軍事ものの新書二つ。
『サイバースペースの地政学』
ウクライナ関連でも有名になった小泉悠さん、小宮山功一郎氏の共著。「サイバー犯罪」とか「サイバー攻撃」とか漠然というてますけども、実際にサイバー攻撃って「どこ」に攻撃を受けるの?という話。
インターネットは場所を感じさせず世界を繋げることができるけど、リアルなインターネットのインフラってどうなっているのか、そしてデータセンターみたいなものがどこにあって、どうなっているのか。みたいな話。
ほとんど知らない話なので、勉強になった。
以下、備忘録
- 現代は情報を燃料にして走る時代。情報が価値を生む世界に住んでいる
- コンピュータは電気を食う。初期の計算機ENIAC起動時にはフィラデルフィアの街中が暗くなったという言い伝えも残っている
- インターネットは「中央集権型から自立分散へ」というキーワードがあるが、実際には黎明期からデータは集約される運命をたどる
- 1990米国ではエクソダスとフロンティアグローバルという二つの企業が需要をわけあっていた
- 証券取引書はシステムの近くのラックを高値でレンタルするという独自のコロケーションサービスをはみめる。
- エンタープライズデータセンター、ハイパースケールデータセンター、キャリアホテル。三つの形態。
- データがもつ重力=データ・グラヴィティ
- 長崎は昔からサイバースペースの玄関口(1871年海底ケーブル敷設)
- ケーブルシップは世界で50-60隻
- 地球上の総電力のうち2%をデータセンターが占める
- AI時代のつるはしは電力消費が激しい
- 実際のデータセンターは普通の人間にとっては快適とはかけ離れた過酷な場所
『従属の代償』
こちらはミサイルの話。
現代日本をとりまく中距離ミサイル事情。日米の核密約。米ソのキューバ危機など。
いわゆる第二次世界大戦後の「ミサイルの歴史」「核の歴史」を総覧できる一冊。
現在日米は軍事作戦として一体化できる段階らしい。ミサイルの指揮系統は共通化されている。
この辺も、あまり詳しくは語られない情報なので、こういう新書でさらっとOverviewできるのはありがたいこと。へー、という情報だらけだった。
個人的には日本の核不拡散条約や非核三原則というのは尊重したいとは思うが、
私も日本に住む日本人なので、自分が核攻撃にさらされる、もしくは核保有国の恫喝にさらされたくない。これが第一義である。
ただ、その辺を追求すると、非核三原則であるとか、唯一の被爆国としての態度としてどうなのか、みたいな話になるわけで、いやはや難しい。
著者の主張は、「日本って中国などの(非民主国家)などの挑戦から民主主義を守る」という大義を掲げながら、国内の民主主義をおろそかにしていませんか?
確かにそうだと思った。
日本政府はこのあたりのデリケートな情報を一貫して公にはしておらず、民主主義による意思決定というプロセスを踏んではいない。
その意味ではアンフェアではあるし、民主党政権が頓挫してしまったのは、この辺りの事情の引き継ぎがうまくされていなかったからでもある。
しかしこの辺は日米安保とか軍事協定をつまびらかにすると、結局日本ってアメリカの緩やかな植民地であって民族自決権ないやん…
みたいな現実にぶちあたって政権がとびかねないしなあ…みたいなところだよね。難しい。