半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『死に山』

確か、「スゴ本」で紹介されていたんだと思う。

ソ連時代には不可解な事件がいくつかあるわけだけれども、その中の有名なものに「ディアトロフ峠事件」がある。
冬季のウラル山脈でトレッキングを行っている学生のパーティが行方不明になる。
捜索が行われ、結局全員が死体で発見されるのだけれども、彼らの死体には不可解な点がいくつもあった……
みたいな話。
それは冷戦まっただなか、1950年代の話。

この事件はソ連の中でも秘匿されていて、ソ連崩壊後に一般に知られるようになったけど、なにぶんソ連時代のことだからなあ…といろんな憶測を呼ぶが、ずいぶん昔のことで迷宮入り。

ソ連崩壊後久しい、2012年、アメリカのライターがこの事件に興味を持った。
彼はロシアの関係者と連絡をとり、当時の関係者で生きている人と実際に会って話をし、実際にディアトロフ峠にも出向く。
下された結論とは……。

みたいなドキュメント。
めっちゃ面白い。

ネタバレになるから言えないが、ソ連時代の、秘密主義であったり、不可解が日常にあった時代の時代感覚を丁寧に掘り起こしていたルポが、非常に面白かった。
でも、ディアトロフ一行は、当時のロシアで普通に生活していた大学生。残された写真には変顔をしてポーズ決めてる写真とかもあって、ああ今の普通の大学生であった一端も伺える…ってやつ。

なんというか、しみじみとした。
普通の大学生が変な死に方したので、「そんな死ぬわけない!」ということで色んな憶測を呼んだんだよな。

八甲田山のような人為的な事故ではないだけ、いいんじゃないかしら…と思う。
それにしても体感温度-20℃とか、考えるだにつらい。そんなとこよう行きませんわ。