ルワンダ内戦の渦中を生き延びたツチ族(虐殺された側)の良家の子女の体験記。
1994年。
阪神大震災が起こった年であり、僕は大学2年生だった。
著者のイマキュレーさんと多分年はあまりかわりない。
ルワンダ内戦は冷戦も終結し、世界が融和ムードの1994年、世界の片隅のルワンダでとんでもないことが起こっていた。
そういう意味では、世界中がピリついていたナチス・ドイツのユダヤ人虐殺よりもある種酷薄なことではある。
イマキュレーさんはルワンダの農村に住むビジネスに成功しているツチ族の良家の子女。
ツチ族・フツ族の民族間の軋轢のようなものを幼少期から感じたことはあるが、まあ幸福な子供時代。
大学生のときに、どうも雲行きが怪しくなって、そしてツチとフツとの間の民族憎悪の渦に巻き込まれてしまう。
アンネ・フランクの日記、のように、牧師の家に匿われて隠遁生活を送り、また逃げ延びる日々。
誰が信頼すべき味方か、誰が親切そうな顔をして近づいてくる殺人者か、がわからない。
ツチ族・フツ族で村の中で多少の緊張感をもってしかし平穏に送っていた生活が、しかしツチ族・フツ族の憎しみはエスカレーションして、同じ村の中で殺し合いが始める。これって、すごい怖いことだよなあ。
アーウィン・ショーはニューヨークのお洒落小説家だが、短編の中にユダヤ系ロシア人のルーツの話で、同じ村の連中からユダヤ迫害を受ける話がある(親しくしていたご近所さんのおっさんが、家の中のものを盗っていったり、自分の姉妹をレイプしたりする)が、その小説に読み味が極めて近い。
そういう、身近の人間が突然敵に変わる怖さが、ルワンダ内戦の真骨頂だろうと思う。
多分、ボスニア・ヘルツェゴビナとかの「民族浄化」とか言われているやつとかもきっと似たような体験に違いない。
カンボジアでの大虐殺とか文化大革命とか(これは、民族の違いすらない)も、ちょっとした言動が死ぬきっかけになるおそろしさ。日本というヌルい社会に生きていてよかったなあ、と心底思う。
政権交代したって、それで民族浄化が起こるわけじゃないからね……
参考:
halfboileddoc.hatenablog.com
ブックレットのようなルワンダ内戦についての本はこちら。紹介程度の内容。
halfboileddoc.hatenablog.com
こちらはルワンダを舞台にした名著。
「ルワンダ中央銀行総裁」に命ぜられた日本人が孤軍奮闘でがんばる話。
ルワンダ内戦の起こる一世代前。
halfboileddoc.hatenablog.com
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