半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『禍いの科学〜正義が愚行にかわるとき』

すいません、最近業務がおしすぎていてこのコーナー更新できていませんでした。

いつ買ったんだっけ、リアル書籍であったので読んだ。

自然科学における愚行に関するエピソードをまとめている。
麻薬・ロボトミー・マーガリン・優生学など、普通の自然科学からスタートしたはずなのに最終的には人類史に大きな汚点を残した分野のことを紹介している本。
まあ、素養としては知っておいて損はないお話なのだが、レーチェル・カーソン『沈黙の春』とDDTについては知らなかった。
レーチェルカーソンのベストセラーによってDDTを使わなくなった結果、マラリアの流行は食い止めることができなかったので、その結果数千万人の命が危険に晒されているのではないか…という指摘。
Wikipediaをみてみると、それに対する反論もあり、ちょっとどっちが正しいのかわからないが、DDTはそんなに彼女がいうほど悪い薬ではなかったのではないか?というのが主張なわけだけれど。
あと、ハーバー・ボッシュ法。実は現在の人類の食糧事情改善に貢献したすごい技術だと思うけど、その開発の立役者であるハーバーの障害は、なかなかヤバいようで。20世紀の剣呑なヨーロッパ情勢に翻弄された男。

科学の進歩が、結果的に善なのか悪なのかというのは、すごく難しい命題。すぐれた科学的な発見は、明らかに世界は変わるのだけれど、それによって恩恵を受ける人もいるし、割をくう人もいる。

これは今後も発展する技術やテクノロジーに対する基本的な態度として、上記のような「失敗例」をしっておくことは重要だと思いました。

参考

割と僕はこの「人類の愚行史」みたいなのは好きなので結構読んでいるのかも。
人類万事塞翁が馬やで!

halfboileddoc.hatenablog.com
これは、科学に限らず人類の「愚行」みたいなものの総集編。
まあそういうのってあるよね。かといって、進歩を拒絶する集団には絶滅あるのみだったりするシビアな世界の法則がある。

halfboileddoc.hatenablog.com
これも、まずまず印象的な本。これは医学史の暗部ばっか取り上げたような本。
考えてみれば唯一の被爆国で、放射能アレルギーのこの国で、「ラジウム温泉」とか「ラドン温泉」とか言われるのはなぜか?
 この本にはその理由が書いてあります(放射能が発見された初期の段階では、「夢の光線」として万能の効能ありと喧伝された時代があったんです)

halfboileddoc.hatenablog.com
愚行だけじゃなくて、ややサブカル的な知識の集大成。これも飲み屋とかで開陳するようなスパイシーな話ばっかり。