半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『ハイパーミディ中島ハルコ』『最高のオバハン』

オススメ度 100点
両方読めばさらに倍!度 100点

当代もっとも売れっ子といっていい東村アキコ女史。
多作であるがゆえに、若干荒めの画風ではあるが、むしろ描線に勢いがあり、痛快な台詞回しとストーリーテリング、緩急、取り上げる題材の豊富さ、どこをとっても、現代の漫画プロダクションとしては最高といってもいいでしょう。
出る作品出る作品、「読んでみようかな…」と思わせられてしまうね。

東京タラレバ娘東京タラレバ娘番外編「タラレBar」「即席美人のつくりかた」を見ていて、この漫画も視界にちょいちょい入っていたので、この度読んでみることにしたわけです。
そうすると、へー。林真理子原作だったんですね。
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ただ、二人の波長がめちゃめちゃ合っているのか、違和感のなさに驚く。
原作あり漫画の「自分の作風ではない」感は全くなくて。
まあ、当代最高の職人、原作つき漫画でもやっぱり上手いんだな、とも思うけど、
で、林真理子の原作の方も読んでみると、やっぱり東村アキコの作中感覚で違和感がなく読めるのだ。
忠実に漫画化している上に、自分の波長ともあってノリノリ。

多分、村上春樹が、『グレートギャッツビー』とか『ライ麦畑で捕まえて』とかを趣味で翻訳しているのと同じように、
これは東村アキコの小説→漫画の翻訳みたいなものなのだと思う。

だからかもしれない、小説の方は、漫画単行本2巻まででは出てこないエピソードもあるが、これも僕の脳内では東村アキコの絵柄で登場人物が動いてくれるのだ。いやぁ、すごいな。漫画って。

あちこちにパワーワードがでてくる。


「その男のことはどうでもいいけど、三百万は惜しいわね」


「あんたさ、人はだれだって人生のオトシマエをつけなきゃいけない時がくるのよ。私みたいに一人で生きてきた者には孤独ってやつ、あんたみたいな専業主婦には停年のダンナを負わなきゃいけない時がくるの」


「そもそもこの世の中の悪いことの半分は、親が原因で起こってんだから」


「そうでしょ。女は男の下半身とセックスするわけじゃないの。男の全体とセックスするのよ。頭も心も込みでね。頭も心もよくてセックスもうまい、なんて男はめったにいるもんじゃない」

うん。面白かった。
ちょっとヒヤリとするような話も多かったけど。

この本の、恋愛や相談の舞台の多くは、いわゆる経営者層の話なのである。
私は、こういうハイソな文化にどっぷりつかることについて逡巡があるのだ。
社会的には一応そういうクラスに属しているんだと思う。私は。
しかし、そうはいってもそういうクラスの中の末席だ。
しみったれている。
平安貴族階級としては田舎の受領(ずりょう)みたいなもんだからなぁ。