半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『Z世代』

オススメ度 80点
「ゆとり」と「Z世代」は違うんだ度 100点

私は団塊ジュニア世代。いわゆる氷河期世代ね。ロスジェネの一番最初かもしれない。

Z世代は1990年代中盤以降に生まれた世代。今30歳以下の人たちということになる。
ちなみにゆとり世代は 1987〜1995年生まれだそうだ。

おじさんになった今、若者についてはざっくりと「若いやつ」とひとくくりにするけど、それはだいぶ違うそうで。
そりゃあ僕らも、バブル世代とひとくくりにされたら、結構腹が立つかもしれんし。

アメリカではZ世代は他の世代に比べて多いが、日本ではZ世代はあまり人口は多くはない。
Z世代は、年長世代から、Youtubeや他のSNS、Tik tokなどに時間を費やすからTVを観ない=すなわちマーケットにならない、とされて、TVマーケティングではあまり顧みられていなかった。
しかし、団塊世代を始めとする高齢者世代は貯蓄や所得の割には消費性向が強くない(そもそも老人は金を使う必要もないし、老後に備えるために浪費を控える傾向がある)ことにTV業界は気づいた。だから、TVマーケティングは現役世代を重視するように舵をきっているそうな。お笑いでは第7世代がもてはやされているのもそのためだそうだ。

情報感度の高いZ世代に取り上げられることが今やマーケット業界では急務、ということだ。
人数はそれほど多くはないが、年長世代は若者であるZ世代の顔色をうかがうようにマーケッティングされている。

これって、ゆとり世代の扱われ方とだいぶ違う(ゆとり世代は不況の中割と冷や飯を食った)ため、人格形成に多大な影響を受けている(自己肯定感は高い)。
ゆとり世代リーマンショック)にくらべると、Z世代(アベノミクス)の方が、楽天的で、同調圧力から開放されている。

スモールライフのゆとり世代、チル&ミーのZ世代。
Z世代は自己肯定感が比較的高く、自意識が高い。
自己承認欲求・発信欲求が高くデジタルネイティブでもあるため、SNSをうまく使いこなしている。

Z世代を、例えば団塊ジュニア世代のような昭和的な価値観で取り扱ってもいけないし、また「ゆとり世代」のような自己肯定感の低さも大人しさもないため、Z世代を取り扱うには、やはりそれを意識したような対人関係が必要であると思われる。

新入社員が入ってきたら、新人教育とかを行うけれども「ゆとり世代」と同じように接していたら、失敗する可能性は多分にある。なので、若い人と接する人は、ちょっと気をつけたほうがよさそうだ。

余談だが、作者の原田曜平さんは、最近雑誌やメディアでよく見ますね。

最近お父さんがコロナワクチンの副反応(かどうか確定はできないが、一気に状態が悪化したカスケードの発端にワクチン接種による発熱があったのは間違いがなさそうだ)で重症化するということで話題になっている人。アメリカ・イスラエル・ヨーロッパのワクチン実績をみる限り、全体として新型コロナウイルスワクチンを打たないということにはならないとは思うが、ワクチンは確率は低いものの「善意が裏目にでる」みたいな副反応がやっぱりゼロではないのも事実である。

『岳』『岳人列伝』

最近 山岳ものを続けて読んでいる。
halfboileddoc.hatenablog.com

その時の予告どおり、『Blue Giant』でもお世話になっている石塚真一の『岳』を全巻読み直してみた(連載当時とびとびに読んでいたような気がする)

(以前のブログはこれ)
halfboileddoc.hatenablog.com

日本の山岳救助ボランティアをやっている不思議な青年 島崎三歩とその周りの人間模様。

まあ、人が死ぬ死ぬ。

それにしてもこの主人公は、登山の類まれな能力を持っているけれども、一般人としての生活能力はゼロ。衣食住すべて、平地では暮らせないレベルで、本当に人生のすべてを山に賭けているような人で、メンタリティとしても常人のところが全くない。
要するに「いっちゃっている人」。

そのいっちゃってる感は、Blue Giantの主人公「宮本大」と重なるところが大きい。

この作者は、こういうタイプのいっちゃっている人がステレオタイプにあるのだろうと思う。

そういう作者で思いつくのは、曽田正人だ。
シャカリキ!』『め組の大吾』『カペタ』『昴』

全員、普通の人の生活を完全になげうって、一つのものにリソースを注ぎまくっている。
その結果の異能。やばい人。

異能と引き換えにふつーの人間の生活を捨てているような人を、しかもそれを主人公に据えるという点で、
この二人は似ている(他にいるかな?)
この二人の作者人格形成期に眼前にした、一つのことに賭けている人はどんな人だったんだろうな
……とその見えない人に思いを馳せたりする。


* * *

私は山の経験はあまりない。基本的にはインドアの地霊小人の人間なのだ。

おとなになってから、自転車の転落と交通事故で骨折をしたことはある。
落下の怪我というのは想像するだけでおそろしい。
落下の衝撃で、体の中で何かが損傷するグシャっという音がきっと聞こえるんだろうな。

だからこその、頂上の景色は格別なのだろうが。

村上もとかの若い頃の、山岳マンガ。K2とかローツェとか、でてくる山は結構似ているものだ。
連作短編なのであるが、これもまた人が死ぬ死ぬ。

『セルフトークマネジメントのすすめ』

オススメ 100点

セルフトークというのは、我々が行動する際に心の中で自分に発している自分の中の言葉。
マンガでいえば、吹き出しが泡状になってるやつね。

セルフトークをうまくコントロールすることができれば(たとえばアンガーコントロールとかもそう)、緊張してあがってしまうとかも起こりにくいなど、自分の非合理な行動を抑制できる。
それだけではなく、ここ一番というところで最大のパフォーマンスを発揮することができる。

セルフトークには、ネガティブな自問自答「セルフトークA」(感情の発露)と前向きに自分の力を最大限に発揮する「セルフトークB」(理性から発せられる)がある。セルフトークAをできるだけ減らし、セルフトークBをできるだけ増やしていくというのが、うまく自分をコントロールするコツである。と。

・アンガーマネジメント
・ストレスマネジメント
・スポーツなどにおけるメンタルトレーニン
・瞑想
・マインドフルネス
・ゾーンとフロー
 などにも通じる話だが、セルフトークという共通概念で、結構いろんなことを説明することが可能かも、と思った。

* * *

たとえば、エヴァンゲリオンで主人公「碇シンジ」には
「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ……」という有名なセリフがある。

これは、パフォーマンスを引き出す点ではあまりよろしくない(言葉がネガティブ)「セルフトークA」に分類されるやつだ。

望ましいセルフトークBとしては
「僕は逃げない」
「みんなのために、僕は戦うんだ」
とかになるんだろうな。

ま、エヴァンゲリオンは内発的動機が非常に複雑な思春期の少年が人類のために戦うという葛藤と矛盾がポイントなので、仕方ないけどね。

ガンダム」シリーズの富野由悠季も、セルフトークを随所に劇中の台詞に組み入れていると思う。

* * *

マンガはセルフトークの宝庫

多分、このセルフトークマネジメントは結構便利な概念だけれど、日本の誇る漫画文化は、このセルフトークをかなり可視化する効用がそもそもあるような気がする。

なので漫画読み用にはセルフトークの概念は理解しやすいし、セルフトークマネジメントそのものも、漫画の実例を用いると容易かもしれない。

スポーツ系漫画、例えばベイビーステップの主人公の心の動きは、セルフトークマネジメントそのものだと思うので「『ベイビーステップ』で学ぶ、セルフトークマネジメント」という本は、多分まあまあ売れるんじゃないかな。

(これもBlogに書き残さなかったか…)

あと、『鬼滅の刃』なんてめちゃわかりやすいセルフトークのオンパレード。
主人公の炭治郎はメンタルも安定しており、セルフトークAとセルフトークBのバランスが抜群。善逸とかは、むしろセルフトークAの代表的な人物だろう。あ、これは売れる本ができちゃうな!多分一年以内に鬼滅の刃を例にしたセルフトークマネジメントの本が出ると予想する。

『「闘争」としてのサービス』

オススメ度 100点
ユーザビリティー 0点
深遠……度 200点

『京大変人講座』で興味を持ったので購入。
halfboileddoc.hatenablog.com


サービスとは何か?

病院や診療所など、医療においても「サービス」は重要なファクターである。
顧客満足度をあげる、という観点で、サービス・接遇を改善しなきゃ、みたいな話はよくある。

しかし、そもそもサービスってなんだ?
原点に帰って考察することは案外ない。

著者は「サービスとは闘いである」というテーゼを掲げる。
これは現在の一般的な「サービス」の受け止められ方とは正反対のテーゼ。
なぜそういうかというと、既存の理論では説明がつかない現象があるから。

たとえば、寿司屋の接客の不可解さ。
老舗の寿司屋では、あくまで既存の「接遇」からかけ離れた客と主人との応酬がある。
寿司屋で通が客の場合は、極端に説明を削ぎ落としたやりとりを店主も客も行う。
むしろ初心者にはわからない提案で店主は客を「値踏み」さえする。
こんなの「接遇」という観点では大減点なはずだが、そういう寿司屋のコードに客は望んで従うのである。

また、イタリア料理店のビストロと、フランス料理店。フランス料理の方が単価も高く顧客満足度も高いため高級なサービスとされる。
が、フランス料理店の方が、店員が客にサーブしている時間も店員が客に向ける笑顔も段違いに少ない(学術研究なのでちゃんと観測結果が示される)。

それはなぜか?
ということをこの本では考察している。

サービスの関係性は常に矛盾をはらみ、弁証法的に媒介されている。
サービスは、単に歓待・もてなし・気づかいという表面的な事象だけではない。
もてなす側と、もてなされる側は、ある種の敵対関係にある。敵対は相手の否定であり、相手からの否定であるため、自分のアイデンティティが全面的に不安定化するとともに、相手のアイデンティティも不安定化する。敵対はアイデンティティを流動化し、社会という全体性を不安定なものとする。

敵対関係を通じて初めてサービスの関係に不安定性が生じ、アイデンティティが流動化する。逆にサービスを通じてアイデンティティが構築される過程が生まれる。

サービスというものを、顧客が受け身になって受け取る金銭の対価として捉えてはいけないということで、むしろサービスの捉え方を新しくすることで、関係性の中で生まれる隷属から開放しうるのではないか。

みたいな内容。

かつてない深さで、サービスについての考察がなされている。
大変おもしろい。
のだが、これはちょっと精読して僕なりの答えを出さないといけない類の本だ。
ちょっと読んで、めっちゃわかった!というタイプではなく、心の中に新たなOSをインストールしたような気分だ。

多分自分なりの答えが出るのは数カ月後か、数年後か、それとも考え続けられないか。

唯一けちをつけたいのは電子書籍としてのUI。
3000円近くする本なのに、PDFをそのまま電子書籍化したので、テキストの検索も出来ないし、マーキングもハイライトも引けない。そこだけは大減点。付箋つけたいところがいっぱいあるのに……

『歩兵の本領』

オススメ度 100点

鉄道員(ぽっぽや)』『プリズンズ・ホテル』で有名な浅田次郎自衛隊小説。
浅田次郎はかつて高校卒業後自衛隊に入隊していたらしい。
青春時代を振り返って駐屯地での人間模様を活写したもの。

この前とりあげた、これとかもそうだけど、
近頃は「組織を離れてフリーに生きよう」なんてライフスタイルが新しい生活様式として称揚される昨今だ。

だが、農耕生活民、ムラ社会の子孫であるぼくらは、どこまで行っても「組織」からは離れられない。
昭和の時代から今に至るまで、日本社会の中核は、男子ばかりで構成されるホモソーシャルな男性社会で構成されている。
そこには普遍性がある。

なので「歩兵の本領」は、むしろサラリーマン小説として読み替えることもできる。
読み味としては、『半沢直樹』シリーズで有名な池井戸潤の銀行員を舞台とした一連の小説、あとは藤沢周平の武士シリーズ(海坂藩を舞台とした秘剣シリーズとかの閉塞感)と同じ匂いがするのである。

連作短編で、市ヶ谷駐屯地歩兵部隊のそれぞれの登場人物の事情が語られる。
めちゃめちゃリアリティがあるが、それは浅田次郎の青春時代にも重なるところが大きいからだろう。
これは多少フェイクを交えているものの、多分実話なのだ。


『越年歩哨』『歩兵の本領』という話が身につまされた。
上役(加賀士長)が、年越しの弾薬庫の歩哨(火気厳禁で寝ずの番なので誰もやりたがらない)に、主人公の赤間と、自分よりも自衛隊歴が長く喧嘩っ早い和田士長を当てた。主人公の赤間は不運を嘆くが、同時になぜ加賀士長は反発必至の和田士長を当番に当てたのか……

ま、こういうことはいちいち体で覚えていくほかはないんだが、ひとつだけヒントを教えておいてやろう。自衛隊には二種類の階級がある。ひとつは俺たちが腕や襟につけている階級章だ。いわゆる星の数ってやつさ。もう一つは兵隊としての飯(メンコ)の数。つまりだな、特別勤務や演習や、むろん戦場でも同じだけど、階級の序列に従って行動しなければ集団の力は発揮できない。だが、営内生活では別の序列がある。自衛隊の飯をどれくらい食っているかというキャリアさ。このふたつは矛盾するよな。俺たちは日ごろからこの矛盾をうまく埋め合わせて、いざというときにはきちんと戦争をしなきゃならないんだ。

和田士長が反発してくることは当然予想していた。
和田士長は加賀士長を呼び出し、腹いせに裏で殴りつける。
が、和田士長の場合は殴ってスッキリすれば禍根を引きずるタイプではないため、自分が殴られることを折込済みで思慮深い加賀士長は和田士長を当番に指名したのだった。

『歩兵の本領』で除隊する主人公と、それを執拗に止める坂崎一曹の間にも、そうした、辞令と、それとは別の感情の動きを輔弼するような出来事が描かれる。

綺麗事だけでは組織は運営できない。

現在自院の組織ではトップの立場にいるけれど、常勤医師としては最年少である自分にはその感覚はよくわかる。
組織の中で人を動かすというのには、ここまでの人間の矛盾に向き合わないといけないのか……。

かつての日本的ムラ社会グローバル・スタンダードの影響をうけて、こういう昭和の閉鎖的な組織は減っている。
しかしその分年功序列も薄れており、自分よりも年上の社員に指示しなければいけない年少の上司は珍しくない。
そういう人こそ、その息詰まるようなこの小説を読むことをオススメする。上司である自分はグローバルな価値観で動いているかもしれないが、指示される部下はこの小説で描かれている昭和の価値観で動いていることは十分ありうる。

『コンサル一年目が学ぶこと』 

これも少し前、Kindle Unlimitedで。

「仕事ができる人」の仕事術、といいますか。

・職業・業界を問わず15年後にも通用する普遍的なスキル
・社会人一年目で学ぶべき基礎的なレベル
を紹介してくれるという本。

その1:話す技術(コンサルっぽいね)。コミュニケーションの方法
その2:思考術:問題解決・思考術。基礎的な考え方。仮説思考。
その3:デスクワーク術。仕事のすすめ方。
その4:ビジネスマインド。ビジネスへの取り組み方、コミットメント・フォロワーシップなど

・PREPの型に従って話す
・会議は結論から逆算からして話す
・質問にはイエス・ノーで率直に
・言いにくくても、間違っているなら間違っていると言う。社内で駆け引きをいわない
・英語より数字の方がよほど世界共通言語
・論理さえ通っていたら上の立場の人も耳を貸すが、曖昧なことを感情で説得しようとする若造は信頼されない。
・無言は理解ではなく無理解のサイン(リアクションがないのは大問題)
・作業の全体像を示す
・ロジックツリー・構造化などの一連のロジカルシンキング・問題解決の手順
・ストーリーラインを描いてリサーチする(仮説→検証→フィードバック)
・ビジネス能力は情報量ではなく考えること。自分の意見をもつこと
・議事録書きから文書作成は始まる
・決まったことと決まらなかったことをきちんと書いておく
・パワーポイントはシンプルに
・コンサル流読書術
・会議で発言しない人の価値はゼロ
・プロフェッショナルな態度で休憩をとる
・スピードと質を両立させる
・今の自分の実力はわかったうえで、しかしそれでも顧客のニーズに答えること

仕事術としては、あまり具体的ではないけど、ポイントを押さえていて、たしかに、入門編としてちょうどいい。
ただ、コンサルタントを目指すにはこれで満足していては、もう古いかもしれない。マジのコンサルになるには、このへんは当たり前にこなした上で、道なき道を歩んで自分なりの付加価値をつける必要はあるような気はする。
逆に、中小企業の新入社員〜5年目くらいまでで、ここに書いてある内容をきちんとこなすことができたら、まわりから図抜けた存在にはなれるような気がする。ちょいと煙たがれられるかもしれないが。

Kindle Unlimitedになっている本は、たしかに入門編としてちょうどいい本が多い気がするな。

新人から5年目向けのビジネス仕事術本。コミュニケーションの大切さを説くが、いわゆる人間関係の本ではなく、齟齬なく伝えるための伝達術。リーダーシップにも触れられているが、そういう面はあまり力点が高くはない。あくまで眼前の仕事にどう取り組むかという基本的な素養を書いている本と言えよう。

参考:

以前書いた「GAFA部長シリーズ」は読み味としてはかなり近い。わかりやすさも。
halfboileddoc.hatenablog.com

新人仕事術という面ではこれもいいかも。
halfboileddoc.hatenablog.com

これもターゲットはまあまあ近いかなと思う。
halfboileddoc.hatenablog.com

これは、新人というか若者に向けた話。
halfboileddoc.hatenablog.com

『金持ちフリーランスと貧乏サラリーマン』

オススメ 90点
わかりやすい度 100点

Kindle Unlimitedにて。

簡単にいうと、サラリーマンよりもフリーランス個人事業主の方が稼げますよ、という話。

・資本主義とは「お金がすべて」の世界
・資本主義の世界ではお金持ちになると悠々と生きやすい
・サラリーマンはお金持ちになりにくい
・サラリーマンが稼げないのは「使えない社員」の給与を「使える社員」が賄っているから。(労働基準法によって雇用が保証されている。クビはできないようになっている。そういう「使えない社員」を雇い続けるリスクは、「従業員の平均給与を下げる」ことでヘッジしている)
→つまり「仕事のできる中堅サラリーマン」は、仕事のできないサラリーマンの生産性の低さをカバーして、抑えられた給与で働くことになる。

感想としては、至極まっとうなことを言うてはるな、と思った。
イマドキのビジネス本を読むと、こういうことは何度も語られているし、実際会社というものを運営して思うのもそうだ。
平均以上の能力がある人(トップ5%でなくてトップ35%で大丈夫)は、フリーならもっと稼げる可能性は十分あると思う。会社としても、社保とか、研修などの成長費用を払わなくていいのでメリットはかなりある。
仕事の内製化が当たり前な風土だと、こういうフリーランスに仕事を頼みにくいので、会社も、業務の外出しを積極的にやって、生産性をあげてゆく必要はある。

こういう本はアジテーションでもあるわけで、現在の前提条件が崩れた場合に、フリーランスにしわ寄せがいく事態というのもまああり得る。そこは注意が必要だ。

たとえば、スマートグリッドとか。
電力網自由化で、電気料金が安くなるということで切り替えた人もいるとは思うが、あれは今後も電力供給が潤沢にあるという前提で成立していた。現在夏季・冬季のピーク時の電力供給はかなり不安定になっているので、そうなると市場原理により、電気料金はむしろ超割高になってしまった。

フリーランスの場合は明らかに手残りが増えるのは確か。
だが、たとえば今回のコロナのような予測不能な事態が発生した場合の安全マージンは明らかに少ない。
社会的な変化だけでなく、例えば一生の中で勤労世代の間、自分が全く病気に倒れない可能性はないとはいえない。
フリーランスの場合、そういう事態に対して、極めて脆弱ではあるのは確かだ。
会社は平準化装置でもあるわけだから。

ま、しかし、そういうアクシデントの可能性は高くはないので、社会全体の生産性を高めるためにチャレンジしてみてもいいとは思う。


以下、備忘録:
・サラリーマンよりもフリーランスの方が節税メリットが高い。
・会社員は狭いコミュニティで生きているうちに世の中から大きく取り残されるおそれがある。
・その割に、サラリーマンは、負わされる責任は大きい。

・頑張る人を揶揄する風潮が、日本における貧乏人の数を増幅させたのではないか
・「金の切れ目が縁の切れ目」→「縁が切れなければお金も切れない」
・影響力は最強の資産
・人として問題のあるダメダメフリーランスは意外に多い→中堅サラリーマンであれば誰でも「サラリーマン時代と同じ働き方」を続けるだけで無双できる
フリーランスからサラリーマンの戻ることも可能(その経験は成長につながる)
SNSは稼げている人を見せつけれられるので、残酷
・「儲かる市場」とは需要に対し供給が追いついていない市場
・貯金は死に金。「財」(人脈・スキル・影響力)を蓄えよう。
・終わっている会社で働くと「どん底の状況を経験した」「どん底の会社を立て直した」経験が得られる
・「評論家」になってはいけない。アウトプットしよう
・格上の人に会いに行こう
・人脈をアップデートせよ。たとえば同窓会などに行っても意味はない
不労所得よりも少労所得を
・今は「キャッシュフロー・クワドラント」(金持ち父さん・貧乏父さん)にこだわらなくてもいい

* * *

参考:

halfboileddoc.hatenablog.com
このマンガの主人公は、実際会社をやめてフリーランスになる。その心情をうまく描写しているか。
halfboileddoc.hatenablog.com
茶店を起業した人の話。

halfboileddoc.hatenablog.com
二冊紹介した後半の方の話は、今回の本の結論に至るまでのところをマル経的な用語で紹介している。

halfboileddoc.hatenablog.com
子供にむけて、という体裁で、社会人にとって幸福はなにか?ということを書いている。ちょっと似ている。

halfboileddoc.hatenablog.com
時給ベースで、自分の価値とかを考えよう、という話。この辺も「自分で自分の価値をわかり、売り出していこう」という態度の点で共通している。

halfboileddoc.hatenablog.com
会社組織は人間関係がややこしいよね、という話。