半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『信長の正体』本郷和人

ちょっと前に徳川家康の本を買って読んだからか、Amazonは続けて信長の本をすすめてきやがった。
halfboileddoc.hatenablog.com


読み終えて気がついたのだが、「歴史学者という病」を書いた人なのね。
halfboileddoc.hatenablog.com

信長という存在、また本能寺の変に関しての話は「正調」の歴史学者としては取り上げにくく、「オルタナ歴史学」の格好の舞台になっているわけだが、その「オルタナ」が跋扈する中に、敢えて正調の歴史学者が切り込んでみた。という本。

とはいえ、かなりその書き方は慎重で「なんでこんなに踏み込まない言い方をするのかな」と思っていたけど、正調歴史学者としての論理性合成を保ちつつ、信長という特異点を語るという、割と難しいことをしているからのようだ。
信長だけに焦点を当てているのではなく、そもそもこの戦国時代を語るために、平安時代の荘園制、室町幕府の地方放棄、当時の宗教観など、わりと広い歴史視座から信長の特異性を描いている(あくまで、信長の性格とか、属人的な内容ではなく、信長前、信長以後でどうかわったのか、ということを丹念に書いている)

オルタナ歴史学」の人たちの根拠なき言い切りの歴史学は割と痛快だとは思うけれど、正調歴史学者による信長の本は書き方が慎重ではあるが面白かった。

  • 比叡山の焼き討ち:僧兵だけでなく清僧たちも皆殺しにしているが、これは既存の仏教の耐用年数が過ぎていたがためで、合理主義への傾倒が体現された歴史的出来事だったのかもしれない。
  • 一向宗・惣村との戦い
  • 桶狭間の戦いは、本当に「奇襲」だったのか。プロの先頭集団としての織田軍団の可能性
  • 織田信長の家臣の「サラリーマン化」(封建制ではなく)
  • 織田信長は軍事と経済を密接に結びつけて考えていた
  • 戦国大名は誰も天下取りなどは考えていなかった(自国を守ることが第一義)