陰謀論関係の本2題、挙げてみよう。
『陰謀論で親を失いました』
コロナ禍で、今までやさしかった親が、なんか変になった。
妙に攻撃的で、間尺に合わないことを言い出したり、信じたり。
そんな体験を4コママンガにしたもの。SNS・Webで公開されて話題になったらしい。
結論は、全く話を聞こうとしない状態になった親と訣別するに至る。
全然救いのない話。
まあ、結果的には一定数いるのだと思われるリテラシーの低い人が、変な陰謀論に踊らされているテンプレのような話。
ただ、当事者は地獄だわなあ。
怖いのは、そこにあまり明確な悪意はないように見えること。
「地獄への道は善意で敷き詰められている」を地でゆく内容だと思う。
『陰謀論』
こちらは逆に、極めて冷静な論調。
淡々と数量分析を行い、陰謀論とその風潮の分析をしている。
- 陰謀論者が陰謀論をどれだけ内面化しているかはさまざま
- Yahooコメントと民法を視聴する層は陰謀論のリスクが高い
- 政治や社会の問題について、よく注意を払ったり勉強したりするひとほど、さらに深く(中略)知りたいと思うようになるのは人間の基本的な性質であろう。それがいい方向に転べば(中略)オピニオンリーダーになれるかもしれない。(中略)「政治」について関心を持ちすぎることによって、いたずらに相対する政治的意見への対立意識を深めたり、異なる意見を持つ他者への寛容性を失ったりする有様が、さまざまな場面で観察される。
- 「誰が信じるか」よりも、「自分の正しさを支えてくれるから信じる」という陰謀論受容のメカニズムの方が重要
- 「正しさ」に固執することこそが、陰謀論がつけこむ余地になる。
分析結果はいろいろ面白いので、後で追記。
結論。「自分の中の正しさを過剰に求めすぎない」という姿勢こそが、今の社会に求められているように思えてならない。
しかし、情の部分を排除したこのクールな論考は、後書きをみると、筆者はもともとネトウヨだったらしい。アカデミックな世界においてそういう陰謀論が間違いであると気づき、陰謀論に染まる人はどういう特性を持っているかということを研究対象にする。
実は、研究の内発的な動機にはかなり切実なものがあり、その意味で、一見クールに見えるこの本、実はかなりアツい情熱を持って書かれていると思う。
個人的にはこっちの方にグッとくる。