オススメ度 90 点
自信たっぷりすぎる言い回しがややきになる度 90点
- 作者: 薬理凶室
- 出版社/メーカー: 三才ブックス
- 発売日: 2016/08/25
- メディア: Kindle版
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一言で言うと「闇落ち薬剤師」。
もうちょっというと、自由闊達に、「薬剤師」の知識と「危険物取り扱い資格」の知識を組み合わせた、という感じ。
現代の錬金術師、裏薬師といえばこんな感じだろうか。
薬剤・化学物質について、割該博な知識があるようで、小括した知識も、TIPSも比較的目新しいものがあった。
以下備忘録;
- 受験生の間で咳止め薬(エフェドリン+カフェインで覚醒作用あり)、麻黄湯も覚醒作用に転用できる
- 「ヒロポン」は今でも大日本住友製薬で現在も作られている
- 夢を変質させる薬:悪夢を見るならセディールやβブロッカー。毛生え薬のミノキシジルも。レム睡眠時に血圧低下を感知すると不愉快な感情が喚起される。
- メラトニンは海外では普通に売られているが、日本では長らく未承認。メラトニン受容体に働く薬は、日本ではロゼレム。国内処方で唯一、時差ボケに効果がある。
- アセチルコリンの過剰放出は頭の良さのもととなる情報処理速度を上げる。反面、トラウマの発現とも結びつきがある。サリン被爆者の多くに事故の記憶が焼きつき(PTSD)セラピーをうけている。
- アンチエイジング:成長ホルモンはControversial。DEHA アメリカではサプリメントとして利用。アミノグアニジンに期待がもたれている。メトホルミンも似たような機序で2016年からアメリカで抗老化薬として臨床試験
- ステビアは果汁との相性がいい(グレープフルーツジュースなど)
- ヒ素と白血病治療について
- セレンを過剰に摂取すると「ジメチルセレナイド」が発生し、とてつもなく体臭が悪臭になる
- アンダーグラウンドのバイアグラを買うなら、中国製よりインド製
知っている豆知識も、全然知らない知識とかもあった。
勉強になった…といいたいけど、問題は信頼性だよな。
知っている分野についてはまあまあ嘘ではないな…とは思った。
ただ、際どい知識(そんなに言い切ってはいけないじゃないのか、という)も結構ある。こういう知識については検証できない。
そもそも匿名での著述で、この人の顔が見えない。
文献などの出典も明記されていないのだ。
なので、非常に魅力ある知識の断片ではありながら、自分で一次資料を当たらなければ、「オモテ」の専門家としては他人に伝えてはいけないようには思われた(飲み屋の与太話ならいいだろうが)*1。だからこその「裏知識」ということなのだろう。
甘味料について・虫除けについてなどの章をみれば、簡潔にまとめられていて、参考になると思われる。
基本的には自分でなんとかしたい人、セルフ・メディケーションの人にとっても有効な本だと思う。
NSAIDs、花粉症などについては、薬局で売っている薬、いろいろあるけど弱いのでさっさと医者いけよ、とか、まあ実際的なアドバイスも多かった。
一般医家に喧嘩を売る本ではないのだ。
シモに関する知識は、確認しようがないけど、それなりに需要はありそう。
医療関係者の人たちは一度くらい目を通してもいいんじゃないかと思われる。
これ信じてやっちゃう患者さん、外来にもくるかもしれないし。
*1:だいたいあっていると思われるけど