半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『新しい封建制がやってくる』

こ、これはみんな読んだほうがいいかもしれない。と思った。

話をまとめると、
第二次世界大戦後は流動性の高い時代だった。
そして冷戦で社会主義が倒れたあとは自由で民主的な世の中、つまり自由主義的資本主義の西側諸国のモデルが優勢になった。
……と思われているけれども、実は水面下で社会は徐々に変わっている。
新しい封建制、とでもいうべき状態になりつつある、という話。

中世の封建制の特徴として、

  • 階層性の強い社会秩序(階層の固定)
  • 排他的社会階級(カースト)の永続
  • 大多数の人々の恒久的な農奴的地位

というものがある。
今の世の中ってそうなりつつありますよね?というお話だった。

世界の富は上層階級によって独占されつつあるし、これらの富は世代を超えて受け継がれ、閉鎖的な貴族階級のようなものを形成する傾向にある。アメリカのハーバードとかって、学力一本では入れなくて「いろんな経験」がを積んだ総合的な人材を選ぶということになっているけど、そういう「いろんな経験」は、親の支援であったり環境要因が大きく左右する。
結果頭がいいけど貧乏な人が締め出される事態となっている一方で、富裕層の子弟は入学しやすい。*1

また、民主主義の根幹をなす中産階級は没落し、都市部での暮らしは不可能になりつつある。サンフランシスコとか、ニューヨークとかってもう家庭を持った普通の暮らしの普通の職業の人が暮らせないので、単身で狭い住居に住むか、極端な話、職はあるけどホームレス、という状況にもなっている。
非婚化、単身化という現代の若者のトレンドは、シェアリング・エコノミーという綺麗な言葉で誤魔化されがちだけど、デジタルコンテンツをのぞいた衣食住のQOLは一貫してこの20-30年低下している。

中国は、西欧諸国が当然そうあるべきとおもっていた自由主義を完全に無視して、デジタル専制国家とでもいうような政体を作り上げているが、これが案外安定しているし、それに対峙していると思われている西側自由主義国家自体も、中国とそれほどかわらない状態になりつつある。

リベラルが労働者階級の味方ではなく、まるで中世の聖職者たちと貴族のように振る舞っているように見える(「バラモン左翼」というパワーワード!)という話もおもしろかった。

世界環境会議に出席する富豪のほとんどがプライベートジェットで集まるという矛盾、彼ら富裕層(テックオリガルヒとでもいうべき第一階級)は、環境保護などを叫びながら、自らのライフスタイルについては自省がない風潮。

都市改造論の話とか、中国の政体の話、最近の若者の世代論。

封建制」という視点でみれば非常にクリアカットに理解できるように思った。
というか、これから導き出される予想される未来は、かなり陰鬱だ。

民俗学の「文化相対主義」のように、政体にも優劣や、一方向的な進化というものが約束されているわけではない。
と考えると、デジタルの助けをかりた専制国家(中国)やデジタル封建制(おそらく日本を含む西側諸国)になったって、おかしくはないのだ。
けど、平和で民主的な世の中になって、多くの人々が自由を謳歌するようになって、、、という新しい時代が進んでいった先が、あれ、よくみると300年前の中世の封建制と同じじゃね?という知的なトリックがとても面白かった。

中世の封建制は、なんだかんだいって何百年も続いた「安定した」制度であるのだから、そういうデジタル封建制度だって、結構安定した政体として継続する可能性だってある。ただ、封建制度というのは、とどのつまり「階級制度」というわけで、階級上位の人と一般人民の交わりがどんどんなくなってゆく世界の果てに、一体何が起こるのか、あまり想像したくない。
新しいデジタル封建制度の君主になりうるようなテック系の人たちは、高度に倫理的たるような人格修養を受けた人たちではないのだから。

*1:日本だと慶應を思い浮かべてみると「階層固定」の感じが理解できると思う