半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『世界が土曜の夜の夢なら〜ヤンキーと精神分析』

「ヤンキー」とは何か。日本においてヤンキーという文化はどのような効用があるのか。
ということを滔滔と論じている本。
少し前に入手していたけど、Kindle積読になっていたもの。

我々の文化には「ヤンキー」的価値観が通奏低音のように存在している。
ヤンキー的美学はマーケット的な成功につながりやすい。不良でもない一般人にも「ヤンキー的なもの」への憧れが存在するからだ。「不良文化」とは異なる文脈でわれわれの日常に潜在する「ヤンキー性」をはじめて指摘したのはナンシー関*1

以下、備忘録というか、メモ。
「おたく」という文化、「ヤンキー」という水と油のような存在。
男女の印象の違い=男性は所有原理、女性は関係原理
ヤンキーファッションとは、ファンシー性(ファーとか)バッドセンスなど

オタクの「引用」を会話に反映させる有様と、ギャルやヤンキーはそうした「引用」の身振りとは一切無縁=オタク語のエクリチュール(書き言葉)に対してギャル語はパロール話し言葉)。

「気合」とは?アゲ
ヤンキー系バンドに共通するのはヒット曲や佳曲は数あれど、音楽シーンへの影響力は比較的弱い
ヤンキー系バンド、もしくはメディアにでるヤンキーは「パロディ」 メタ視点。スタイル先行型
リアルなヤンキーファンションも、「先輩」に舐められないように「攻撃

ヤンキーの本質とはキャラクター性か。
坂本竜馬白洲次郎はヤンキー文化に属する存在なんじゃないか。
現代でいえば、キムタクの人気のあり方が、ヤンキー文化を理解しやすい。

* * *

斎藤環の主張であり、これが事実、というわけではないが、かなり腑に落ちる論考であるなと思った。
この「ヤンキー論」は、日本の社会の説明に、いろいろ敷衍することができる。

例えば、なぜ看護師にヤンキーが多いのか。(看護の本質は母性であり関係原理であるから)
ジャズがなぜ日本でメジャーたりえないのか(ジャズにはヤンキー要素がない。例えば、トロンボーン・ショーティーとかはどちらかというとメジャー人気を博するもので、こういう形を狙っていかないと、日本でもジャズはメジャー化しないと思う)

*1:ナンシー関が亡くなってもう20年にもなるなあ…