オススメ度 100点
他人事だと思っていたら自分事だった度 150点
観光立国として経済発展している沖縄。
米軍基地がある見返りといっていいのか、数々の特別措置と手厚い経済援助で、社会インフラの整備は全国で最も進んでいる。
にもかかわらず、県民所得は全国最下位で、自殺率、重犯罪、DV、幼児虐待、いじめ、依存症、などは全国ダントツ。
この矛盾はなんなのか……という話。
私は沖縄には縁がないし、他人事感で読み始めた。
それこそ、嫌韓本や嫌中本のような感覚で。
沖縄経済には数々の補助金が注入されているが、そのために企業努力ができない。
どうしても保護経済的になる。
その場合は事業性よりも人間関係が、創造性よりも序列が、個性よりも協調性が経済合理的になる。
それが、もともと沖縄県人にあるウチナーンチュの同調体質に、過剰すぎるほどハマってしまった、というのが真相のようだ。
沖縄ではクラクションを鳴らすのがタブー、というところから話は始まる。ようするにすげー村社会なのだ。
その見える、もしくは見えない人間関係を忖度するあまりに自由思考が制限されている。現状維持が鉄則で、同調圧力が強く、出る杭の存在を許さない。
だから自分の考えを言わない(言えない)。特にNoをいうことには勇気がいるようだ。
その結果、他の地方では売れなくなった商品が今でも沖縄では定番商品として売れ続けるし、お酒を飲む、ご飯を食べる、タクシーを呼ぶのでさえ、知り合いの店を使わないと、あとで何を言われるかわからない。
要するに、市場経済ではなく超強力な縁故社会なのだ。
沖縄の学生はだから、議論もできず(自分で考える習慣がないのだ)、自分の考えを表出しようとはしない(そういう人は、緩やかに集団から排斥される)。
ジョージオーウェルの『1984』のビッグブラザーではなく、伝統的な『リトル・ピープル』社会、といってもいいのかも知れない。
* * *
うわぁきっつー、とか思って読んでいたら、後半1/3は、この人の過去に。
著者はもともとは沖縄関係ない人で、野村證券から出向し、ホテルの再建のために沖縄に赴任。そこで東京スタイルの、事業目標をたてて数値目標にむけて頑張るというやり方を始めたけれども、全くうまくいかなかった。
けれども、職員の声をしっかり聴いて、お互いに人間として認め合うような経営方針(「愛の経営!」)に変えると、嘘のように業績が上がった。
結局収益があがり優良物件となりすぎて、ホテルは売却され、方針に反対した著者は解雇されてしまう。
しかし、そこから生き方が変わったので、沖縄に定住し「愛の経営」をもって人の話をよく聴き、愛を持って人に接する仕事をやっているらしい。
沖縄は、やや極端な例だが、世界標準と比べると、日本は沖縄みたいなものだ。
沖縄の労働生産性は極端に低いが、日本の労働生産性も先進国の中では低い。
人間関係を気遣い、Yes/Noをはっきりいわず、曖昧にしがち。
強い個性を許容しない。
程度の差こそあれ、沖縄と同質である。
すなわち、沖縄の問題は、日本全体の問題でもあるのだ。確かにそうだ。*1
「沖縄の特殊な話ね!」と思って読みはじめたけど、これ、おらが街の話やん!他人事じゃない。
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処女作ということで、いろんな要素を盛り込みすぎで(本2-3冊分の内容だと思う)、主張のフォーカスがボケてしまってるようにも思ったが、どれも重要なメッセージなので仕方ないと思った。
田舎に住んでる人には少なからず刺さる内容だと思う。