半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『生き物の死にざま』

おすすめ度 70点
そのまま度 100点

生き物の死にざま

生き物の死にざま

色々な生き物の一生、そしてその最期について書かれたエッセイ集のようなもの?
昭和の昔、『野生の王国』とかでしたかね?自然の厳しさを紹介するような番組とかは、最後は、その個体の老いと死でしめくくられるようなのが多かった。サバンナの動物とか。
そういう時に、なんとなく寂しい気持ちになったものだった。

この本はそういう寂しい気持ちになる寂しいシーンを集めたような感じ。*1
なんだろう、寂寞感を煮詰めたような読後感である。


ちなみに、一匹の蜜蜂は一生の間で、スプーン一杯くらいのはちみつを集めるらしい。
と書いて、そのあとに、
「しかしサラリーマンの生涯賃金も2億とかそこららしいから、札束を積み上げて自分の机の上に乗ってしまう程度。
我々人間も、蜜蜂のことを笑えない。」と容赦ない。

ちなみに、蜜蜂の働きバチは、逆年功序列制度らしい。
生まれたばかりの時は、巣の中の掃除とか幼虫の世話をしたり、ローヤルゼリーを作ったり、そういう仕事がキャリアの前半。
キャリアの後半は巣の外にでて、危険な「蜜集め」の業務に従事する。
人間の場合は、若く体力がある時に外周りをやって老いたら内勤。
けど、ハチの世界では、老いる前に、事故死するから、老いた個体を内勤に振り分ける、というやり方はとれない。だから年取ってから外回りするらしい。
いつか野垂れ死ぬことが制度に組み込まれているわけだ。厳しー。
ま、そしたら確かに、集団の若さは自然と保たれるのかもしれない。

多分、これから、団塊の世代の高齢化で、高齢者の希少価値はどんどん薄れ、高齢者がぞんざいに扱われると実感する世の中になる。
(考えてみると、団塊の世代は、若い時も、中年のときも、老人になっても、人口が多いせいでぞんざいに扱われてしまう…強くないと生きていけないよな)
でも、蜜蜂の世界よりましかもね。
まあ、肉体労働がなくなったら、中年・壮年が戦場に駆り出される世の中になるかもしれないけど。

あっさりとファンシーな装丁で、あっさりとした書き方ではあるが、それだけによく考えるとなかなかタフな世界だと思う。動物の世界は。

*1:ちなみにこういうネイチャーものだったら、死にまつわるシーンだけではなく、つがいになって交尾、出産、子育てみたいな章もある。が、この本は、そういうパートではない。