半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『鵜頭川村事件』『ガンニバル』

鵜頭川村事件

SNSとかみていて漫画アプリのトレイラーが気になって漫画を読む、みたいな入り口が随分増えた。
これもそれで読んだわけです。

以前にも全く同じやり口で読み始めた「監禁嬢」という作品の人が作画。
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洪水で一つしかない村の出口が封鎖された村での出来事。
もともと閉鎖的で鬱屈した人間関係の中での小競り合いが、大きな武力闘争に発展してゆく。
矢萩姓と降谷姓の確執の構図。
そういう差異による暴力の構図は、たとえばボスニア・ヘルツェゴビナもそうだし、ユダヤ系の差別(渡米したユダヤ系のアーウィン・ショーも、そういう原点になるような作品があった)もそうで、枚挙にいとまがないが、おそらくルワンダ内戦(ツチ族フツ族)を参考にしているのではないか?と思った。
ま、こういう暴力に汚染された閉鎖村落の中をサバイバルするお話なのではあるが、コミックスの表紙に描かれている「シロオバケ」みたいなやつの正体が、結局あまり描写はなかった。

ガンニバル

こちらもドラマ化されるようで。これも閉鎖的な村落に駐在してきたお巡りさんが見たものは……みたいなやつ。
カニバリズムと、近新婚などの昭和のタブー的な話に迫る、ホラー。
ま、こういう話は、手塚治虫にもよく取り上げられていた題材だけどもね。
独特の絵画風のタッチと大胆なカット割で、芸術性の高い作画が印象に残っている。
起伏の多い山間部の山の描写がリアルだなあと思った。
主人公の奥さんが、どことなくヤンキー感を醸し出す巨乳だったが、ドラマでは吉岡里帆とな。

21世紀の我々団塊ジュニア世代からしても、当時の昭和の価値観に染め上げられた田舎のムラ社会ってのは、なかなかきついもんがあるわけで、暴力事件や寡頭体制やカニバリズムや雑婚などがあろうとなかろうと、キツい。
けど限界集落では一人では生きていけないのだ。肩寄せあって暮らすには何らかの組織が必要になってくる。
多分文明が発展したところで、一人で生きていけない非都市社会ではコスモポリタニズムなど通用しないのだ。

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2022年読んだ本の中でも印象に残ったこの本が、物語の起こらない田舎の閉鎖性について言及されていて、なかなか趣深い。