半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『はたらくすすむ』完結

オススメ度 80点

定年退職後、妻に先立たれ、茫然とした日々を送る長谷部進。一緒に暮らす娘・美織に煙たがられたことをきっかけに、清掃員のアルバイトに応募するが…、そこは風俗店だった!お金のために裸でイチャつく風俗嬢にはじめは嫌悪感を拭えない進。だが、彼女たちのたくましく生きる姿には、40年間の真面目一徹なサラリーマン人生では得られなかった学びがあった――。定年新人アルバイトのチャレンジ、はじまる!

リアルでもあり、ファンタジーでもある定年退職漫画『はたらくすすむ』はちょっと前に完結したが、実に2010〜20年代的な話だと思った。

団塊の世代の定年退職。
定年退職後の就労問題。
団塊の世代の「会社員」生活のホモソーシャルな世界と、むしろ現代の歓楽街の「下流」の生活との違いに戸惑う。
娘との断絶と隔絶。
風俗嬢(ピンサロ)の背景にある生活。

まあ、会社員生活から、繁華街のピンサロの清掃員という異界放浪譚のような話だったのであるが、その中で、本人が喪失していたアイデンティティを取り戻してゆくさまは、なかなか、若者と老人でいうともう老人よりの中年である自分には、胸にせまるものがあった。
社会の表しか見ていなかった主人公が、裏をみて、色々固定概念が柔軟になり、一言で言えばなんか楽しく暮らす話。

高齢者になるにあたって、若者から、ギアを落とし(むしろある面ではギアを上げる必要はあるが)てライフスタイルを変えていく必要があるが、それは生来の資質とはまた違った能力が要求されるわけで、自分も局面の変化に柔軟に対応できる人でありたいと思った。

近年の「多様性」みたいなこともしっかり重視されていて、そういう意味では、教科書的な話とさえ言えるかも知れない。

最後らへんにでてきた、ピンサロ店のオーナーであり、多業種に投資している「オーナー」が出てきたが、ああいう生き方も悪くないよなあと思った。具体的にロールモデルがあるんだろうか?