半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『世界観をつくる 「感性x知性」の仕事術』

オススメ度 80点
タイトルですべて言い表わせている度 100点

山口周氏の本は安定していてはずれがない。
halfboileddoc.hatenablog.com

この本は水野学、山口周の対談。
どちらかといえば山口周が聞き役にまわり、水野学氏のフィールドであるクリエイティブ・ディレクターについてざっくりと概括している本。

VUCA=つまり変動が大きく先の読めない時代(そういえば、このコロナ禍だってそうだ)に、ビジネスで成功するためには、今あるビジネス手法ではなく、美意識とでもいえる思考規範を涵養することが大事なのではないか、とは、山口周氏は以前から言っていたが、この辺が、クリエイティブ・ディレクターである水野学の手法と重ね合わせ、こういう考え方を「世界観」というキーワードで串刺しにするとわかりやすいのではないか、という風に話はすすむ。

・市場規模の大きな産業ほど、マズローの欲求五段階説の下位の問題にアドレスしている。そして現在は市場の機能が欲求五段階の上位にシフトしている。(したがって市場がシュリンクしていると考えるのは間違いということなのだろうか)
・ビジョンを説明するのに文字だけではうまく伝わらない。文字は概念を記述するが、概念は必ず過去の反映になるから。
・現代は「正解の過剰化」。みなが正解に行きついてしまい、差別化ができない。逆に不便なものが注目される傾向もある。
・「役に立つ」ではなく「意味がある」の方にシフトしないといけない。
・役に立つビジネスはアスリート的になる。一方「意味がある」の方向に行けば仕事は確実に楽しくなる。

話の眼目は上のようなものだが、実際に水野氏の作品経歴やクリエイティブ・ディレクションのエピソードなどが楽しく語られ、飽きない。この辺は山口氏のエスコートのうまさだろうか。

仕事の考え方、価値観の創出について、見直しを迫られるなあ。
医療って、こういうクリエイティブ・ディレクションとは最も程遠い領域ではあるけど、実は、天然素材としてナラティブの種に溢れているポテンシャルの高い領域でもある。なにか考えつけばいいのだが。