値段の割にはさらっと読める。しかしやや涙ぐむ。
Web記事になっていたので興味があったけれども、出版された直後はKindle化されていなかったのでスルーしていたが、
Kindle化されたので読んでみた。
社会学的な考察および自らの体験記(手法としてはオートエスノグラフィ、という)を語る。
婚活は、さながら就職活動のように配偶者を探索してゆく活動として定義されている。
かつては伝統的な地縁社会とそれに伴う「お見合い」文化で適齢期の男女が結婚に漕ぎ着けていた時代があった。
そうではなくなってしまった時に、適齢期の男女が大量に未婚で残る状況に対する解決策として婚活が生み出された。らしい。
44歳の大学准教授の筆者は、婚活を行うと同時に、この社会的な現象を理解しようとする。
結果的には婚活はうまくいかないし、婚活の「本音と建前」に気づいてしまう。
それが「理解」ってことか。
辛すぎる結論……
要するに、男性と女性の間には著しい非対称が存在しており、婚活では男性は「選ばれる性」になっている。
女性が自らの情報はあまり開示せず、有利な条件の男性に群がる、という状況が現在の婚活の状況である、ということらしい。
おそらく、これは婚活市場以外の社会が、いくぶん弱まったとはいえ男尊女卑(男性優位社会)であることの写し鏡でもあるのかとは思う。
ただ、結局その建前で、女性も社会的に高い地位の男性と結婚できるチャンスはあるとはいえ、現実の確率としては高いとはいえず、結局のところ、婚活市場に払う場代の挙句、成功裏に終わる保証がない、という意味で、女性側にも厳しさはある。
いろいろ市場調査もさせてもらっているから、表だった批判は筆者はしていないが「こんなの間違ってる。全然ハッピーじゃない」と思っていて、
本書が提示する婚活戦略の先にあるのは、収入や職業、容姿などの条件を満たした上で恋愛感情を抱ける相手以外とは、結婚する必要性はないと男女共に判断する、ロマンティック・マリッジ・イデオロギーの終末としての非婚化であると筆者は考えている。
と難しそうな言い方でオブラートにくるんで結論づけている。
婚活という産業はおそらくだが「ひょっとしたら結婚できるかも」という淡い期待(男も女も)に付け入るビジネスやね、これは。現在の人口構成の歪みに対する補正なわけだからサステイナビリティも要求されない。
* * *
読んだ感想としては、オートエスノグラフィならではの生々しい気づきがあるなあと思うと同時に、
私好きな映画『八甲田山死の彷徨』ででてくるセリフ
「雪とはなんなのだ。冬山とはなんなのだ」
に、そんな悠長なこと言ってるんだから凍死しちゃうんだぜ、さっさと逃げないと。と思ったのと似た感慨を抱いた。
結婚に対するアフォリズムは沢山あるけれども、古来から結婚は合理的な選択の果てにあるものではない。なので明晰に婚活市場を理解しようとすることがそもそも間違いなんじゃないのかしら…そりゃ傷つくよな……とは思った。
個人的にはすごく筆者に好感を抱いたんですけれども、まあ僕既婚男子だし…お役にはたてない。
参考
halfboileddoc.hatenablog.com
ちょっと前に似たような本も読んでいましたね。