半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

谷口ジロー山もの『K』『神々の山嶺』

この前の「ジャケ食い」を読んでいて、孤独のグルメを思い出したものだから、そこから谷口ジローを読み直したりしている。

K(ケイ) (アクションコミックス)

K(ケイ) (アクションコミックス)

『K』は連載されていた時に読んだんだろうか、なんとなく記憶がある。
ヒマラヤ山脈に居る謎の日本人「ケイ」が、並外れたレスキュー活動を行う。
法外な報酬とともに(といってもそんなに法外じゃないっぽいが)
レスキュー会の『ブラック・ジャック』みたいな感じ。
設定としては『岳』に近いものがあるのかも。

多分山漫画としては、ブラックジャックの医学におけるそれのようにありえない登山テクニックなんじゃないかと思うが。

神々の山嶺

これは夢枕獏の小説の漫画版。
ある登山パーティー随行した写真家が、カトマンズである男に出会う……
これもヒマラヤに住んでいる謎の日本人を描く話。

主人公の羽生の強烈な自意識に「こんな人いるいる」と思いながら読んだ。
5巻でまずまず長い話だが『K』よりは荒唐無稽感が少なく読めた。

しかし最初は狂言回しみたいになっていた(それほど登山の才能があるという描写もない)写真家が、最終的にはエベレストの単独登頂に挑む設定はどうなんやと思ったりもした。

ヒマラヤ連峰の高度8000メートルの領域は、夏でも融雪することもなく、動物が訪れることもないので100年前の死体もあんなふうに残っているんだろうか……。
私は登山に関してはほとんど経験がないし、あまりやりたいなとも思わず、気がつくと慢性腰痛・頭痛などの病気もちになってしまった。
今お世話になっている経営セミナーには、植村直己と同級生だった明治大学山岳部の方(この方は地元に帰って医療介護系の経営をしておられるすごい人なのである)がいらっしゃる。
山岳部時代の話をおもしろおかしく聞かせていただくのだが、山男のオフの時の破天荒なエピソードばかり。
山に登ったら、こんなことしてるんですねーめっちゃしんどいやん!と思った。

岩壁登攀って、登山の究極なんだろうけど、登攀を必要としない登山からのあるレベルをすぎるとこういう登り方を要求されるわけでしょ?そこまでの登山テクニックとは全く連続性がないわけで、体力が余りまくっている20代の頃にしかチャレンジできないような気がする。
サンデークライマーってそういうところをどうやって感情の落とし前つけているんだろう。

続けて読むと『K』の主人公って、『神々の山嶺』の主人公よりもスーパーマンな感じがするけど、まあそういう荒唐無稽さなんでしょう。人生と登山というテーマに関しては『神々の山嶺』の主人公の追い詰められ方がぐっと来るものがあります。多分、いろいろ仕事における困難さとか、偏狭さゆえの追い詰められ方とか、なんつーか色々もやもやと考えを掻き立てられる作品ではありました。
谷口ジローの画力にもやはりうなるところ多し。

山ものを続けて読んでみたくなった。「Blue Giant」の人の山もの「岳」も通して読んでみようかなあ。