半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『ロジックツリー』雁須磨子

私はまあまあの漫画読みなのであるが、少女漫画方面はあまり詳しくない。マンガ大賞とか、この漫画がすごい、オンナ編とかで勧められているやつを読む程度だ。だから、文脈とか系譜をしらない。
この漫画は、SNSTwitter)でちらちらと目についたので読んでみた。

主人公は8人兄弟の5番目の女子高生。

とにかく8人兄弟。双子が二組いて、それぞれの性格が丁寧に描写される。
表からのイメージと、実際の当人って結構違っているかもよ、という感じが丁寧に描かれる。
ステレオタイプの解きほぐし。

なるほど。8人兄弟というのは、通常の人間関係以上に関係性としては複雑である。
たとえば四人家族であれば、それぞれの人間関係は 4C2=6とおりだが、8人兄弟ともなれば 10 C2=45とおりにもなる。
そういう複雑な人間関係でありながら、それぞれにステレオタイプなところがなく、リアルさを感じさせるように描写できるのってすげーな。この人。
というか、これを描写しきれる確信があったからこんな難易度の高い設定で描いちゃうんだ。

技巧派のミュージシャンが技巧的な曲を演奏するようなものなのだと思う。

* * *

雁須磨子先生はよく知らなかった。
画風としては僕が知っている中では志村貴子とかに近い…だろうか(これも、知識の乏しい中で書いているので詳しい人には怒られそう)。僕より少し年上で、漫画家としてのキャリアも長い。
とはいえ、誰でも知っているような大ヒットはないもののこつこつと佳作を重ねているような感じなんだろうか。
ジャズ・ミュージシャンでいえば Art Farmerのような存在か。

盛りだくさんの内容であったが「関係性」というものを描く女性向け漫画の王道なのであろうと思った。
面白かった。
上下巻であっさりと終わってしまうのがもったいないですね。
と思ったら 2015年からやってて今年完結だったそうで。

6月に知って読んで、一瞬にして読み終わってしまったわけだけど、連載を追いかけていたら6年間この大家族と主人公がどうなるんかな…とか思いながら6年間過ごすことができたわけだ。それは、結構ワクワクかもなあ。

自分が全然知らない、いい作品や、いい作家さんってまだまだいるんだなあと思った。
(Blogには書いてないけど、今年になってヤマシタトモコも固め読みしたのである。不勉強だったなあ)