『サカナとヤクザ』『ヤクザと原発』などで知られる鈴木智彦氏が、おとなになってピアノを弾きたいなと思い、一念発起してピアノ教室に通い、かわいい顔して達人であるレイコ先生の手ほどきを受けて、ABBAの『ダンシング・クイーン』を弾くまでのドキュメント。
この前の「GAFA部長」と同じく、この人は「ヤクザ」を自分のアイコンにしているんだなー。
長い本ではないし、中年男性のビルドゥングスロマンとして、感動があった。
ピアノ教師レイコ先生の描写がとても魅力的であった。
ピアノが弾けるようになる、ということはどういうことか?
できないことが出来るようになる、というのはどういうことか。
そういうことを考えさせられる本であった。
- ピアノを弾くのに感情を出し惜しみしないこと。
- ピアノを弾こうとしなければ、俺は死ぬまで音楽の奥行きに気が付かなかっただろう。
- 上達の度合いは違う。才能の違いはどうにもできない。でもね、練習しないと弾けないの。弾ける人は練習をしたの。難しい話じゃない。
私も、家を建ててピアノを購入してから、ちょっとジャズピアノに力をいれている、遅咲きのピアノおじさんなので、この気持ち、よくわかるよ……。
だんだんと出来ないことが出来るようになってゆく。世界が広がる。
そして、今まで漫然と聴いていた演奏の、観るべきポイントが変わる。
すなわち、世界の見えかたがかわる。
音楽は人の人生を変え、人生を豊かにする。
僕もそう思う。
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ジャズで人生を変た大江千里のニューヨーク生活録。
ポップスとして名を成した人間が、いちからジャズ・プレイヤーになるなんてことがあるのか。
それがジャズの持つ魔力のようなものかもしれない。
アメリカのジャズの学校では当然ながらAny Keyでスタンダードの練習をするということで、大江千里は四苦八苦しているさまに、僕は戦慄しながら、そりゃそうだよなとAny Keyの練習を家でもやっている。吐きそうなくらいしんどいときもある。
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実際の鈴木氏の発表会画像がこちら。
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全く話はかわるけど、ピアノ経験ない漁師が独学でラ・カンパネラ弾けるようになりました、っていうトンデモナイ話もあるわけである。それがこちら。
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