ちょっと話題になっていたので買った。
twitterのナウシカ考察の人、しろちちさんが、紹介していたのだ。
通勤バス内で「危機の時代に読み解く「風の谷のナウシカ」」読了。また改めて原作を読み返したくなる、原作への愛と熱意と洞察溢れる珠玉の記事ぞろいでした。 pic.twitter.com/bVEolDYvjb
— しろちち@C101新刊BOOTH委託開始!! (@shirochichi0707) 2023年2月9日
朝日新聞デジタルで2021年3月から2022年末にかけて配信され、読者から大きな反響を呼んだインタビュー連載「コロナ下で読み解く風の谷のナウシカ」。そのすべてをまとめて単行本化!
宮﨑駿監督が足かけ13年の歳月をかけて完成された漫画版『風の谷のナウシカ』は、映画版とはまったく異なる深みと広がりを持ち、読み手にさまざまな「謎」を投げかけてくる。中でも「なぜ、ナウシカは人類の滅亡も辞さず、地球環境の再生を目指していた『生ける人工知能=シュワの墓所』を拒絶したのか」という疑問は、多くの読者の心を捉えて離さない。
時代の先端で活躍する論者たちがこの謎に挑みつつ、コロナウイルス、ウクライナ侵攻、AI問題、気候変動など、混迷する現代社会を切り開く鍵を「ナウシカ」の中に見いだそうと試みる。「ナウシカ」の複雑な物語世界を理解するための人物相関図、用語解説、ブックガイドも収録。【収録著者】民俗学者・赤坂憲雄/俳優・杏/社会哲学者・稲葉振一郎/現代史家・大木毅/社会学者・大澤真幸/漫画家・大童澄瞳/映像研究家・叶精二/作家・川上弘美/軍事アナリスト・小泉悠/英文学者・河野真太郎/ロシア文学者・佐藤雄亮/漫画研究者・杉本バウエンス・ジェシカ/文筆家・鈴木涼美/スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫/漫画家・竹宮惠子/生物学者・長沼毅/生物学者・福岡伸一/評論家・宮崎哲弥(五十音順、敬称略)
ま、ナウシカという題材にかこつけて現代・未来を語るということ。
それだけ、ナウシカという作品が様々な含意を持つ奥深い作品であるとも言える。
いい意味で「群盲象を撫でる」という感じ。
それぞれの専門家はそれぞれの専門家の見地でナウシカを語るのが面白い。
ロシアウクライナ戦争でちょっと有名になった小泉悠さんはナウシカと「戦争という実相」について語っているし、文学者は物語構造でとらえる。
生物学者はバイオの観点で語るし、元セクシー女優から文筆家に転身した鈴木涼美は自分が10代〜20代にいた六本木界隈にいた時の体験を「腐海のほとりで暮らす」ことに喩えて考察する。うーん。渡辺杏さんが、ナウシカがぽろりと言った「母には愛されなかった」というセリフについて、結構思いをめぐらしているところが印象的だった。宮崎駿は、多くを語らないが裏設定というか世界観を作り上げて人物像を結像するのがとてもうまい作家。
劇中ではその言葉はほんとにさらりとしか触れられていないのだけれど、親に愛されなかったかも…みたいな思いを抱えて大きくなった人は、これで通じるんだなあ…と。
クシャナとナウシカはやはり好対照の二人であること、宮崎駿の物語の作り方の原点、それぞれの解説者がそれぞれの得意分野でナウシカについて読み込み論考している様は、本当になかなかおもしろかった。
ま、とりあえずナウシカの漫画版全7巻、読んでない人は当然読んでみるこった、とは思う。
そこを読まないとこの本は楽しめないのは確か。(累計発行部数1700万部らしい)