半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『音大崩壊』

なんかSNSをみていて出てきたので、買った。

私立の音大は既存のスキームのままでは経営危機に陥るリスクがある。
新しい時代に対して、どうしたらいいのか。
その提言。
みたいな本。

音大の凋落の理由
外部要因として
少子化
・女子学生比率の減少(共働き化)
・社会変化
に対応できなかったこと。また内部要因として、
・トップ(コンクール優勝者)にしかターゲットを見据えていない方針
・マネジメントなどの音楽ビジネスに付随するスキルを教えていないこと
・クラシック偏重
など、冷静にこの業界全体を俯瞰して非常にわかりやすかった。

銀行員というキャリアを活かし、この「音大」という業界全体の過去・現在未来を概観し、「投資先として」将来性を検討するとこういう
結論になるんだと思う。
課題が明確化された文章で、読みやすかった。
私も経営者なので、こういう書き方の文章を読み慣れているのもあるが。
この本を実際に音大の関係者や音楽業界のステークホルダーはどう読むのだろう。
(私もアマチュアではあるが音楽関係者の末席ではある)。

スポーツ業界にくらべて、音楽業界は、音楽というマーケットそのものを発展させる組織力に欠けるのでは?
という提言は、まさしくその通りだと思った。
ナッシュ均衡」という一言で切り捨てているが、ジャンル同士で争って、パイを大きくする努力を誰もしていない。

地方でジャズっつーもんをやっている身からすると、こういう全体観の欠如を、ジャズの中でも痛感する。
地方音大の「アカデミズム」は、ローカルのミュージック・コミュニティに到達していない。
ジャンルの交流も希薄であるし。

だからといって、我々草ミュージシャンが草莽から身を起こしても、どうにもならない。
アカデミズムの立場、プロミュージシャンの立場、アマチュアミュージシャンの立場、それぞれが共通の夢を描けるような理想型があったらいいのになあ…とは思う。