半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

未来年表シリーズ

年頭なんで、未来予測シリーズでもあげときますか。

未来の情報を集め、組織の舵取りを決める。
これが経営者の大きな仕事であるし、私も経営者の端くれではあるわけ。*1

なので、未来予測系の本はかなり読んだ方だ。
私の領域は医療・介護、ヘルスケア部門なので、当然人口動態の話に関連深い。

日本はとっくに人口減少局面に入っている。
しかし実感はなかなか湧かない。
 具体的にはこんな感じになっていきますよ…というわかりやすい話。
それがこの未来年表。
「未来の年表」は社会がこうなっていきますよという概説本。
「未来の年表2」は、具体的に生活者視点だと、こうなっていきます、という本。
「未来の医療年表」は医療分野に限った未来予測。
 という感じだ。

  • 経済的にも窮乏する一人暮らし高齢者が増える*2
  • 火葬場が追いつかない(多死社会)→もうそうなりかけている
  • 私学の経営難、大量倒産時代→これも兆しはある。音大とか特にそう
  • 中福祉中負担は崩壊する →これは完全にそうなのだけど、まだ国はケツを割っていない。多分政権が吹き飛ぶからな。
  • 医療を病院完結型から地域完結型へ(お金とリソースの問題で)→これも思ってたより遅い
  • 住宅の供給過剰 →首都圏の不動産バブル、そろそろ崩壊かといわれて10年経つね
  • 地方は衰退に向かい、東京も高齢者で溢れかえる。親がいなくなると地方銀行はなくなる
  • 空き家が増えると、スズメバチの巣なども増え、危険度が増す(敷地の権利が曖昧だと自治体も踏み込めない)→患者さんに「便利屋」がいるが、スズメバチ問題はなかなか大変らしい。あと田舎は野生動物を制御できなくなりつつある
  • 刑務所が介護施設に→もうなってる。でももっとひどくなる。

解決策:
捨てるところは捨てる。非居住エリアを明確化、国際分業(これも捨てるところは捨てる)

別に難しいことないので、読んでみられたらよろし。
人口動態から導き出される結論だから、絶対そうなる鉄板の未来予測である。
ただ、多くの人が事実に気づき始めるころは「大変だ大変だ」の大合唱なんだろうな。
医療年表も同様だった。(ただ、医療の場合は技術の進歩の部分が、今ひとつ不確定)
総花的な未来予測は、「うん、まあそうだね」と思わされる。

* * *

ただ、未来予測に基づいて経営するって、案外難しいのよ。

人口減に対するグランドデザインについては耳タコレベルで繰り返されていて、それこそ、2010年代前半は「医療介護同時改定の2018年が一つの節目!」って言われていた。大規模投資はそこまでにしておいて、あとは撤退戦だぜ、と言われていた。
なので将来シュリンクしていくと思われる慢性療養型に弊社は早々に見切りをつけ、亜急性期〜地域包括ケアシステム密着に注力することに決めた。それはうまくいっている。

ところが、案外、国の政策変更は緩やか。
2022年に至っても、地域完結型医療の志向は完成形が見えない。
療養型病床についても、干上がってもいない。

不動産空き家問題も2010年代から言われていたので、個人的には不動産投資に及び腰だった。
けど、バブル崩壊にもならず未だ都心のマンションは収益を出せている*3わけで、なんか見逃し三振の気分。
かといって時期を逸した現在手を出せば、どうせ最後には起こる暴落で損こいてしまうかもしれない。
ううむ。
「肉は腐りかけがうまい」的な、ぎりぎりのチキンレースの部分は、案外美味しいんだよな、と思う。
「リスクをとる」というのはそういうことだ。

参考:

halfboileddoc.hatenablog.com
私学崩壊の先端にあるのが、音大、ということになるんだろうな。
halfboileddoc.hatenablog.com
これはドマンなかの未来予測本。このエントリーの巻末にも未来予測本のリファレンス上げている。
自分で自分のインデックス作っていると、こういう時便利かも。

*1:医療は制度ビジネスなのでそのルール作りの情報に注目しておくインセンティブは他の業種よりも大きい。しかしそれだけではなく、「ありうるべき未来」を想像し、それに現実を近づけていく、ということも大事らしい。ビジョナリーカンパニーっていうのはそういうことなんやね

*2:団塊ジュニアである我々が、まあそうなる。多分結構悲惨なことになる

*3:そろそろやばそうだ