支えるのは「金でも名誉でもなく家事力」なんだ
・家事をしない人は、お金を稼ぐことはできても案外「使う」ことはできない
・もっとも大事なのは小遣いではなく生活費の使い方
・家事を人に丸投げしている人は、これほどの宝を自ら投げ捨てている
・料理が「大変なこと」になっちゃうのは、単にあなたが「大変な料理」を作ろうとしているから
認知症を恐ろしい病にしているのは、私たちの生き方そのものに原因があるんじゃないか?
・経済成長の果てに我らが手に入れた「便利な暮らし」は裏を返せば「孤独そのものの暮らし」
・我らはこの「長く不自由な老後」をどう生き抜くのかを真剣に考えなければならない時代を生きている。
・残すものの基準は「ときめくか」でも「使っているか」でもなく、「それがないと死ぬかどうか」みたいなことになった。
・なるほど私は人生を片付けることに成功したのである。そして人生が片づけば、部屋はもう片付いている。
・その人がおしゃれかどうかは、その人が持っている服の数とは何の関係もなかったらしい
・主婦にも調理定年、というものがあるべき

物欲というものはあまり意味をもたないということは私も、最近うすうすと気づきつつある。
しかしもう少し高所に立ってみると、日本の経済発展はこの清貧極まりない生活から背を向けて成し遂げられたわけでもあり、
なかなか、その辺の塩梅は難しいところだよなあ、とは思う。
でも、個人の生活と家事は切り離せないところは、アウトドアキャンプなどの経験からもそう思う。
我が家は私が専業稼ぎ人であり、専業主婦の妻が家事をしているが、こういうパターンの男子が、もっとも零落しやすいわけだ。
やはり家事を全くやらないのはよくないと思う。