半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

話題のおこづかいホラー漫画『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』

オススメ度 100点
なんでジョン・トラボルタなん?度 100点

最近 Twitterで話題になっている、ステーション・バー。
ステーション・バーについてはこのNoteの記事が詳しい。
note.com

手塚治虫物語や、難聴などを取り上げる異彩の漫画家吉本浩二の作品。
45歳(私と同い年だ)の漫画家。毎月のおこずかい21000。

この21000のお小遣いのやりくりを、実話で見せてゆくという、かなりあけすけな身につまされる漫画である。
残り5日で351円……さあ、どう使うか?
節約生活の中で漫画を制作する。集中するために自宅を離れるが、お金を節約するため、平日のイオンのフードコートで漫画を描く。
合間に、ストレス解消のおやつや飲み物を買う。コーヒー、250mlで38円?いや1 literで84円…
シュークリーム半額 54円…買うか!いや、しかし… いや我慢我慢。駄菓子コーナー、4個で100円!!

みたいな、心の揺れ動きを克明に描写。
いや、わかる、わかるよ。その感じ笑。

作者だけでなく、周りの人々のこづかい怪人達にも聞き込みを続け、世界は広がる。
月2万円で昼食代まで出す男。Pontaを最大限やりくりして価値の最大化をはかる男。
乏しいこづかいの中で趣味のバイクを手放さない男(25年もののバイクなので修理代もかなりかかるが、できる限り自力で直すらしい。売ればいくばくかの金になるかもしれないが、20万で中古バイクを買おうと思ったら、一年間こづかいなし…それは二度とバイクは持てないかもしれない…)
ちなみに作者吉本の妻は7000円でやりくりしている。(その様子も壮絶)。

共通して言えるのは、みな我慢一本槍ではなく、緊張と緩和といいますか、締めるべきところと緩めるべきところを作っていて、月に一度のささやかな贅沢タイムは設けていて、精神の安定をはかっているところ。メリハリがないとさすがにもたないと思う。

今私はそれなりにお金を稼いでいるので、ここまでの節約生活にはあまり共感できない。
お金がなかったら、余分に働いたらええんちゃう?とか思ったりもするが、それは人手不足とアルバイトが充実している医療というフィールドにいるから、そういう考え方ができるだけなんだと思う。
一生懸命働いても、お金がやすやすと増えない生活も、そりゃある。
近年消費税も高くなり、社会保障費や年金などもどんどん高くなり、手取りはどんどん下がっているしな。これに年寄りの入院・介護とか重なったら、生活が破綻する。我々の世代は、そういう薄氷の上を歩いている。

節約という一般的な事象も、知恵を働かせることでクリエイティブにもなる、ということなのだと思う。
それは悪いことではない。
ただ、「節約」に頭を使うのではなく、頭を働かす部分を、収入を増やすとか別のベクトルに国全体で向けられなかったのかという風に思うのだ。清貧では、経済は発展しないのも確かなのだし。

ちなみに、作者は作中テンションが上がると、踊り出す。多分サタデー・ナイト・フィーバーっぽく。
一部マイケルジャクソンも混ざっている。
これがもう一捻り狂気をふりかけていて、なかなかよい。
いいよお。45歳。僕と同い年。
世代だよね。

読み味としては、これに少しだけ似てるかも。