半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『鬼滅の刃』最終巻に来て少年漫画であることを思い出させてくれた。

オススメ度99点
アツい度 1000点

鬼滅の刃』堂々の完結である。
(ネタバレ的なことは書いてはいませんが、一切の事前情報を廃して読みたい人は読まないでください)

敵の首魁、鬼舞辻無惨との最後の戦いはなかなか長く、将棋というよりはチェスのような、登場人物を一方的にすり減らしてゆくような凄惨な戦いではあった。
コミックスの次巻が待ち遠しく、12/4の発売、Kindleでは0:00になると配信されるので深夜さっそく読んでみた。

しかしまさかここまでの国民的現象になる漫画に化けるとは思わなかったな。

halfboileddoc.hatenablog.com

すごくきれいに話がまとまっていた。

最終話は連載時に話題になっていたが、いきなり現代に舞台が変わる。
その時は今ひとつピンと来なかったが、続けて読むとなんとなく得心がいった。

あの最終話は、少年漫画としては必要だよなあ、と思った。
大人として、もうちょっとリアリティのあるダークファンタジーとしてはそこは必ずしも要らないのかもしれない。
いささか子供っぽい後日譚のようにも思えるのだが、だがこのお話は、少年漫画なのである。
少年漫画が少年漫画らしい矜持をもって描いた最終話と思うと、しっくりと胸におさまる。
逆にあの最終話があってこそ、1巻から23巻までのお話すべては少年漫画だったのだよなあと考えなおさせてくれたようにさえ思う。
大人を対象にしているのではない、ということを、ここまで国民的大ヒットになった今、改めていいたい。
*1

胸激アツな余韻を残してすっと終わったのはジャンプ史上まれにみる大英断だったと思う。
物語として、とても納得のゆく着地だったと思うのだ。

こんな右肩上がりの熱狂のなかできちんとストーリーを終わらせられるんだ…とかなりびっくりした*2

* * *

胸算用をすればそれによる機会損失は100億ではきかないかもしれないけど、物語を物語の強度を保ったまま終わらせるのは作者の権利だ。
煮込み料理も、煮込み続けたら崩れてグズグズになってしまう。
ほどよいタイミングで物語を終わらせることは、案外難しい。
過去どれほどの名作が、煮込まれ続けて蛇足を産み続けてきたことだろうか。

全23巻は決して短いとは言えないかもしれないが、スラムダンクが31巻だから、ここまでの人気作品にしてはやっぱり短い。
一気に駆け抜けた名作として、人々の記憶に残るだろう。

*1:主人公を初めとした登場人物も、ハイティーンであり、極めて狭い人間関係の中で生活している。その後の「大人」の生活は一切描かれていないけれど、皆がその当時の馴染と添い遂げるわけでもあるまい…と大人なら考えてしまうけれど、少年漫画の純真さと考えるなら許せてしまうように思うのだ。

*2:作者の意向も大きかったようだが