半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『少年のアビス』

3巻がでた辺りくらいから読み続けて、現在は新刊がでるのを楽しみに待ち受けている。
一言でいうと『田舎の閉塞感』を煮詰めたようなマンガ。

何もない町、変わるはずもない日々の中で、高校生の黒瀬令児(くろせれいじ)は、“ただ”生きていた。家族、将来の夢、幼馴染。そのどれもが彼をこの町に縛り付けている。このまま“ただ”生きていく、そう思っていた。彼女に出会うまでは――。生きることに希望はあるのか。この先に光はあるのか。“今”を映し出すワールドエンド・ボーイ・ミーツ・ガール、開幕――。

最初は平凡な街の平凡な高校生が、失踪していた人気アイドルがコンビニでアルバイトしていることに気づく、というところから話が始まるのだけれども、
平凡な高校生のもとに死の影つきまとうアイドルが現れる…という、言うたら「天空の城ラピュタ」的な
「天使がやってきて冒険が始まる…」みたいな展開だと見せかけて、実はそうではなくて。

「なんとなく平凡な生活」と思っていたけど、実は「なんとなく」でもなく「なんとか」だった。
みたいな話。
主人公の周りをとりまく登場人物との関係性の異常さが徐々にあらわになって、地獄の釜が開く……

「性衝動」って、既存の物語では、新たな展開を迎える「良きもの」として描かれる。
けれども、この作品では「衝動(リビドー)」が、事態をややこしくし、状況をひっかきまわす因子にしかなっていない。
ところがすごい、といか非常に醒めているというか。
昭和の「性衝動」に対する肯定感に対して完全に冷や水をぶっかける。
現代、すべての性衝動は相手からの未来永劫にわたる合意がない限りセクハラとして断罪されかねないという社会情勢になっているけれども、そりゃ少子化になるわと思う。怖すぎる。そういう時代の変化にうまく呼応したのかなと思う。

白髭を生やした「神様」視点で「全く人間というものは……」とか言いたくなっちゃう*1ようなストーリー。
でも、当時者の心理描写というのも克明に描かれ、そういう意味で読むのに痛みを伴う。
絵もうまいし漫画としても非常にうまい。
うまいだけに、しんどい。

この救われない話はどこに着地するんだろうか。

主人公の担任の先生の「ヤバい」感じは基本的に嫌いじゃない。
いや、ヤバいと思うけど。
行動力のあるヤバい人、そして暇な人って厄介だなあとつくづく思った。
同級生のちょっと太い子の「イタい」感じ。嫌いだけどめっちゃ共感する。
でも、この子が救われる感じは全然しないね。

参考

これ、読んで割に感じるところがあったわりにはBlogには残していないのね。地方都市ディストピア感小説。これも、読んだけどアウトプットしていなかったな。これも地方都市の狂った感じを描く。
halfboileddoc.hatenablog.com
ちょっと違うけど、田舎(地方都市・地方集落)のいやらしさを紐解いた一冊。
halfboileddoc.hatenablog.com
これもテイストが近い話。

halfboileddoc.hatenablog.com
これは地方都市の閉塞感、からさらに閉塞させたような地方集落の話。
halfboileddoc.hatenablog.com
地方都市の閉塞感をあまり感じさせずいい面を描いた感じ。
halfboileddoc.hatenablog.com
ちょっと違うけど、地方都市って性に開放的なんじゃ…みたいな意味もない期待感の漫画。