藤子不二雄F先生のTP(タイムパトロール)古典的名作だという話は有名であったが、僕はそこまでの藤子不二雄フリークではないので、多分漫画喫茶とかで読んだ記憶はあるが、そこまで愛読はしていない。
この度完全版、みたいなものが月に一巻くらいのペースで刊行されたので、読んでみた。
うん、なるほど。面白い。
面白いが、これはもう完全に古典だよなあと思った。
- 期待感があって読む割には、ひどくあっさりした印象を受ける
- のちのSF作品集や、ドラえもんの映画版などの作品にも影響を与えているので、新鮮味がない
というところが、「古典」という印象を受けてしまう理由なんじゃないかと思った。
ジャズの名盤とかも、「名盤」「古典」という評価をうけて聴くと、ひどくあっさりと終わってしまう印象を受ける。
それだけ「名作」というラベルを冠したら、我々が受ける正のプラセボ効果は大きいんだろうなと思う。
とはいえ、TPボン、確かによくできていて、歴史に介入できないとか、色々な縛りを設けて、ピンチやスリルなどの展開の起伏があったり、主人公のおっちょこちょいさ、そしておっちょこちょいななりに成長する点なども少年漫画としてよくできているし、一緒に行動する先輩タイムパトロールも後輩タイムパトロールも女性で、淡い異性感というのも読者サービス的にいい感じではある。
時代考証とか、舞台も、これは私は歴史家でもないのでどれくらいのリアリティがあるかというとコメントできないが、結構きちんと調べて描いているように見受けられる。そして、その設定資料も、一話ごとに大胆にリセットされるので、アウトプットの割にインプットは結構大変だったんじゃないかと思う。
読んでみたらいい。多分僕と同じように「確かに古典だわ」という感想になると思う。
良質な作品ではある。しかし一話一話がさらっとしている。
劇場版ドラえもんの原作漫画にくらべると、どうしても印象は薄い。
でもおそらくこの作品による蓄積が、劇場版ドラえもんの下地になっているはずだ。
その意味では、藤子不二雄F先生の軌跡を辿るなかでは大きな意味がある作品なんだろうと思う。