半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『ビジネスの未来〜エコノミーにヒューマニティーを取り戻す』山口周

オススメ度 100点
元気でる度 120点

halfboileddoc.hatenablog.com
以前から山口周の著作にはずれなしということを書いていたが、最近は著書だけではなく、メディアに著者本人の露出も増えたように思う。
(やさしそうなおじさんで安心した)
この本は、メディアに出るようになったからか、思索する本人の近影が大写しになったもの。
だいぶ扱いがかわったなあ、と思う。著者から文化人という感じに今はなりつつある。

今回の本、かなり大きな話だったけれども、非常に得心のいくものだった。
この本、間違いなく売れる。

今までの山口氏の著作も、かなり納得がいく話だったけれども、ビジネス環境の中のある事柄についての著作、というふうだった。
今回は、現代文明を俯瞰して、未来への提言という、かなりな大きな話。

特殊相対性理論から、一般相対性理論に進んだような、視座の広さに圧倒された。
主張も明快で、なんと、論旨そのものの結論が、まえがきで示されており、著者の自負心がうかがえる。

・転機というものは、なにかが始まる前に、なにかが終わる時期なのだ(ブリッジズ)
・では、現代でなにが起こっているかというと、従来のビジネスの世界は、その役目を終えつつある。
・低成長は、今までの社会で達成できていない状況から現状への完成に近づきつつある証左であり、低成長そのものは歴史的必然ではないか。
・変化率を気にするのではなく、そもそも「どういう社会をつくりたいのか」ということを考える必要がある。
・「便利で快適な社会」=これまでの目標、から、「生きるに値する社会」に変えてゆく。
・「古いゲームが終わり、新しいゲームが始まる」
GDPという実は恣意的な指標で豊かさを評価すること自体が間違っている。



経済合理性という評価基準からは解けない問題の解決が求められている。
喜怒哀楽などの衝動による行動が称賛される。
インストルメンタルな思考/行動から、コンサマトリーな思考/行動様式への転換が必要

コンサマトリーという言葉は、あまり聞き慣れないし、まだ一般化していないけれども、山口周氏の影響力を考えると、2021年の終わりには、割と聴かれる単語になるんじゃないかと思う。多分、この本ベストセラーになると思うし。

「コンサマトリー」という言葉、僕も使ってみようと思う。
経済合理性でクールにビジネスを決めてゆく、のではなく、「「おもしろいからやってみる!」みたいな内発的な動機こそが、ビジネスにしても非ビジネスにしても重要だということ。まあ普遍的な原理だけど、この目で今までの人間の活動をもう一度俯瞰しなおすと、見えるものが変わってくるように思う。

面白い。
何度か読み直して咀嚼しなおそう。