オススメ度 50点
なんで?感 100点
- 作者:チャプスキ,ジョゼフ
- 発売日: 2018/01/27
- メディア: 単行本
何に使われるかよくわからないけれど機能美に溢れた機械の部品を見ているかのようだった。
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第二次世界大戦の嚆矢となった、独ソによるポーランド併合。
ポーランド併合され、捕虜となったポーランド将校何千人かはソ連の収容所にて拘留される。
拘留された将校たちの中に、チャプスキというフランス留学もしていたインテリ将校がいた。
彼は拘留された収容所の中でマルセル・プルースト『失われた時を求めて』について講義を行った。
この本は、その講義について書かれたもの。
この前倉敷に行った時に蟲文庫にて購入。
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浮世離れしすぎていて、ピンとこない。
そもそも、不自由極まる収容所の中で、フランスの貴族文化の粋を描いた『失われた時を求めて』の講義、というのが、ぶっ飛んだ話。
ポーランドのインテリ層、文化の香りが高いな…
日本でいうと、インパール作戦とかで行軍中の兵士が『源氏物語』について語り合う、みたいなものか?
halfboileddoc.hatenablog.com
ただ『夜と霧』にもあるように、目先の身体的充足、衣食住だけを意識するよりも、高次の精神性を有した方が生き延びる可能性が高いのは間違いないらしい。
その意味ではプルーストの講義というのは、精神性という点では極北なのかもしれない。
それにしてもプルーストは高尚すぎないか。
* * *
独ソに侵略され、自分たちの国はすりつぶされた亡国の将校たちが、失意の中、何を思って収容所で生き抜いたのか。
その時点、その瞬間には、世界の誰にも必要とされていない集団である。
いつ虐殺されても文句も言えない。*1
失意と絶望に満ちていても不思議ではない。
しかし、その中に咲いた徒花かのようなプルースト。
まるで小川洋子の小説のような話だと思った。
世界は意外性に満ちており、無意味性なものなどない。
名も無い草葉の裏に張り付いた害虫も、仔細に眺めてみれば、その精緻さに胸をうたれるはずだ。
世界はおぞましく、かつ美しい。
ちなみに、死ぬまでにプルーストは読みたいのだけれど、学生の時に読む機会を逃して以来、
専門職・ビジネスマンとして突っ走ってきたために、立ち止まってこういう本を読む時間がないまま今に至っている。
おそらく死病に囚われ、病床で読むか、何かの折に縛につき、獄中で読むか、くらいしか可能性がない。
どちらにしろ「どうして早く読まなかったんだろう」と後悔の涙を流すのだろう。
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複雑な世界のタペストリーの中で、どこともつながっていない特異点。
それが『収容所のプルースト』だと思う。
自分には『収容所のプルースト』のような存在があるだろうか?