半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

『古墳の古代史』

オススメ度 60点
専門向き度 80点

なかなかいい本だとは思ったが、ターゲットの設定が、僕の思っていたのと違ったみたいだ。

特に邪馬台国古墳時代の日本古代史の部分はわかっていないことも多くて、だからこそ、史料を無視して「オレ説」みたいなものを開陳するのが多い。亡くなられた梅原猛翁も、著作は好きだが、そういう傾向もある。

そういう意味で、現時点での史料に基づく事実ベースを入門書で著しておきたいというのはわかる。
この本は多分そういう本。

序盤で「渦巻き」という抽象的な概念をもちだして、未開地域だらけの古代における政治情勢をうまく言い表したところまではわかった。
しかし、結局古墳、古代墳墓の時代と地域による違いについて、丁寧に一つずつ紹介しているのはいいのだが、正直にいうと、僕たちは古墳の専門家になりたいわけではない(その期待需要は 100人もいないと思われる)。
なので、素人として俯瞰するためには、一つ一つの古墳に対する詳細な説明ではなく、傾向と原則を俯瞰できることだろう。
正直、そういう点に関しては弱いと思った。

一般化、普遍化が難しいのかもしれないけれど、そういう本が読みたかったなあ。
後半には中国の王墓も詳しくとりあげられており、この分野はきちんと読み込んで行けばかなり面白いんじゃないかと思う、もうちょっとこれより入門編が読みたい。