半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『2025年、人は「買い物」をしなくなる』『買い物ゼロ秒時代の未来地図』

ちょっと前にネットで話題になっていた。Dマガジンでも単行本なのにピックアップされていたので、買ってみた。
ついでに続編も読んだ。

買い物の中心が徐々にネットに移行している現状のなかで、人々の購買行動が劇的に変化していることを示した本。
以下、要点。

・電子化がすすむと、日常の身の回りにあるありとあらゆるものがシェルフ(商品棚)になる
・日本においてEC市場は6.2%しかない。しかしアメリカでは小売店の閉店が進んでいる
リアル店舗がなくなると、買う場所がなくなるわけではない。むしろどこでも買える時代になる。
・ウェブルーミング
・「体験型」の店舗は将来も活路はある。わざわざ行く価値がある店舗だけが生き残る
サブスクリプションも、買い物プロセスの省略から生まれたサービス
・サブスクとレンタルはよく似ている
・価格の最適化がすすめば、比較サイトは消えてゆく。(比較サイトの入り込む余地がなくなる)。価格最適化こそAIが最も得意とするジャンル。
・かつての「チェーンストア」理論とペガサスクラブ
・ショッピングとは棚の奪い合いだった(有限の棚を店舗と店舗で奪い合う)→インターネットの普及で棚が「家に来た」
・ググらない世代が購買力をもつようになる
・1000億の市場ではなく、100億の市場を10個つくる
・今後独自の物流システムを持たないECサイトはコンビニや配送センターでの受け取りが標準となるだろう
・衣食住すべてにおいて、「安全」や「品質」よりも「消費者の時間をつくること」が最優先となる。
アメリカでは「ピックアップ」という買い物文化が身近なものになりつつある
・商品そのもののパーソナライズ/カスタマイズはアマゾンのような小売業者が苦手とするジャンル
・デジタルシェルフでは、EC上のシェルフは投資効率が悪い(お金をかけてもコントロールできない)。また可視化もしにくい
・「ほしいからとりよせる」という消費者の思考の手前の段階で発動する、「無意識の領域」にまですすんでいく
 (買い物時間が0秒になると世の中からさまざまなものが消えてゆくことになる)
・データサイエンティストが少ない日本は後塵を拝している。
・検索が「自分で気づくマーケット」だとしたら、口コミは「自分では気づかないマーケット」
・ライブコマース=そこに人がいれば、どこでも店舗になりうる
・質よりも共感できるストーリー
・プライベートな情報が筒抜けになる(ソーシャル・スコアリングなどもある)
・メーカーが消費者と直接つながって声を聴くことで、熱狂的なファンが生まれる

続編は、コロナ時代を踏まえて、実際にどうかわりつつあるのかを示した本。
・コロナは、買い物ゼロ秒時代への到来を大幅に前倒しした
・生活者にとって、そこでしか得られないような新しい情報は、店にはほぼない。
ウィッシュリストショッピング
・商品の探し方「目的系」と「発見系」
・ZMOT(zero Moment of Truth)理論=「客が店に来る前にすでに何を買うかは決まっている」
・デジタルシェルフ上での優位性を確立しておかないと、ZMOT時代には勝てない
Amazon 楽天は「目的系」の買い物に適している。「発見系コマース」はSNSと相性がいい。
・知らない人同士でも成立するつながり=「コトのつながり」
リアル店舗では一等地(立地)が重要であるが、デジタルシェルフの場合はユーザーの目に止まりやすいところが一等地になる。
・店員のデジタル武装化がはじまる
・コロナではイノベーションは起こらなかった(効率化は一気にすすんだ)
SNSはそれまでアンダーグラウンドだったインターネットの口コミをソーシャルなものへ変化させた
・買い物は「失敗することによるストレス」がとてつもなく大きい
・日本のライブコマースはあまり成功していないが、「異性ターゲット」モデルだから。
・顧客が足を運ばない物流倉庫=ダークストア
・本当に価値が高いのは「客が迷っている時のデータ」
・生活者は「モノ」を買っているのではなく「目的」を買っている。
ユニクロ・メルカリ、ワークマン・ボタニストの戦略
・デジタルにはそのラベリングのための機能がない。私達はラベルのないことを覚えておき、ラベルのない記憶をデジタル上においておくこともできる。

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リアルな店舗はどのようにして生き残ることができるのか?
長くもなく、読みやすい本。二冊目は一冊目をより丁寧に紐解き直しているだけで、語っている内容は同じ。

これからのデジタル化について、趨勢と今後の予測が示されている好本だと思う。
洋書にはこういう本はもうちょっとあるけど、たいてい分厚い本だし、日本国内のことを過不足なく伝えるものでもない。
その意味では、決定的に読書の「コスパ」がいい本なのは間違いない。

この本を読むと、いろいろインスパイヤされるものがある。
自分の携わる分野ではどう変化するだろうか?と考えてみるのも面白い。
例えば私は医療畑。「医療」においては今後10年でどうかわっていくかを念頭に置いて読むと、新たな発見があると思う。
さらっと読めるので、指針に迷えば何度も読み直して、その都度思い描くものが違うような気がした。