認知症関係の漫画。作者はヘルパーさんとかしていて、認知症の方と接している経験の豊富な方。
経験豊富なだけに、認知症の描き方も、かなりリアルに思われた。
(同じように認知症の人と接する自分としては)。
認知症の人の視点で、認知症の人の行動を描く漫画。
認知症の人の異常行動、例えば、徘徊・取り繕い・激昂・便の不始末みたいな、介護者からみた「困った言動」も、認知症の人本人の視点からみると、ある程度理解ができたりする。
家族の顔がわからなくなる、あれやろうと思って家を出るが、「何やるんだっけ?」と思う。
家もどこだっけ?と帰れなくなる。
認知症の人の徘徊って、その本人なりに理由があって起こるというのは知られているけど、その対応はそれはそれで難しかったりもする。
でも、認知症のケアというと、それはもう本当にうんざりするようなことがとても多くて、特に肉親を介護する場合は、つらくて、みじめで、恥ずかしくて情けなくて。
そういう感情のひだを、反対側の心情を丁寧に描くことで、わりと万人に認知症のありよう、を理解してもらう補助線としてはよいのではないかと思う。全員これ読んだらいいわ。
同時に、正直にいうと、認知症になることの怖さ、もたっぷり味わえる。
こちらは介護保険などの制度がまだない時代、まだ「認知症」という言葉もなく「痴呆症」の時代。
実母が、48歳で重度のアルツハイマーになった人の体験談。
こちらは、あくまで認知症本人の視点ではなく、その子供の視点で、認知症のありようが無残にも描かれる。
なんの制度もなく、周りの理解もない時代に、若い認知症の人をケアしなきゃいけない環境は、端的にいっても地獄のようだったに違いない。早発性アルツハイマーなんて、生活習慣関係ないし原因なんて今だによくわかっていないわけで。
結果的にはヤングケアラーのようにならざるもえないし、その後精神病院に入院し、亡くなるまでは一旦は介護から免れていたが、
そのことが本人の心に大きな傷を残してしまったことも含めて、誰が悪いわけでもないが、とにかくしんどい話。
本人はその時の深い傷を昇華すべく、介護畑にすすみ、ケアマネージャーとなって、認知症の方や家族へのサポートをしている、というのが、幾分救われた。が、これも、その時の壮絶な体験に囚われている、と言えなくもないわけで、いやはや大変な経験だと思う。