オススメ度 100点
劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2018/09/13
- メディア: 新書
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あー。
よかったですこの本。
『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?』でも深くうなづくところがあったが、
この本も非常に共感するところが多かった。
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/07/19
- メディア: 新書
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(これは音楽の話ばかりするBlogにこの本を取り上げたやつ。)
オッサンという人種はなぜあかんのか?、そもそも「オッサン」の定義を
- 古い価値観にこり固まり・新しい価値観を拒否する
- 過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
- 改装序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
- よそ者や異質なものに不寛容で、排他的
と定義している。なるほど。
サミュエルウルマンの「青春」の反対みたいなやつですね。
この本のどこに深く共感したかというと、今50-60代の頃の人たちが、なぜこのような「オッサン」が多いか、ということを、
いや高齢化してきた人間はだいたいそうなるからだ、というわけでもなく、この世代特有の社会背景もあるということを
きちんと見抜いているからだ。
70年代から80年代、そして90-0年代の日本の社会構造と文化を振り返り、
- それまでの教養主義と、90年代以後の実学主義のちょうどはざまの「知的真空の時代」(大学のレジャーランド化)に青春時代を過ごしてしまったから。アカデミックなものとか、ものを考える習慣というものが著明に減少したなかで大学時代を過ごした世代だから。
- そして「大きな物語」すなわち「いい学校を卒業して大企業に就職すれば、一生豊かで幸福に暮らせる」という昭和後期の幻想が喪失する以前に社会適応してしまった最後の世代だから。(今はグローバル資本主義を信奉する時代と言える)
ということだそうだ。
要するに、本来人生を決定づける20代の時期に勉強もせず過ごして固まってしまった。
今さら年を経て、経験を重ねても、自分でものを考える習慣がなく、省察も対策も打てない。勉強する習慣もなく、危機を察知する能力さえも鈍感である。
ということらしい。なるほど……その結果として、
システムというものは必ず経時劣化するので、どのようなシステムであっても、そのシステムを批判的に考察して、その改変や修正についてイニシアチブをとってくれる人が必要なのですが、そのような教養とマインドセットを持った人材がほとんどいないという社会が発生しているのが、現在の状況なのです。
すごい納得はしたけど、それはゼツボーじゃん。
深くうなづくところが多かったので、できれば一読をすすめます。
すごいな山口周、いまのところ、買った本すべてにハズレなしだ。
「働かないおじさんをどうしたらいいか」みたいな本は今までも読んできたんですけれども、これが一番ささりました。
以下、少し備忘録。
- また、組織の人材クオリティが世代交代を経るごとにエントロピー増大の影響をうけて、三流の平均値に収斂する。
- 「没落してゆく民族がまず最初に失うものは節度である」シュティフター『水晶』
- 経営はアートとサイエンスとクラフトの三つが渾然一体となったもの。
- 二流の人間が社会的な権力を手に入れると、周辺にいる一流の人間を抹殺しようとします。
- 社会で実験を握っている権力者に圧力をかけるとき「オピニオン」「イグジット」の二つのやり方がある。