半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『嘘と感情論で封殺された5つの日本の真実』高橋洋一

ふふふ、怒っている、怒っている……
というのが素直な感想。

高橋洋一氏は「諸外国に比べるとコロナはさざ波のようなもの」という発言で揚げ足をとられ、内閣参与を辞任した。

その一連の経緯を彼の側から論じたのが本書。
「勉強不足のマスメディアが、切り取った言説だけで毀誉褒貶するのはたまらん」というメッセージが強く伝わってくる。
僕は高橋洋一氏の論説は好きだ。
財務官僚であった経験や知識を元に、クリアに論じてくれるので、外から見ていてはわからないような政治的な問題に思考の補助線を引いてくれるから。

コロナの財政の問題、SDGsの問題、中国をめぐる諸外国の動向の話など。

中国の話。
中国の経済成長は「中所得国の罠」問題によってうまくいかないだろう、という予想。
たしかにそうだとは思う。
ただ、高橋洋一氏は、非民主主義の政治体制ではこの中所得国の軛を逃れることはできない、とさらっと書いて済ませているが、
僕も概ねそうだとは思う。民主主義であったり、自由経済のもとでないと、経済は発展しないとは思う。
ただ、これはドグマに過ぎなくて、理論的に実証されている公理ではない。
 なにより、シンガポールという強烈な反例もあるわけだし。

ただ、中小企業の経営者という立場で、この「中所得国の罠」という現象をみてみると
トップダウン方式の中小企業では、人が育たない」みたいな企業経営あるある話に別の意味が付与されるよなーと反省した。
うちの組織は、比較的風通しがよく自由にものが言える組織でありたいと思い、できるだけそういう気風を形成するように努力はしてきたけれども、依然職員からの提案や提言というものが多いとはいえない。それは、やはり、ファミリー企業ゆえの限界なんだろうな…と思う。
ファミリー企業って、結局のところ専制君主制みたいなもんじゃないですか。
そういう体制にのうのうと安住していて「うちは人が育たない」なんてぬけぬけと言う資格はやっぱりないんじゃないか。
完全なる民主主義でないとエンタープライジングな人は居つかないのかなあとも思う。

まあ、職員の教育レベルとかそういうものもあるかもしれないが「ティール組織」といわれるような組織のあり方をもう一度再考する必要があるのかもしれない。政治体制が専制君主制であることをもっと自覚し、より職員に配慮しないと、未来はないのだろう。