半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

三宅香帆『それを読むたび思い出す』『読んだふりしたけどぶっちゃけよくわからん、あの名作小説を面白く読む方法』

三宅香帆さんは、高知出身で京大の文学部を出た方。
だいぶお若いはずだけれど、たくさん本を読んでいる人は、なんか世代が違っても話が通じるんちゃう?という気にさせられてしまう。
実際本は、するっと頭に、心に入ってくるような書き方で、すごく読みやすかった。

もともとはBlog出身。
小説の読み方とか書評とかを書いていたようだが、活字界からオファーがあり、現在はリアルな文筆の世界にいるらしい。

『それを読むたび思い出す』は、
筆者が全く題材なしに初めて書いたエッセイ本、ということらしい。
要するにそれまでは、書評であるとか小説の読み方であるとか、「目的」があって、それについて文章を書いていたのだが、この本ではフォーカスは自分。ということで、高知で過ごしていた高校時代、京都での学生生活、という生活やそれに際して思ったことが綴られる。

いってみればよくあるBlogの日記的な文章だけれど、
本人の自意識の香気が強くないので、さらりとした読み味。
この人は喜怒哀楽の表現がとっても上品なのである。
ぼんやりしている、といってもいい。
なんでしょうかね。高知出身の文筆家の感情枠というものには定数があって、西原理恵子が枠を全部使い切ってしまったんでしょうか、とでもいいたくなる。


『読んだふりしたけどぶっちゃけよくわからん、あの名作小説を面白く読む方法』
読み味が良かったので、もう一冊読んでみた。
彼女の立ち位置を確立した、目的がはっきりした本。
タイトル通りの本であるが、なるほど、わかりやすい。読みやすい。
小説の読み方はいろいろスタイルがあるけれど、そのいろいろをとにかくわかりやすく紹介している。

巻末で、「これって実は大学院で教わったことなんですー」とネタバラシをしているが、まあそのアカデミックな内容を、めちゃわかりやすく解きほぐしている。そうね、文章の読みやすさ、伝え方のうまさが際立つと思った。

三宅香帆さん、いいではありませんか。また読んでみよう。