半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

正論で冷水を浴びせかけられる 野口悠紀雄『2040年の日本』

例えば夢見がちの女子大生がいて、
「♫将来は〜、港区のIT企業に就職して〜、ハイスペのイケメンIT起業家と結婚して、専業主婦で、シンガポールに住んで〜」
みたいなことを言うてる女子に
「いや君Fラン大学だし、IT起業家は頭悪い子とは結婚しないよ?君の想定予想生涯年収いくらだと思っているの?」
と正論で返したら、鼻白んでしまうこと請け合い。

ただ、未来って割と不確定だから、政治の世界でも希望的な観測の元で政治家も官僚も未来予想図を描きがち。
例えば将来の人口予測でも、低出生シナリオ、高出生シナリオ、その中間、みたいななんとなくのカーブを描いて、推計をしている。
ただこれ、明らかに見積もりは甘くて、2023現実は、中間シナリオと低出生シナリオの間ぐらい。

そう、この本は、かなりシビアに「そういう夢見がちの未来推計をやめて現実を見ろ!」と言っている本。
そもそもすべての未来予想は、日本経済の成長率 0.5%なのか、1%なのか、それで全然変わってくるかんね!という話。

実際GDPの成長率が低いと、プライマリバランスの達成も不可能だし、社会保障も頓挫する。
それなのに、政府の成長率予測は常に楽観的な数字で構成され、それを常に下回ってきたのが失われた20年というわけ。
一方、成長率が高い場合は、エネルギー消費量が高くなる分、エネルギーコスト、エネルギー調達先を考えなきゃいけないデメリットもあるけど。

いろんな不確定要素があるから、さまざまな提案を頭ごなしに否定することはできないけれど、
マクロでみたら、ある程度の予測は今の時点でもできるはずだけど、そこは縦割り行政的な「他所のシマには口出さない」メソッドで、誰も批判しない。
でも、冷静に見ると、2030年から2040年まではある程度予測はできるはずで、これほんとうに大丈夫なんですか?と警鐘を鳴らしている。

どう考えても、現実を見ようとしない現在の政策と国民世論のあり方に、野口氏は飽き飽きしている。
私もそう思う。

Dxとかなんとか旗だけふっているけど、多くの市井の我々国民は、変わらなければいけないのは自分たちであるという事実を見ようとせず、
勉強もしない。絶対10年後はひどいことになっているとは思うけど、これどうすればいいんだ。