半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『独居老人スタイル』

都築響一氏の作品はなんとなく結構読んでいるけど、一読した感想が豊潤すぎて、なかなかここに書けない。

この本は「Tokyo Style」からの流れといっていいんじゃないかと思う。

Tokyo Styleで花開いたフィールドワークの手法を、もう少し歳のいった人たちを対象にまとめなおしている感じ。

「自分らしい都市生活」も、人生の終盤にさしかかってくると、その自分の人生のありようの「曼荼羅」としての自室の光景もまた変わってくる。

人によっては、まとまりないゴミや家財道具に埋もれ帰ってしまったり、据えた匂いを放ってくるもんだ。ただ、都築氏自身が取材対象に対して共感的なので、冷笑的なレポートではない。都築氏はこの本に取り上げられた「とりわけ立派でもない人生」のあわいを丁寧に紹介するのが得意だ。
みんなの「いいところ」「幸せそうなところ」をきちんと掘り下げてくれている。

なんだかんだ言って、この本の老人たちは楽しそうに自分の人生を生きている。


しかし、こんまりメソッドで言っていた「その人の家は、その人の心象風景そのもの」というのを、目の当たりに見せつけられる一冊といえよう。
その意味では「怖い」本。パンドラの箱を、僕たちは覗くことができるだろうか?

結局のところ我々はだれしも老い続け、最後には死ぬ。
その最後らへんのさまは、やはり老残と言われるなんとも言えない感じになる。
『独居老人スタイル』をみて「うわっ」と思う感想をいだきつつも、自分の行く末を考えたら「そりゃそうだろうな」って思う。
私だって、パートナーが先に死んだら、この本に載せてももらえない不幸な生活に堕する可能性は十分ある。

気持ちよく老人ライフを営むのはなかなか難しそうだ。

参考:

halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com

halfboileddoc.hatenablog.com
これは、「生き物の死に様」の色々を紹介したもの。
halfboileddoc.hatenablog.com
これは、高齢になっての「生活苦」に焦点をあてた本。今回のエントリーとはちょっと違うが。