半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

村上春樹『職業としての小説家』

我々は小説家ではないが、小説家が小説家のありようについて語るというのは、
結局自分の職業について語ること、と普遍化できると思う。

以前、村上春樹が趣味のランニングとマラソンについて書いた、「走ることについて語るときに僕の語ること」

は、ジョギングについて語っているように見せかけて、気がつくと、個人史や仕事についての哲学みたいなものを語っている…みたいな本だった。

今回のこれはもうちょっとシンプルに小説家について、また小説家のありようについて語っている。
とはいえ、村上春樹の小説家としてのライフスタイルはやや他の小説家に比べて特殊ではあるので、小説家になるための一般論であるとは言い難い。

私はいわゆる『ハルキスト』なので、あちこちのエッセイや対談などで話している内容は相当量読んでいる。
今までの彼のアイデアを「小説家」というお題でまとめ直した内容であり、その意味で新奇さはなかった。

しかしクリエイターとして、創作を行う人間の心構えや、人としてのあり方、という視点では、ずいぶん参考になるようなものが散りばめられていたように思う。
私は趣味として音楽を演奏し、ジャズのアドリブソロを弾いたりする。
しかし所詮は日曜大工的なものではあり「芸術活動」といえるようなものでもない。
しかしそうはいっても、創作の一つであり、村上氏のいうクリエイターとしての生活のあり方、という描写には心惹かれるものが多かった。

後味のよい読後感。いかにも村上春樹の本って感じである。
ただ、この文庫の表紙「静かなるドン」にでてくる登場人物に見えてくるんだよな。なんなんすかね。ライティングですかね。

参考

halfboileddoc.hatenablog.com

halfboileddoc.hatenablog.com

小説家の裏話的なエッセイは結構読んでいるけど、意外にこのBlogにはアップしていないみたいですね。
スティーブン・キングのこの小説を書くことに対するエッセイは、読み物としても迫力あり。山崎豊子女史の本もおもしろかった。

あとは、司馬遼太郎とかか。