半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

カフネ

何かで勧められて読んだ。

最愛の弟が急死した。29歳の誕生日を祝ったばかりだった。姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになる。無愛想なせつなに憤る薫子だったが、疲労がたたりその場で倒れてしまう。
実は離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていた薫子。家まで送り届けてくれたせつなに振る舞われたのは、それまでの彼女の態度からは想像もしなかったような優しい手料理だった。久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく。そんな薫子にせつなは家事代行サービス会社『カフネ』の仕事を手伝わないかと提案する。

本屋大賞2025だけあって、とても面白い小説。
月並みに言えば、死と破綻からの再生のストーリーということになるだろう。
主人公の薫子は、物語の導入部では、弟が謎の死を迎え、夫には離婚を切り出され別居し、家はゴミ屋敷でアルコールに耽溺する絶望した状況。
長女できっちりした人格だが融通のきかない性格の方がボタンの掛け違いで生活が破綻する様は、確かにあるかもしれない。
病気の描かれ方や、美味しそうな食べ物、家族問題の描写など、取材や考証チェックをしているんだろうというリアリティがあった。

とはいえ、プロットそのものは割と複雑で、蓋然性が高いわけではない。リアリティというよりはアーバンファンタジー
しかし、茫漠としたアスファルトジャングルを孤独感を持って生きる僕らはこういう運命的出逢いがないもんだろうかと夢見ているわけで、
うーん、いい話……ということはそりゃ売れるわなあ、と汚い心で感じ入った。

いや、いい話だと思いますよ。
それによく出来てる。
ただ、自分にはこんな綺麗な話に滂沱の涙を流す資格もないなあと思ったりもした。
自分は、人生のそこかしこで多くの人を傷つけたし、傷つけられもしたが、何事もなかったようにのうのうと生きてる。薫子やせつなの不器用一直線の生き方は眩しすぎるなあと思ったりもした。