半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『物語 ウクライナの歴史』

だめだ、複雑すぎる。

新書でウクライナについて紹介した本。刊行されたのは2001年くらい。ソ連崩壊してウクライナが独立国家として歩みだした頃に、ウクライナという国について概説した本、ということになる。

ウクライナは本当に難しい。現在のロシアの源流になる『キエフ・ルーシ公国』はキエフから始まったわけで、ロシアの歴史の源流はキエフにあるといえることもできるが、キエフ・ルーシ本国は早々に滅亡しているし、ハーリチ・ヴォルイニ公国、ポーランドリトアニアに占領されている時代も長い。現在のウクライナは「民族国家」として規定できるとは思うが、その民族国家が今の形で版図を持っている時代はほとんどない。

要するに、国単独で歴史を通観しても理解できず、周辺国との関係を常に俯瞰しながら実像を捉えるしかない。
この辺は、島国で版図が比較的安定している日本とは状況が全くことなる。
「システム論」的な理解が必要なんだと思われる。

と思いながら、ウクライナの歴史をもう一度みると、様々なことに気付かされる。
あとはロシアの歴史と地政学を踏まえると、ウクライナ地方がロシアの勢力圏外という現状が容認できない、というのもわかる。
ここがヨーロッパ勢力圏であると、モスクワまで近く、軍事的緊張は避けられないし、経済的にも、ウクライナ軽工業・重化学工業・製鉄などの面において、ロシアにおいて欠かせない一翼を担っているのも事実。
ただ、現在のロシア侵攻「力で屈服させる」ようなやり方で、今のウクライナを、ウクライナ国民を自分たちの勢力圏に引き戻すことができるのかどうか。

現在のロシア軍ウクライナ侵攻*1
ウクライナ情勢を語る識者はこのあたりを当然おさえて話をしていると思うのだけれど(そうすると、一面的に言い切れるようなものはないことがわかる)、いわゆる『TV芸人』みたいな文化人(誰とはいわないが都道府県首長とかしたことある人とか)の謂いが、今ひとつ現状に即していないのもそのせいだ。

民族的な出自、ユダヤ人、宗教、農村と都市部、様々な要素が混淆していて、簡単な理解はできない。
まあそれだけに面白いところだと思う。

少し古い小説だがフォーサイス『悪魔の選択』読んでみようかな…

参考:

halfboileddoc.hatenablog.com
世界システム論』という概念、聞いたことないかもしれませんけど、とりあえず私はこれでした。
そもそもシステムという言葉「システム=系」という概念は、わかっているようでわかっていない人が多いのではないかと思う。
「システム」は風俗店の料金体系のことではないのだ。

halfboileddoc.hatenablog.com
2008年ごろに刊行された本だが、2020年頃ロシア〜東欧間に緊張が高まるという予測がなされていたことには驚いた。
ただ、2010年に中国の体制が危機瀕し、中央政権体制は崩壊するというズッコケ予言もあるので、なんとも言えない。
現在のロシア・ウクライナの戦争や停戦交渉とかでも端々にでてくる、ポーランド・トルコはこの次の世代(2040年頃)の地域覇権国家になってくるらしいですよ。

halfboileddoc.hatenablog.com
めっちゃボリュームありますけど、第二次世界大戦をきちんと理解したければこれを。
センシティブな方は読んでて気分が悪くなることうけあい。

halfboileddoc.hatenablog.com
大祖国戦争」の主な舞台は、ウクライナだったりベラルーシだったりする。
ノーベル文学賞のコミカライズ。

*1:あくまで「戦争」ではなく特殊作戦、という『謂い』らしいが。