半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『異類婚姻譚』本谷有希子

なんだか、とりとめのない話ではあるけれども、これ芥川賞なんですね。
読み終えるのに、結構時間がかかってしまった。

かなり近い二人の人間関係の、言語化できないモヤモヤの部分ってあるよね。
もし僕が独身の頃の僕に、結婚ってこういうもんだよ、みたいなことを言っても言い尽くせない何か、っていうのがある。

そういう「結婚」に関するモヤモヤの話を、ファンタジー的な様相で描く話。
読み味は不思議なんだけど、普遍的な何かに触れようともしている。
全然自分と無縁な話のように見えて、自分の経験にもあるようなことが現れてドキッとする。

* * *

文学における理外の現象の書き方って、案外難しい。
幻想文学」みたいなていであると、わかりやすいのだが、最近は、その辺り曖昧な作品も多いし。
梨木香歩さんとか、川上弘美さんとか、小川洋子さんとか。
梨木さんは昔なら怪異譚といわれている「あちらの世界」の端っこが垣間見える描写。
川上さんは、人間の心的世界がつながっているかのような(夢に出てきたりとか)世界を描いたりする。
現実とすこしずれたような、世界。心的世界は思っているより広大ではないか。
小川洋子さんは、これももうなんともわからない世界。
いや、そもそも女性の作家が見ている現実世界と、男の私が見ている現実世界は、そもそも違うのかもしれない。

なんだろう、村上春樹言語化できない「よくわからない世界」をハードボイルド小説風のストーリーの中に描いた時には、
随分と批判も受けたし、叩かれた。
あれは80年代。それから一世代経ち、こういう小説は普通に受けいられるようになったのか。

この辺は文学の世界では論じられているんでしょうが、専門外なので、消費者として受け止めるしかないんだけど。

世界の見え方は、人によって随分違う。
そういえば昔、R.A.ラファティの短編にそんなのがあったな。

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そういえば、最近小説をあまり読んでいない。これが精神的老いとでもいうものなのか。