- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/07/28
- メディア: 文庫
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つきあった様々な女性の視点から、男の人生が語られる、という一連の短編。時系列はばらばらで、西野という男のゲシュタルトを、その補集合たる相手の女性達の一人称語りにより構築する。
ニシノ君は、女性との距離を詰めるのは上手であるが、結局うまくいかない。確かに結婚せず一生を終えた男の人生を描けば、恋にはすべて破局があるのはもっともなのだが、こういう風に一生を恋愛の繰り返しで終えるのはなかなかしんどそうであると思う。
この前みたマンハッタン・ラブストーリーで、及川光博の劇中名であるベッシーが、小泉今日子に、「ベッシー、男の友達いないでしょ?」と言われて狼狽するシーンがあったが、ベッシーとこのニシノユキヒコは少し似ている気がする。同性の友達の匂いがしないという点において。
白状すれば、私も、同性の友達というのは少ない。悩みを打ち明けるのは、殆どの場合女性であるし、悩みを打ち明けられるのも女性であるのが殆どだ。そして、これまた白状するが、この小説に書かれているような「ニシノの手口」というのも、結構わかるのである。(尤も、自分の場合、それほど巧妙に恋愛をするわけではないが)どうもこの本を読むと、そういうのを見透かされているようで複雑な気分になった。
はっきりいいますと、ニシノ君が愛せないだの愚痴愚痴いったり、結局女に捨てられるのは、畢竟この男は自己愛が肥大している輩で、対象の女の子のことなど全くみていないからなんです。愛される自分が好きだから女の子に優しくする。ひねれば自分に対する愛情が溢れる蛇口のようにしか女の子を扱えない。だから最後には捨てられる。自業自得ですな。