半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『会社にお金を残す経営の話』『働き方の損益分岐点』

オススメ度 90点
視点が違うと評価も違う度 100点

あえてこの二つの本を並べてみた。

いわゆる経済学の話ではなく、あくまで実践者、ビジネスマンが、経済理論を即応用するために書かれた本である。
純粋な学問的な興味で経済学を語るのではなく、現実に即した武器としての経済学。

『会社にお金を残す経営の話』は、中小企業の経営者向けの経済理論を交えたコンサルティング

会社にお金を残す経営の話

会社にお金を残す経営の話


お話としては初歩的なものではあった。
きちんと税を納めてきちんと利益を会社に残すことが強い会社を作る唯一の道、というメッセージは当たり前といえば当たり前だが、大事なことだ。
利益がでると、法人税を取られてしまう。
だから節税のために経費で何かを購入したり、何らかの策を弄して黒字をできるだけ赤字に近づける、のは、税法としてのテクニックの一つ。
だが、それは長い目でみると、あまり望ましくない。
きちんと利益を出して、きちんと税金を納めたあとに残る、純粋な利益。内部留保
いっぱい働いても、この純粋な利益というのはそうそう残りはしない。
一握りしか残らない。大吟醸精米歩合みたいなものである。
でもこれこそが、会社にとって宝であり、次の安定した設備投資などの核になる、ということだ。
Amazonにしろ、日本の企業でも昔はダイエー、今ならソフトバンクは同様の戦略をとって、納税よりも資金をうまく回して成長のスピードを鈍らせないが、これは、どちらかというとリスクを孕む行為でもある。超優秀な企業にして初めてその恩恵を達成できると考えた方がいいだろう。

それに、きちんと納税することも、社会にとって大事だ。特定の取引先とWin-Winの関係を結ぶことも大事だが、商売させていただいている社会に対してWin-Winの関係を結ぶことも、重要なことだとは思う。

まあ、そうした綺麗事では必ずしも会社はまわっていかないのも事実ではあるが。




一方『働き方の損益分岐点』。

これは少し前のベストセラーだったような気がするが、
これは雇用者にとっての、実用経済理論。
マルクス経済学をわかりやすく引用している。というか、ここではマル経をまるまる紹介している。
実際、いわゆる主流経済学(マクロ経済学ミクロ経済学)とマルクス経済学との違いは、資本家と労働者との階級闘争を経済学的に論じることができることだったわけだ。マルクス経済学はあくまで社会の実相を描くための補助線であったわけだが、そこから階級闘争を解消し、プロレタリアートに実権を握らせるべきだという社会運動になったのが、共産主義ということになる。
つまり診断(マルクス経済学)→治療(共産主義)というわけである。
20世紀は共産主義の壮大な社会実験であり、共産主義は失敗した。
だが、それは治療が間違っていただけで、診断学そのものが誤りであったというわけではない。
社会的治療としての共産主義ではなく、個人的な解決法として搾取されないように資本家側に回ろうという考え方が、ロバート・キヨサキらのいっていた「金持ち父さん・貧乏父さん」というわけである。

資本主義の中では労働者は豊かになれない。
・給料の決まり方には1:必要経費方式・2:成果報酬方式があるが、必要経費方式では生活に必要なお金しかもらえない
・給与は「労働の再生産コスト」として支払われる。(年功序列はこの構造であれば理解しやすい
・「使用価値」と「価値」の違いについて自覚的である必要がある。
・商品の「価値」の大きさは「社会一般的にかかる平均労力」によって決まる
・商品の「値段」は商品の「価値」を基準に決まり、「使用価値」や需要供給バランスとは関係がない。

* * *

興味深いのは、この二冊、同じように企業での生産活動などを舞台に書かれてるが、片方は資本家としての立場、もう片方は雇用者としての立場で語られる。
前者では「限界利益」を意識して、生産性を高め、利益を生み出すことに自覚的であろう、と書かれる。
他方では、剰余価値を限界まで引き出され、トコトン働かされることで、企業は利益を得るのだ、と書かれている。

同じことであるが、片方では肯定的に、片方では否定的に書かれているのが面白いことだなと思った。
前者では、利益をうむために、月の売り上げのうち、利益をうむポイントを決めて、それを1ヶ月のどの位置で達成できるか明示することで、みんなのやる気が引き出され、収益増につながった、なんてことがかかれ、他方では「労働者が労働者で有る限り、資本家の利益を最大化するまで働かされる」と書かれる。

並べて読むと面白い。
かといって、二冊の資本家と労働者に、明確な階級意識があるわけでもない。立場の差にすぎない。
資本家としての前者の本は、兄がガンで死に、別業種の弟が継いだ話で、弟の新社長は、むしろ資金繰りが厳しい状態から出発する。
資本家が常に安寧で、労働者が悲惨な労働環境というわけでもないのだ。
ただ、起業家はリスクをとるのである。
だからリターンもある。
このあたりの機微はお金を雇用主に任せていてはわからない部分。

すごいぜロイテリ

オススメ度 100点

ロイテリ お口のサプリ 30粒入

ロイテリ お口のサプリ 30粒入

話は、バンド仲間に遡る。
私は趣味でジャズをやっている。
主にセッションに出没し、時々イベントなどに合わせてバンドを組んだりしているのだが、そのバンド仲間の大学生のベーシストが、この春岡山の「カバヤ」に就職した。そう、「ジューシー」のカバヤだ。


198X カバヤ ジューC

彼と話していて、カバヤオハヨー乳業がグループ企業であることを知る。
僕も岡山に住んでいた時に、オハヨー乳業の牛乳やヨーグルトを食べていたことを思い出した。
オハヨーのアロエヨーグルト、おいしかったですよ。ちなみに広島にはチチヤス乳業というのがあります。

んで、つい最近、全日本病院学会というのが名古屋であったのだが、そこにオハヨー乳業がブースを出していて、この「ロイテリ」を宣伝していたのだ。なんでも、口腔内の細菌叢に対して、善玉菌を増やす、プロバイオティクスだそうだ。
ロイテリ菌(L.reuteri DSM17938株)なので、ロイテリという商品名。

自慢じゃないが、最近の僕は45歳の立派な中年。歯周病もきになるし、齲歯=虫歯もあったりする。
そもそも僕はもともと歯並びがひどく悪く、なおかつ管楽器をやっているので下手にいじると吹けなくなるので、
なし崩しに口腔内が今ひとつの状態になっていた。

歯並びが悪い、口が臭いなんていうのは、別に魅力の高い外見でなくても、自尊心を傷つけ、結構なコンプレックスになったりする。
実際僕は歯を出して笑うフルスマイルが苦手だ。

歯については可能な限り保存的療法で対応していたが、もういよいよあかんかなと思っていた。
トロンボーンをやめて、歯の治療を数年かけてやろうとつい最近決意したのであった。

* * *

そこでこのロイテリだ。
まあ当初は地元応援くらいのつもりでオハヨー乳業にエールを送るくらいのつもりで試してみた。

そうすっと。
確かに、起き抜けの口臭が、だいぶ臭くないのである。
(もちろん前から寝る前に歯を磨いてましたよ。加えて、ロイテリのタブレットを寝る前に口に含む)
すごい、すごいやん。なにこれ。*1

驚いたことに、虫歯と思われる歯の疼きもかなり少なくなり、歯茎などの状態もちょっとよくなっている。*2

* * *

ちなみに、「起き抜けの口が臭い」という概念は、BADBOYSというマンガで初めて知った。

外国人が肩こりという概念を知らないのと同様、子供の頃の僕は、起き抜けには口は臭くなるもの、という概念は全くなかった。
まあ、そんな無垢の状態から、時代はすぐに追いつき、漫画で知るまでもなく、起き抜けの口臭時代が始まるわけだが。

* * *

ロイテリ、月に三千円程度。
中年の歯でお悩みの方は、ダメ元で試してみてはいかがだろうか。

*1:ロイテリ菌の作用もあると思うし、多分ハッカ系の香料が若干使われているので、それによる清涼作用もそれなりにあるのかもしれない、とは思っている

*2:多分虫歯は治らないとは思うし、会社の人もそう言ってた。しかし未治療の状態の悪化はなにもしていないよりはよさそうだ。

『ハッタリの流儀』堀江貴文

オススメ度 80点
表紙の謎度 100点

最近、Youtubeで、ホリエモンチャンネルとかNewspicksとかみてしまう。*1
以前から堀江貴文氏の著作は折にふれ読んできたわけだが。

halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com
halfboileddoc.hatenablog.com

そのほかにもKindleの中には
「面白い生き方をしたかったので仕方なくマンガを1000冊読んで考えた→そしたら人生観変わった」「金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?」「君はどこにでも行ける」「刑務所わず。塀の中では言えないホントの話」「これからを稼ごう 仮想通貨と未来のお金の話」「死ぬってどういうことですか?今を生きるための9の対論」「すべての教育は「洗脳」である〜21世紀の脱・学校論〜」「多動力」「東大から刑務所へ」「なんでお店が儲からないかを僕が解決する」「本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方」「我が闘争」「儲けたいなら科学じゃないの?」と、やたら本があった。もちろん、全著作はこの数倍あるわけだからね…

タイトル・イシューとしては、ふろむだ(From dusk till dawn)さんのこの本にでてくる「錯覚資産」の概念に近い話。
halfboileddoc.hatenablog.com

多動力が、比較的フェアな、自分の働き方やオリジナリティの出し方、付加価値の出し方の本だとすると、
この本は、一つ一つの仕事をものにするために、正面からは教えてくれない(ウラの)コツみたいなものを教えてくれる本である。
その意味では、比較的親切心にあふれた本であると言える。

  • 身の丈に合わない波に乗ることには当然リスクが伴う。多くの人はそこに飛び込んで行かないが、何パーセントかの人はこの大きな波をギリギリ乗りこなし、次のさらなる大波に乗ってゆく。
  • ハッタリビジネス、というか、夢を掲げて、そこに挑むストーリー。それがすっかりエンターテインメントになっている。
  • 「ハッタリ」とは、できると言い切って、辻褄をあわせる「覚悟」のことを言う。
  • 「ボケ」られる人間が貴重だ。他人に「ツッコミ」ばかりしている人に熱はおこせない。周りはついてこない。
  • 商売をやっている人はえてして、「みんながまだ知らないような、儲けの裏のメカニズム」といった話に目が無い。また、そういう情報を持っている人間との付き合いを好む傾向にある。
  • 計算や論理の先にある予定調和なものに人は熱狂しない。
  • 「根拠のない自信」を持っているというところだ。君からみたら能天気なバカかもしれない。


ただまあ、「ハッタリ力」といっているけど、結局ホリエモンの真価は、コツコツと集中して物事に取り組んで、成果を出すことだと思う。
まずは力を発揮できるプラットフォームを一つもつ。
それをもっていないと、次にはいけない。
そこの部分の泥臭い「努力」の型を自分は身につけているところが、成功の秘訣だと氏は言う。僕もそうだと思う。
それをした上で、しかしレバレッジを効かせるためにはハッタリが必要だ、と、そういう話なのだ。
つまり 0→1の部分は当然できているのが前提。(それは自分でやってくださいというのがこの本のスタンス)
1→100にするためのやり方が、この本に書いてある。

ただ、ホリエモンのことをあまりわかっていない人は、ホリエモンは「ハッタリ」、つまりゼロから虚業を作り上げて膨らます、という風にとらえている。

全然違うのだ。
この人は一貫して地に足がついている。
ただ、そこからジャンプアップするために、ダークサイドスキルとしてのハッタリ力が必要、と、そういうこと。

でも、ホリエモンのある年代以上へのパブリックイメージからすると、この「ハッタリ力」というタイトルは無用な誤解を与えるだろうなと思った。
(もちろんそう言う風に捉える人は、今のホリエモンは対象にしていないんだろうとは思うけどね)

いつものホリエモン節ではあるけれども、やはり勉強になることをおっしゃると思った。

ただ、この表紙の写真の意図はなんなんだろう?

*1:YoutubeをみるきっかけはDaigo Channelだった

『被差別の食卓』『日本の路地を旅する』上原善広

オススメ度 100点
シリアス度 100点

被差別の食卓 (新潮新書)

被差別の食卓 (新潮新書)

最初に読んだのは、『被差別の食卓』
世界には、被差別階級というのが一定数いる(社会的にも、経済的にも)。
というところからこの本は始まるが、民族問題とか差別問題とか、その辺りはかなりアンタッチャブルでデリケート。
語るのが剣呑な話。

日本の被差別階級の人たち(オブラートにくるんで言っていますよ)の歴史的な経緯。
仏教の影響下の日本では屠畜・皮革業は死穢に満ちたものとしてタブー視された。賤業としてこれらの職業そのものが社会的には必要でありながら忌避された経緯がある。現代でも食肉業のルーツは多くはこの出身の人たち。*1

あぶらかす』『さいぼし』という、被差別階級の人たちに好まれてきた特有の食事があるけど、アメリカの黒人の「ソウルフード」っていうのも、どことなく似てやしないかな?という着眼点で作者(作者もそういう被差別の出自であったりする)は世界を旅する。
差別と貧困、迫害と団結の中で生まれた食文化には、当然のごとくに共通点がある。

・臓物料理(一般の民が食べずに捨てたり見向きもしなかった食材を工夫して作った)
・味が濃い(傷んだ食材でも食べられるような工夫と思われる)
・揚げものが多い(小骨が多くてもそのまま食べられる。ハイカロリーで腹持ちがいいから)

意外なのは我々が普通の食事と思って食ってる「フライドチキン」が、ソウルフードの最右翼だったということだ。白人が食べずに捨てていた手羽、足先・首の部分を、骨も気にせずおいしく食べられるようにディープ・フライして食べたのがルーツだそうだ。南部のディープフライされたべっとべとのフライドチキン、一度食べてみたいような気がする。

アメリカ南部の「ソウルフード」(ナマズやザリガニなども)、ブラジルのフェジョアーダ、ロマのハリネズミ料理(ロマ独特の穢れ感覚から、ハリネズミはもっとも清浄な動物とされているらしい)、インドの不可触民、サルキ(ヒンドゥーで死牛馬を扱う不可触民、これは日本の被差別問題にかなり共通点がある)…

高野秀行を一番左に据えて*2、真ん中に 辺見庸『もの食う人々』を据えたら、
この上原善広のこの作品を一番右に据えてしっくり来る、って感じだ。右にいけば行くほど政治的に考えさせられる濃度が高い。

辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

もの食う人びと (角川文庫)

もの食う人びと (角川文庫)

ただ、取り扱っている題材が題材なだけに、ソウルフードと同様に、腹にずっしりと重い読後感があった。
それでも、食を切り口にしている分、間口も広く受け入れやすい本だとは思う。

日本の路地を旅する

日本の路地を旅する (文春文庫)

日本の路地を旅する (文春文庫)

かなり面白かったので、もう一冊読んでみた。
「路地」というのは、路地裏探訪記、みたいなナイーブな意味ではなく、被差別部落の集落のことを表すことばらしい。同和とか部落とか、そういう言葉に類する言葉なんですね。
自らも路地出身の筆者が、日本各地の路地をかなり網羅的に歩き回った記録である。
結構な分量。

なんというか、平静なよそおいで書かれてはいるが、静かな文体の中に、戸惑ったり怒ったり、落胆したりいろいろな作者の感情が透けてみえる、並並ならぬ覚悟で書かれたルポルタージュである。
冒頭に作者の生い立ちがつづられ、巻末近くで、商売に失敗し、沖縄のとある島で女と住んでいる兄と再開するくだりがある。
総花的な路地探訪とみせかけて、作者のルーツ探しのような、ビルドゥングスロマンのようでもある。
つまり、小説を読んでいるような気にさせられる。
非常にシリアスな重たい事柄を取り扱っている本だが、ある種のナラティブさが加わったことで、普遍的に受け入られらるものになっているのが、この本のいいところだと思う。愚直に現状を紹介しても、関わりのある人にしか読まれず、社会運動にはならない。

太宰治の『津軽』よりは切迫感があると思った。

津軽 (新潮文庫)

津軽 (新潮文庫)

同和対策法案が期限切れになって、21世紀になって久しいわけで、いわゆる都市化されたところで暮らしている分には我々はこのような差別問題に触れることはあまりない。そして、21世紀、幸いなことに被差別部落の問題は、大都市など人口流動が大きい地域では、風化しつつあるのも事実だ。
難しいのは被差別部落そのものが風化してしまい、忘れられることは、被差別問題としてはいいことである反面、やはり少なからぬ人のルーツや文化が消えていくことでもある。その辺りのアンビバレンツな感情も、この本の持ち味であると思った。

* * *

実は、医者って、尊敬される「聖職」といわれるカテゴリーに属しているけど、特に前近代は、現代のような医学の発達もなく、病気を治す力はあまり期待できなかった。看取りは医師が行う。
だから、医師という職業も同様に死穢に満ちていると思う。

死牛馬と何が違うのか。
何百枚も死亡診断書を書いてきた自分の手も、死穢に満ちていると、実は感じている。

どうして医者が賤業として取り扱われなかったのだろうか。
実は前前から疑問に思っているのだ。

もちろん、現代においての治療職能集団としての医師はそういう存在とは程遠い。
でも、江戸時代には、医師は僧形であったし、死に日常的に触れる、特殊な職業であったわけだ。

医師が被差別部落の特定の賤業として取り扱われる世界線もありえたのではないかな、と、僕は自分の仕事を振り返って思うのだ。

*1:細かいことをいうと、江戸時代に制度化されたエタ・非人はエタは皮革・屠畜業など固定化され排除されたカーストであり、非人はまた完全なアウトサイダーを含んでいたり、この二者もまた細かく見ればかなり違う。ただ、その辺りの細かい話は掘れば掘るほどデリケートな話題なので、これ以上は触れない。

*2:この左・右はイデオロギーのやつじゃないです

『悪魔が教える願いが叶う毒と薬』

オススメ度 90 点
自信たっぷりすぎる言い回しがややきになる度 90点

悪魔が教える 願いが叶う毒と薬

悪魔が教える 願いが叶う毒と薬

一言で言うと「闇落ち薬剤師」。

もうちょっというと、自由闊達に、「薬剤師」の知識と「危険物取り扱い資格」の知識を組み合わせた、という感じ。
現代の錬金術師、裏薬師といえばこんな感じだろうか。

薬剤・化学物質について、割該博な知識があるようで、小括した知識も、TIPSも比較的目新しいものがあった。

以下備忘録;

知っている豆知識も、全然知らない知識とかもあった。
勉強になった…といいたいけど、問題は信頼性だよな。

知っている分野についてはまあまあ嘘ではないな…とは思った。
ただ、際どい知識(そんなに言い切ってはいけないじゃないのか、という)も結構ある。こういう知識については検証できない。
そもそも匿名での著述で、この人の顔が見えない。
文献などの出典も明記されていないのだ。
なので、非常に魅力ある知識の断片ではありながら、自分で一次資料を当たらなければ、「オモテ」の専門家としては他人に伝えてはいけないようには思われた(飲み屋の与太話ならいいだろうが)*1。だからこその「裏知識」ということなのだろう。

甘味料について・虫除けについてなどの章をみれば、簡潔にまとめられていて、参考になると思われる。
基本的には自分でなんとかしたい人、セルフ・メディケーションの人にとっても有効な本だと思う。
NSAIDs、花粉症などについては、薬局で売っている薬、いろいろあるけど弱いのでさっさと医者いけよ、とか、まあ実際的なアドバイスも多かった。
一般医家に喧嘩を売る本ではないのだ。
シモに関する知識は、確認しようがないけど、それなりに需要はありそう。

医療関係者の人たちは一度くらい目を通してもいいんじゃないかと思われる。
これ信じてやっちゃう患者さん、外来にもくるかもしれないし。

*1:だいたいあっていると思われるけど

『僕は僕の書いた小説を知らない』喜友名トト

オススメ度 70点
ラノベらしさ度 100点

僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)

僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)


短期記憶力を無くしてしまった男が、頑張って小説を書く話。
ひとことで言えば、そういうことになる。

ライトノベルと、非ライトノベルの差が僕にはよくわからない。
まあ、純文学と通俗小説の差もわからないので、どうでもいいっちゃあいいのだが。

短期記憶力を無くしてしまった、というシチュエーションには先行する作品がたくさんある。
博士の愛した数式小川洋子
自他共に認める天才数学者であった博士は80分間しか記憶が維持できない。博士はその中で生活をやりくりするために、服にメモをあちこち貼り付けて生活している。

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

メメント

これは、10分しか記憶が保持できないという主人公という設定に加えて、時系列を逆回しで進行させるという斬新な手法の掛け算によって、類をみない奇作に仕上がっています。なんとなく観た記憶ありますが、ちゃんと考えたことないな。

私の頭の中の消しゴム

これは、韓国の映画ですけれども、若年性アルツハイマーで記憶障害がどんどん進行する人が主人公。
短期記憶力だけの障害ではないのですが、記憶障害で人生が限定される恐怖という意味では、共通点が多いように思う。

この小説は、こうした先行作品があり「記憶障害」はそれなりに手垢のついたジャンルではある。

というわけで、駆け出しの小説家の主人公が、事故かなんかで、1日しか記憶が保持できない、という設定になっている。
確かに、海馬による記憶のインデックス化と定着は、睡眠時に脳の中で行われているので、海馬がやられてしまうと1日以上の中長期の記憶に支障をきたす、ということは十分ありうる話で、まあまあのリアリティがある。*1

1日の呪縛から逃れられないという意味では、むしろ「記憶障害」よりは、北村薫「ターン」に読み味は近い。

ターン (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)

1日の枠に限定されると、交流の多い生活というのはなかなか難しいと思うが、主人公は結構うまく適応して、なんなら新作の小説を書いてさえいる。
IT化のご時世、行動規範はPCに入れることで、確かになんとかなる。Society 5.0万々歳だ。

恋愛模様もあり、限定された状態での創作、そして挫折、そして大逆転。
いい話だった。ちょっと出来過ぎだろうなという気もするが。

というわけで、冒頭の疑問に戻るわけである。
ライトノベルと、非ライトノベルの差が僕にはよくわからない。
昔だったら普通にいい話だな、って老若男女に売れそうな気もする。
では、装丁とか、見てくれなのか?でも最近は昔の純文学の作品だって、ちょっとライトノベル風の装丁にして売られていたりもする。
まあ、どうでもいいのかもしれないが。
(ジャンルとかインデックスにこだわるのは、旧世代の悪い癖だ。
「こんなのジャズじゃない!」とかね(笑))

*1:現実にこういう状態がありうるのかは知らないが。オリバー・サックスの著作とかにあるのかもしれない

『スマホメモ』須藤亮

オススメ度 80点
ごめん俺これ読み込めてない…けど二度読みする気にはなれない度 80点

スマホメモ 仕事と人生の質を上げるすごいメモ術

スマホメモ 仕事と人生の質を上げるすごいメモ術

K-J法とか、マインドマップとか、そういう断片的なセンテンスをつなげたアウトラインを作り、文章の論理構築であるとか、意思決定に役立てるやり方というのはいくつか用例がある。が、トイレに行くときにも手放さない僕らの中毒アイテムで、やったら効率いいんじゃない?という本。

全くその通り。

実例の上げ方が参考になった。
メモの取り方とかそのあたりの本は最近かなり多いが、この本もまあまあそんな感じ。
また、この手のビジネス ライフハック本を並べて比較してみようと思う。

確かに、断片的なメモをどんどん残すフェイズと、それを組み上げて整理するフェイズを分けると、なかなか作業としては面白そうには思える。
ちょっと思い直して、メモをとるのを少し増やしてみた。僕は今iPhoneMaciPad AirなのでMacのメモ帳が一番適しているかなと思う。

この本の主張は
・人間の脳はフラッシュメモリーのようなもの。色々考えているけれども。それが瞬時に消えていく
・そういった瞬時に思いつく雑想は、記録までに時間がかからないものがいい。昔なら手元に紙のメモ帳。今ならスマホだよな。いつも持っているものとしては。
・雑想をまとめ、思考を整理し、印象付けるメモやノートの書き方には一定のパターンあり。文字化・グループ化・表札化・矢印付・強調化・図示化・具象化


結局、To Doリストもリマインダも、メモに集約するのが、最も最大公約数的に使えるのかもしれない。ま、実際そうしているけど。
これと、Showroomの人のメモ本、
ブリット・マネジメント、のあたりがやや気になる。

結構いい本で、これ読んでから、自分のメモの取り方とか、そういうのは少し変わるのは変わりました。