少し前に、『ルワンダ中央銀行総裁日記』という古典的名著の感想を書いたが、
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服部氏が赴任していたころから十数年後、ルワンダ内戦が起こる。
フツ族とツチ族の凄惨な殺し合いで、一説には100万人が殺されたとも言われている。
これは、ルワンダ内戦について、紹介した小冊子。
しかし、実際のところ、内戦の内幕は、そこにいた当事者にしかわからない。
そういう意味では本田勝一の『カンボジア虐殺』は、概要を掴むのにはよかった。
しかし、アウシュビッツのような機械化された絶滅装置ではなく、鉈や農具のような日常の道具で、100万人が殺されたというのも、なかなかな生々しさだ。
ルワンダ中央銀行総裁の服部氏も、このツチ族・フツ族の確執については日常的に接していただろうし、感じるところもあったとは思うが、日記の中では、敢えて言及はしていない。
まあ、国連から派遣されたテクノクラートとして、そういう人種間の確執について、ネガティブな言葉を発するべきではなかったんだとは思うが、その辺は当時の東洋人としての限界ではあったのだろうと思う。
「ルワンダ中央銀行総裁日記」での孤軍奮闘は、事実でもあるし、個人の業績としては最上のものであろうとは思うが、同時に、のちのジェノサイドの種が、その時に着々と築かれていた…と思うと悲しくなる。
ある時期、ある時点での個人の成功や失敗とはまた別で、世界は動いているんだなあということを忘れてはいけない。