半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『世界は経営でできている』岩尾俊兵

なぜ組織の上層部ほど無能だらけになるのか?
張り紙が増えると事故も増える理由とは?
飲み残しを置き忘れる夫は経営が下手?

仕事から家庭、恋愛、勉強、老後、科学、歴史まで、
人生がうまくいかないのには理由があった!
人生に不可欠であり、一見経営と無関係なことに経営を見出すことで、世界の見方がガラリと変わる!
東大初の経営学博士が明かす「一生モノの思考法」

Web記事を巡回すると、この本のステマ的なやつによくでくわす。
確かに、読めば普段の行動が少しアップデートできるような気にさせられる、ような気がする。
その意味ではなかなかの良書かも。

まあ、経営学(もう少し正確に言えばマネジメント学か)は、問題解決や問題発見の普遍的な手法なわけだから、それを日常に援用させることはたやすい。
我々の行動にはさまざまな非合理が横溢しているが、それをつまびらかにもできるし、その非合理さ変えられれば、アウトカムも変わる。
だがまあMBA修了者がプライベートでも皆幸せな生活を営めているわけでもないのだが。
(まあ、それは修めた学問の「応用力」かもしれないが)

しかし、実際、家電が動作不良のときもっとも有効な解決法は「コンセントがささっているのか確認しろ」と同じように、実生活での課題の多くは「目的の手段の取り違え」で4割くらい行けそうな気がする。

ただ、経営学は間違いなく役立つとはいえ、この本ではそこまで細かく経営学の掘り下げをしているわけではない。
本当は、経営学でよく使われる問題解決手法を適用し、図示し、そのスキームを用いる、問題解決プロセスを見せてくれると、とてもインタレスティングなものになったと思う。

この本ではスキームのチョイスとかプロセスをすっ飛ばし「経営学」に長けたおじさんがいろんなことについて自由に語るスタイルをとっている。
もちろん万人向けの面白さはそういう作りが相応しい。実際婉曲なシニカルさがクリスプになっていて文章も上手い。

ようするに経営学の本ではなく、経営者でもある岩尾さんの面白い読み物を読んでいる、という感じ。

こういう感じってジャズのアドリブでも言えることで、理論によって導き出される部分と、実際に作り上げられたアドリブの精緻さ滑らかさの差といいますかね、そういう感じ。